どんな発想から生まれた本なのか
ふだん、私たちは頭の中でどんなことが起きているかを気にすることもなく、何気なく文章を読んでいます。しかし、この本を読むことで、私たちはかなり高度な情報操作をして文章を理解しているということが分かりました。
著者は「おわりに」の中で「書かれた言葉は理解のためのヒントに過ぎず、答えは私たちの頭の中にある」という発想で書いたと言っています。これはどんなことなのでしょう。簡単な例で説明すると「桜が咲いた」という文は読む人が「桜」というものを知っている必要があります。それが「咲く」とはどういうことなのか。「桜の花」と言っていないのに花が咲くのをイメージします。
読む人は頭の中にデータベースを持っていて、それを引っ張り出して組み立てます。データベースは人によって若干違いますから、浮かべるイメージも違うかも知れません。そんな発想から読むことについて深く解説していきます。
目次の紹介
(ストラテジーとは戦略というような意味です。味読とは文章を深く味わって読む読み方のことです)
- 序章 なぜ「読む」技術を鍛えるのか
- 第一部 読みの理論(「読む」ということ・「読む」技術の多様性)
- 第二部 速読-速く効率的に読むために(話題ストラテジー 知識で理解を加速する力・取捨選択ストラテジー 要点を的確に見抜く力)
- 第三部 味読-文章世界に自然に入り込む技術(視覚化ストラテジー 映像を鮮明に思い描く力・予測ストラテジー 次の展開にドキドキする力・文脈ストラテジー 表現を滑らかに紡いで読む力)
- 第四部 精読-深く多面的に読む技術(行間ストラテジー 隠れた意味を読み解く力・解釈ストラテジー 文に新たな価値を付与する力・記憶ストラテジー 情報を脳内に定着させる力)
この本を書いたのはどんな人?
石黒圭さん。日本語を研究している研究者で、一橋大学国際教育センターの教授です。「石黒圭研究室」のサイトには著作の紹介、さらに充実した日本語関係資料へのリンクがあります。一橋大学には講師をしている漫才師がいるとか、プロだということを知らず、結婚式の二次会で司会をお願いしてしまったとかの情報もあって、サイトを訪ねてチラッと眺めるだけでも、楽しいので是非オススメです。
この本にたどり着くまで
同じ著者の「文章は接続詞で決まる」を先に読んで、この本を知りました。アマゾンで「このレビューが参考になった」と一番多く投票されたレビューには以下のような記述がありました。
なかでも北大路書房刊:心理学ジュニアライブラリの一冊「読む心・書く心」はわかりやすさという点で当該書籍にまさりますが、当該書籍ほど、いわば「即戦力」として、現在自分が(さほど)意識せずにおこなっている「読む」という行為を吟味検証し、改善を加えていく助けとなる本は他にないように思えます。
「読む心・書く心」の方がわかりやすいと書いてあるではないですか、それにジニア向けですから、私のような低学歴にはぴったりと思い先にこちらを読みました。そのときの紹介ブログがこちらです。
そして、この本を読んだと言う訳です。「文章は接続詞で決まる詞、接続詞に注目するのです。
何冊も本を書く人は、何度も同じことが出てくると思いますが、いつも詳しく説明するのは無駄なのでだんだん簡単になります。ですから、同じ著者の本を何冊も読むなら、書いた順番に読むべきだと思いました。
日本語研究者が書いた「『読む』技術」
研究者が書いた本と言えば、難解な用語や難しい言い回しがあって読みにくいのではないかと心配する人があるかも知れません。しかし、そこは心配無用です。なにしろ日本語の研究者なのですから、どう書けば分かり易い文章になるか研究しています。分かりにくい文章を書くはずがありません。
それに、書いてある内容は研究に裏打ちされ、論文で発表にされていることがベースになっていることです。主要参考文献には代表的なものが掲示されていますが、日本語タイトルのものが9本、英語タイトルのものが8本。興味深く、役に立つのは間違いないと思います。
そして、「読む」技術について書かれていますが、それは書くときにも役に立つ技術だと思います。
せっかく本を読むのだから、身に着くように読みたい、そして、分かりやすくてみんなに読んで貰える文章を書きたい、そんな人にお勧めの本です。