シロッコ手習鑑

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シロッコ手習鑑

高卒シニアなのに臨床心理士になりたいと思い立って放送大学生になりました。

樹木希林さんの演技が見もの・河瀬直美監督「あん」

映画

【注意】ネタバレがあります。私はこの映画はある程度の情報を集めてみた方が映画の良さを味わえる作品だと思います。しかし、逆に考える人は読まない方が良いと思います。 

あん DVD スタンダード・エディション

あん DVD スタンダード・エディション

 

映画『あん』予告編 - YouTube

そうだ、映画『あん』をみよう!

5月30日(土)の朝、テレビを見ていましたら、樹木希林さんがゲストの番組を放送しておりました。

ぐっさんを連れて行くならこんなトコ!」。樹木希林さんがタレントのぐっさんをお気に入りのお店に案内するという企画のようです。樹木さんが前に住んでいたところを知り合いのシェフに譲ったというブロックむき出し、コンクリート打ちっぱなし内装のレストラン。よく利用するという西麻布の「PRESS 601」というブティック、駒場の旧前田家本邸。

樹木希林さんはこの日から公開される「あん」という映画の話をしていました。

彼女のお孫さんも出演しているという話も。

「オーディションがあるから受けてみなさいよ」と言ったのだそうですが、娘さんもおムコさんの本木雅弘さんも反対。そりゃ、そうです。主演が決まっている大物女優の樹木希林さんの孫です。オーディションだって、落とすに落とせないではないですか。

それでも、オーディションを受けさせてしまうのは、かつてのテレビドラマ「寺内貫太郎一家」のおばあさんが蘇ったみたいですね。

5月6日放送の「徹子の部屋」で樹木希林さんが出演して映画について話しています。

河瀬直美監督が厳しくて、孫には可哀そうなことをしたと樹木希林さんが言っていますね。「おばあちゃんには会わないでください」と言われたとか。どなったりするのではなくて、河瀬監督の要求するレベルが高いのです。せっかくやってもカットされてしまったり、そんな話をしています。

とても厳しい監督のようです。樹木希林さんのお孫さんだから、オーディションを通すなんて、なさそうです。余計な心配をしてしまいました。

『あん』は何を描いたどんな映画なのか

あんこ作りの好きな人が、どら焼き屋さんで美味しいあんこ作る、そんな話です。ただ一筋にあんこを作りたい。その喜びが映像になっています。視点は永瀬正敏さん演ずるどら焼き屋の店長の側から描かれています。

あまりパッとしないどら焼き屋さんではパートさんを募集しているのですが、そこに樹木希林さん演ずる徳江が雇ってもらいたいと訪ねてきます。時給は600円と安いのですが、300円でもいいと言い出す始末です・・・。

この映画をシリアスな物語として見るとかなり変です。まず、120円のどら焼きを作って売る、それほど繁盛していそうもないどら焼き屋の雇われ店長で生活は出来るのか、と思ってしまいます。店の経営についてはまったくリアリティがありません。

これは童話、ファンタジーなんですね。ありそうに見えるけれども現実にはない、そういうお話です。

なぜ、そんなに餡を作りたいのか、それは主人公の徳江が社会とかかわる機会がなかったからなのですが、そこから先は映画をご欄になってください。

原作はドリアン助川さんの「あん」 。第25回読書感想画中央コンクールで指定図書(中学校・高等学校の部)に選定されているんですって。せっかくの本なのに感想文を書かなくてはならないと思って読むと、面白さがなくなってしまいますね。学生のときは感想文が嫌いでした。大人ウケを狙ったのがミエミエの感想文が書かれるかと思うと、選ばれてしまった「あん」には気の毒で仕方がありません。

ドリアン助川さんが「叫ぶ詩人の会」で活躍していたという記憶があります。

 

カンヌ国際映画祭の常連受賞監督・河瀬直美さん。

河瀬直美監督の映画を始めてみました。映像が美しくて、音響も素晴らしいから、それだけでも面白くて成立してしまいます。

オープニング。永瀬正敏さんがチープなアパートの鉄骨階段をカタンカタンと上る音。爛漫に咲いた桜並木の映像が続くかと思うと、それは美しい若葉の並木に変化して、それが長い時間の経過を表現していたりします。

油がなじんだどら焼きを焼く黒い鉄板。するするとクリーム状の黄色っぽい生地が垂らされます。それが程よくやけてコテでひっくり返されるとドラ焼きの皮になります。やや膨らんだ円盤状のカステラ風の生地を2枚組み合わせ、あんを挟めばどら焼きが完成。淡々と繰り返されるその作業が何度も登場します。

映画「あん」のよその人の感想を見みると、ストーリーの説明が多いですね。ストーリーは重要ですけれど、フツフツと煮えるあんこの映像、ドラ焼きを焼く映像、桜の花の美しさ、ブツブツと話す樹木希林さんのカワイさ、女子高生の他愛もない会話と店長さんのブスッとした表情との対比、それが面白いと思います。

台詞が演劇的でない

演劇的でないというのは、対話により新しい事実が出てきて展開したりしないということです。

対話でなくて、ドキュメンタリー・タッチと言うのでしょうか、ひとり言のようなセリフがほとんどです。

永瀬正敏さん演ずるどら焼き屋の店長が作業している間、女子高生3人が他愛もない会話を続けます。言葉は雰囲気であって、言葉の力により、聞き出したり、訴えたりするのではないですね。

樹木希林さんの独り言のようなセリフ。言葉の意味そのものよりも、演ずる人の内面の奥深くを画像と音声で記録しよう、そんな意図が感じられる芝居でした。

そして、それは見事に成功していると思います。言葉そのものの力をあまり必要としていませんから、外国でも理解しやすいと思います。

樹木希林さんの演技が素晴らしくて、彼女のワンマンショーのような映画でもありました。

永瀬正敏さんがどら焼き屋の店長を演じています。私が見たことがあるのは山田洋次監督の「息子」、「学校Ⅱ」、「隠し剣 鬼の爪」でしょうか。存在感のある役者さんですね。

浅田美代子さんも意地悪いどら焼き屋のオーナー役で出演しています。

見ていたのはほとんど女性でした

映画を見たのはイオンモール幕張新都心にあるイオンシネマ。100席ほどのスクリーン4です。7割くらい座席が埋まっていたでしょうか。そのほとんど女性でした。男性は2、3人。女性の監督だから、でしょうか?

クリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」を見たとき、「男の人は戦争映画好きですね」って、言われたのを思い出しました。

樹木希林さん演ずる徳江の手紙

愛知県新城市の桜 ドリアン助川 小説「あん」朗読 - YouTube

映画の最後あたりに手紙が読まれます。それがこれですね。

私も若いときに似たようなことを考えたことがあります。南海の孤島の誰も知らないところに美しい花が満開に咲いて楽園のようなところがあったとしても、その存在を誰も知らなかったら花は存在する意味があるのだろうか、そんなことをです。そんなことから出発して、もっと深く考えて完成させたのがこの手紙なのでしょう。

この朗読されている手紙の内容が一番大切なのでしょうが、一度映画を見ただけでは、そこまで深くは読み取れませんでした。もう一度見れば、あんこを作りたいおばさんの話から、この手紙の内容まで深く理解できるかも知れません。

2015/06/07追記

樹木希林:主演映画「あん」語る 小豆の声は聞こえない!?」の河瀬監督の演出が面白いです。

樹木希林さんが永瀬正敏さんに「小豆がどんなふうに育って、どんなふうにしてここまで来たか、想像しなさい」と話すシーンがありました。河瀬監督、小豆が手元に届くまでの旅を本当に見て来たんですね!

頑張って撮影したシーンは全部カットされて、その残りなのだそうです。だから、独り言のような台詞なんですね。