「焼け跡闇市派」の作家・野坂昭如さんがなくなりました。
野坂さんと言えば老後について討論するTVの番組のとき、「オレは今が老後なんだよ」と言って、笑いが起きたのが記憶の残っています。私も、老後を心配する年齢になってきました。
野坂さんの直木賞受賞作品の原作をアニメ化したスタジオジブリの作品に「火垂るの墓」というのがあります。高畑勲さんが脚本・監督。第1回モスクワ児童青少年国際映画グランプリ、国際児童青年映画センター賞など多数の賞を獲得した名作です。ビデオが発売された頃には何度も見た記憶があって、何度も涙を流しながら見た反戦アニメです。
「他人のうちに来てあれでは駄目じゃん」
アニメはこんな話です。
太平洋戦争も終りの頃、清太(14)と節子(4)は大空襲で母も家も失う。親戚の家に身を寄せることになるが、戦争が進むにつれて親戚の家でも生活が苦しくなり邪魔扱いされるようになる。清太と節子はそれに耐えられなくなって家を出る。
防空壕の中でふたり暮らし始めるのは楽しいことでした。しかし、楽しいのは最初だけ。食料も次第になくなり、節子は栄養失調になってしまいます。清太は畑から野菜を盗んでつかまったりします。節子は清太の奮闘もむなしく死んでいき、そして、清太も・・・。
そんな悲しい話なのですが、あるとき、2チャンネルを見ていると、「他人のうちに来てあれは駄目じゃん」とか「清太が無能だから、自分が最も愛する妹がその報い受けて死ぬんだ」という感想があることを知りました。
そのときに感じたのは「なんて酷い感想なのだ」ということです。しかし、高畑監督の狙いもそうだと言うので、ネットを検索してみると発言を見つけることが出来ました。
公開時のパンフレットには「コミュニケーションが苦手な現代によくいるタイプの少年が戦争中にどうなるのか」というような事が書いてあったらしいのです。(参考:『火垂るの墓』と現代の子供たち)
DVDを購入して見直した
そうだったのか・・・。しかし、本当にそうなのだろうかと疑問もわきます。確認したくなったので、DVDを購入して見直しました。
今度は涙は出ませんでした。やはり、悲劇の原因は主人公の少年である清太にありました。幼い妹の節子が栄養失調になったのは西宮の親戚の家を出たことにあります。結末を知る者からすれば、「悲劇の原因は清太が周りの情勢を観察もしないで無計画な行動をしたことにある」と言うことが出来ます。
設定として、「未熟な少年」の性格が悲劇を呼んでしまうということなのでしょう。そんな高畑監督の狙いも知らないで涙を流しながら見ていた私は何だったのだろうという思いもあります。しかし、2chの批判は結果を知っているから、「あそこで我慢していれば」と言えるんでしょうが、私には避けられなかった悲劇に見えたのです。
アニメが公開されたのが1988年。もう、27年も前の作品です。
野坂さん、ありがとうございました。
大島渚さんと小山明子さんの結婚30周年パーティーで、祝辞を述べると大島さんに殴りかかる事件もありました。せっかく祝辞の原稿を書いて準備してきたのに忘れられていたから怒ったのですよね。私は、そんな単純な野坂さんが大好きでした。
野坂さんのTV討論も面白かった。ありがとうございました。合掌。