目次
インターネットへの絶望感
1995年、初めてインターネットに出会いました。NTTポータルサイトのリンクをクリックすると全く別のWWWサーバが表示されます。世界中のコンピュータが繋がっているのには度肝を抜かれ、「これからは大変な時代になる」と興奮して友人に電話したのを記憶しています。
当時使っていたPCはNECのPC-9801RA。Windows 3.1にwinsockを入れ、遅い2400bpsのモデムを使い「ピーガガガガ」とプロパイダに接続、海外のWebが徐々に見えてきたときは「おぉ、すごい!」と感動したものです。
私がインターネットを始めて10年も経った頃、 「はてな」の非常勤取締役だった梅田望夫さんは「ウェブ進化論」の中で『誰もがWebを通して、自由に情報を発信できるようになる。いわゆる「Web2.0」だ』と高らかに謳いました。
ところが、2008年11月、梅田望夫さんは次のようなコメントをツイッターで発言せざるをえませんでした。このときネットは荒れました。
はてな取締役であるという立場を離れて言う。はてぶのコメントには、バカなものが本当に多すぎる。本を紹介しているだけのエントリーに対して、どうして対象となっている本を読まずに、批判コメントや自分の意見を書く気が起きるのだろう。そこがまったく理解不明だ。
— Mochio Umeda (@mochioumeda) 2008, 11月 8
この本の著者中川淳一郎さんも、梅田望夫さんと同じような絶望感を味わいます。ニュースサイトの編集者をしていたのですが、「荒らし」行為をする人、ひどい悪口を書く人、やたらとクレームを言ってくる人に頭を悩ますことになります。
この本の目次は次のようなものです。
はじめに バカを無視する「ネット万能論」
第1章 ネットのヘビーユーザーは、やっぱり「暇人」
第2章 現場で学んだ「ネットユーザーとの付き合い方」
第3章 ネット流行るのは結局「テレビネタ」
第4章 企業はネットに期待しすぎるな
第5章 ネットはあなたの人生を何も変えない
これを見ればなんとなく言いたいことが想像できるかもしれません。要するに「ウェブはバカと暇人のもの」だ。それを前提にウェブを作ろうという話です。
読まれる記事へのアドバイスは参考になる
「第5章 ネットはあなたの人生を何も変えない・素人に興味のある記事は書けない」の中にネットニュース編集者である著者に「記事を書きたい」と連絡が来たときの話があります。
そのときの対応が参考になりました。それは、読まれるブログを書くにはどうすればよいかのヒントになったからです。まず、「あなたがどんなことに興味があるか教えてください」と質問し、その答えに対して読者が興味をもちそうな執筆の依頼をするのです。それがどんな内容なのか紹介し、さらに他のパターンも考えてみます。
- 興味:「お菓子作り」
編集長「100円以内で作れるおいしいお菓子の記事を書いてください」
さらに思考を広げてみる。
1万円以上で作るお菓子の記事・珍しい材料・昔のお菓子・アフリカのお菓子・健康に良いお菓子・健康に悪いお菓子・・・。 - 興味:「食べ歩き」
編集長「これまでにもっともカロリーが高そうだった店を紹介してください」
さらに思考を広げると。
値段が高い・食べてがっかりした・意外だった・味が合わなくて食べられなかった・ひどく臭かった・一番待たされた店・一番気分を害した店
-
興味:「プロ野球の横浜ベイスタース」
編集長「横浜スタジアムでもっとも人気の高いお弁当を紹介してください」
さらに思考を広げてみる。
売れない弁当と原因・一番空席になりやすい場所とその理由・テレビに映る方法・野球とは関係ない得する情報・・・ 。
- 興味:「東北地方」
編集長「県民性の違いを、実証できるデータと共に紹介してください」
思考を広げてみる。
明治維新のとき、福島の会津、二本松と「三春藩」など奥羽越列藩同盟を裏切った地域との現在のいがみあい・B級観光地・廃墟・珍スポット・巨大建造物・・・。
自分が書きたいこととの折り合いも必要でしょうが、こんなふうに考えを広げていけば読まれやすい記事になるのかも知れません。
読み終えての感想
Web2.0とか言っても、新しいものはないのだよ。期待するのはやめな。
そんな話で本は終わります。
そうなのでしょうか?
私はウェブのおかげでいろんな本に出会いました。以前は小説、映画関係の本が中心でした。しかし、ネットを見るようになってからは、ホットエントリーで紹介された本を読みたいと思うようになりました。
アマゾンの「レビュー」はとても参考になります。そして、「よく一緒に購入されている商品」、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で推薦される本でさらに興味が広がります。
ネットでいろんな人との出会いもありました。ネットで出会って結婚した人も何人か知っています。特にiPhoneが発売されたとき開始された写真共有サービスの「Big Canvas PhotoShare」の仲間は今でもTwitterやFacebookで繋がっていて、何度かリアルでお会いしている人もいます。
Rubyはネットで話題になったから学び、Ruby本の読書会、RubyKaigiに何度か参加しました。「ひげぽん」さんの影響でLISPを学び、Haskellもいろんな人から学びました。
みんなウェブがあったからこそ出来たことだらけです。