シロッコ手習鑑

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シロッコ手習鑑

高卒シニアなのに臨床心理士になりたいと思い立って放送大学生になりました。

自分の欠点を笑いにしてしまう面白さ・井上ひさし「家庭口論」のユーモアの正体

本の紹介 ブログ

目次

家庭口論 (中公文庫)

家庭口論 (中公文庫)

 

随分と前に読んだ本を読み直した 

この本が発売されたのが1974年。随分と前に読んだ本を読み直しました。

私のブログは客観的なことを並べていることが多く、主観的な主張足りないと感じています。他の人は言わないオリジナルな主張をしたいと考えても実現できていません。

それにはどうしたら良いのか。ヒントにならないかと読み始めたのです。

この本は、面白く読んだ記憶があります。本には何が書いてあって、何を面白いと感じたのか。客観的なことばかりを書く自分のブログと違って、作家のエッセイは主観がほとんどのはず。どんなことが書いてあったのか読んでみようと思ったのです。

ユーモアは推論が常識から外れている

この本は昭和48年1月号から昭和49年2月まで「婦人公論」に連載されたものを本にしたもの。 井上ひさしさんが家庭で起こった出来事をおもしろ可笑しく書いています。どんな出来事が書いてあるのか一話だけ紹介してみます。

  • 「酢豚と菜っぱ」
    「家庭口論」というタイトルを付けた理由が語られ、奥さんとよく口論になる話が始まります。そして、口論で負けそうになるとつい手をあげてしまうという話。ほっぺたをひっぱたいたら包丁を持ち出されたとかも書いてあってびっくり。井上ひさしさんと言えばDVで離婚したことが話題になりましたが、この本にさりげなく書かれtいるのに唖然としました。
    それでも、家族は良いもんだと、自分の父が物心ついたときには死んでいて、母親と暮らした話したが始まります。
    自分の弁当が他の家庭と違うこと。井上ひさしさんは孤児院での弁当の話。
    それから結婚したいきさつが語られ、そんな生まれ育った環境が違うから美味しいものを食べる順序が逆。
    奥さんは好きなものから食べるので酢豚から食べ始め、井上ひさしさんは美味しいものは最後に食べることから、たくあんや菜っぱから食べ始め、「酢豚ばっかり食うな」と口論になるのです

どんなところが面白いかを書いてみます。

「おい、酢豚ばかり食うな」と言ったあとにドイツの言語学者の名言を持ち出し、「ほんとうに男らしくないわね」と言われたときの自分の態度を突き放して書く。

別の話では新聞に載った帝国ホテルの求人広告に妄想を働かせて、そこの食器洗い場でご馳走にありつくシチュエーションが描かれます。

行動が常識から外れているのです。落語の与太郎は常識から外れたアホな行動が可笑しさの元になっていますが、それと同じなのです。

 

文章作法でよく紹介される「理科系の作文技術」に「7.2 事実とは何か 意見とは何か」という節があり、その中で意見の分類をしています。省略して紹介します。

  1. 推論 ある前提にもとづく推理の結論、または中間的な結論。
    例:彼は(汗をかいているから)暑いに違いない。
  2. 判断 ものごとのあり方、内容、価値などを見きわめてまとめた考え。
    例:彼は優れた実験家であった。
  3. 意見  上記の意味での推論や判断、あるいは一般に自分なりに考え、感じて到達した結論。
    例:リンを含む洗剤の使用は禁止すべきである。
  4. 確信 自分では疑問の余地がないと思っている意見。
  5. 仮説 仮に打ち出した考え、意見の中に入れてもいいが、<仮の意見>である。
  6. 理論 証明になりそうな事実が相当あるが、まだ万人にそれを容認させる域には達していない仮説。たとえば進化論。
    全ても人が容認せざると得ないほど十分な根拠のある理論は法則と呼ばれーー例えば熱力学の法則ーー、これは意見ではなく事実のカテゴリーに分類される。

そして、事実の評価は真か偽かのどちらかであり、意見の評価は多様だと書いていあります。

ユーモアエッセイはある出来事に対して、おもしろ可笑しく意見や仮説を書いてあります。その可笑しさを生み出すのは何か。意見や仮設を生み出す推論、判断が常識からかなりずれているからだと思います。意見の占める割合もずいぶんと多い本です。

まとめ

私のブログは客観的なことを列挙するだけで、意見を主張することが少ないなぁと感じています。それで、むかし読んだ井上ひさしさんの「家庭口論」を読み直してみました。ユーモアエッセイは主観的な記述がほとんどだと思ったからです。

読んでみると、ユーモアエッセイは「理科系の作文技術」のいう意見だらけなのが分かりました。そして、その意見である推論、判断、仮説が常識からずれてくると可笑しくなってくるのが分かりました。

他にも、作家が自分を見つめて晒す厳しい目をもっているのに感心したのですが、それは別に書くことにします。

 

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

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