シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

クリント・イーストウッド演ずるブロンディは良い人なのか/セルジオ・レオーネ監督「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」

目次

ネタバレ注意!

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イタリアで作られた台詞が英語の西部劇

マカロニ・ウェスタンと呼ばれる映画がありました。Wikipediaではこんなふうに紹介されています。

マカロニ・ウェスタンは、1960年代から1970年代前半に作られたイタリア製西部劇を表す和製英語。大半のものはユーゴスラビア(当時)やスペインで撮影された。
イギリス・アメリカ合衆国・イタリアなどでは、これらの西部劇をスパゲッティ・ウェスタン (Spaghetti Western) と呼んでいるが、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』が日本に輸入された際に、映画評論家の淀川長治が「スパゲッティでは細くて貧弱そうだ」ということで「マカロニ」と呼び変えた(中身がないという暗喩も含んでいるという説もある)。

 (Wikipedia「マカロニ・ウェスタン」より)

1970年代か80年代に、洋画劇場で放送された日本語吹き替えの「荒野の用心棒」や「星空の用心棒」を見た記憶があります。その後にNHK-BSの『星空の用心棒』ちらっとを見て、かなり奇妙に感じたことがあります。舞台はアメリカのはずなのに話しているのがイタリア語なんです。変ですよね。

 TOHOシネマズ 「午前10時の映画祭」で上映されているセルジオ・レオーネ監督「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」を見てきました。

緊張感があってこれぞエンターテイメント。たっぷりと映画の面白さを味わうことが出来ました。

今回は英語の台詞に日本語の字幕。最後に英語バージョンであることが告げられ、英語のエンドロールが流れました。映画が始まるときにもクレジットタイトル があったので英語版が作られたときに追加されたのでしょう。

 

英語のタイトルは「The Good, the Bad and the Ugly」

三人の悪党が主人公です。英語のタイトルは「The Good, the Bad and the Ugly」。いい人、悪いヤツ、卑劣なヤツ。その三人が隠された20万ドルの金貨を探す話です。

まず、一人ずつ紹介されます。

  • お尋ね者がトゥーコは、賞金稼ぎの男たちを撃ち殺して肉をかじりながら出てくる。そこに「the Ugly」
  • 悪いヤツが平和そうな家庭にのっそり現れます。子どもと妻はは怯えて隠れ、主人の前で勝手に食卓の食事をします。ピーンと張り詰めた緊張感。何が起きるのかと見守ります。「ビル・カーソン」という名前を聞き出し、男とその息子を殺します。そして、自分を雇った老人も殺したところに「the Bad」
  • 賞金のかかったトゥーコをブロンディが捕まえて賞金を受け取る。絞首刑にされそうになったときブロンディがロープを撃って、トゥーコを逃がします。ブロンディが「The Good」

このブロンディを演じているのがクリント・イーストウッドなのですが、全くいい人ではありません。この三人が騙し合い、お互いを殺そうとするのですが、金貨の情報を知ったブロンディは殺せません。殺してしまうと金貨のありかを知ることが出来ないからです。

それにしても、とんでもない悪党だらけです。それでもとても楽しめる。こんな映画を見て楽しめるということは私も悪党になれるということなのでしょうか。 

騙し騙され虐待されるのは三人の悪党同士

銃を買い求めるふりをして、その 銃で店主を脅して金まで奪いとる。平和そうな家庭をの男を依頼されたからと言って撃ち殺す。撃ち殺す前に金は出すから、俺を殺すように指示したやつを殺してくれと言われて、雇い主も撃ち殺す。でも、こういうシーンはあっさりと描かれます。だからでしょうか、映画のウソだと知っているからでしょうか、私には悪党を憎む気持ちは生まれてきませんでした。

延々と虐待を描くシーンはあります。沙漠で水を与えられずに虐待されるクリント・イーストウッド演ずる「いい人」の悪党ブロンディ。南北戦争の南軍の制服をきていたことから、北軍に捕らえられ、北軍に潜り込んでいた「悪いヤツ」に「金貨のありかを言え」と殴られる「卑劣なヤツ」。金貨のために虐待しあっているのは悪党同士なんです。またこれも、同情する感情は起きてこないのです。

バックグラウンドに描かれる南北戦争

それに比較して、南北戦争の兵士たちは、負傷して苦しみながら死んでいきます。

三人の悪党は、それぞれ5人殺したのか、10人ころしたのか、とんでもない男のはずですが、戦場に横たわる数百人の戦死者たちをみると、戦争で殺し合いをしている方がもっと酷いんじゃないかと思えてくるから不思議です。

ラストの決闘の場所となる広大な墓地。そこを「卑劣なヤツ」のトゥーコが金貨の埋めてあるはずの墓標を探して走り回ります。カメラは走るトゥーコを捉え、バックの墓地の画像はボケたように流れます。なんと広い墓地なのか。ここには戦争で死んだ多くの兵士が埋められているのです。そこで悪党と戦争が対比されます。こんな対比はみたことがありません。

ただ一つ描かれる人間の優しさ

クリント・イーストウッド演ずるブロンディと「卑劣なヤツ」のトゥーコが橋を爆破して、戦いは終わります。ブロンディは金貨が埋めてある墓地に行く途中、負傷している南軍の若い兵士を見つけます。

ブロンディは兵士の傷を確信します。それほど長い命ではないと考えたブロンディは自分の着ていた上着を脱いで若い善良そうな兵士に着せ、くわえていた葉巻を吸わせます。若い兵士は満足そうに死んでいきます。
悪党も同情する南北戦争の大量の殺し合い。セルジオ・レオーネ監督は戦争で死んでいく若い兵士を、人の命をなんとも思わない悪党でも同情する存在として描いているんです。この南北戦争のシーンだけでも相当のお金が必要だったと思います。それでも、描く必要があると判断したのでしょう。

心温まる感動がないのは名画ではないのか

こんな残虐なシーンがてんこ盛りの映画なのに、映画館にはときどき笑い声が起きました。

風呂に入っている「卑劣なヤツ」のトゥーコが拳銃で狙われます。しかし、泡の中の拳銃で撃ち殺し、こんなことを言うんです。「喋ってないで撃たなきゃ」www。

ラストにトゥーコを墓場の十字架に昇らせて縛り首の状態にしたままクリント・イーストウッド演ずるブロンディが立ち去って行きます。そこに「The Good」のタイトル。これがいい人はずないでしょう。

「いい人なんかじゃねえっ!」って、トゥーコが叫びます。

ここで映画館にクスクスという笑い声が広がりました。お笑いの要素は少しもなさそうなんですが、笑ってしまいました。ブロンディも悪党ですよね。

ラストの決闘でのにらみ合いがやたら長い

最後、金貨の隠し場所を知っているブロンディが三人の決闘を提案します。

隠し場所の名前を書いた石を中央に置いて、三人は離れて三角形の形になります。

そこからのにらみ合いが長い。

エンニオ・モリコーネの音楽がガンガンと盛り上げます。三人の悪党のアップ。目。腰の銃。それらのカットが重ねられます。

そして・・・。

「続・夕陽のガンマン」の動画はYoutubeにいっぱいあるのですが、ライセンスの怪しいものが多いです。「20世紀フォックス ホーム エンターテイメント」のものなら大丈夫そうなので貼り付けておきます。

タラララ~♪ ファ~ファ~ファ~♪  この音楽にもユーモアがありますね。