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「イスラームについて知るにはこの本を超えるものはない」
2月7日、アメリカの大学で准教授をされている「はてな」ユーザー kbooks さんの「史上最高のイスラム入門書!イスラム世界について知りたい人の必読書」を読みました。
記事は渥美堅持さんの「イスラーム基礎講座」の紹介で、以下のように絶賛しておりました。
期待を大きく上回る良書でした。
(略)
佐藤優氏が「イスラームについて知るには、この本を超えるものはない」と述べていたが、私も全く同意見である。
佐藤優さんといえば、大学の神学部で神学や無神論などを学んだ人(wikipedia:経歴/学生時代)。宗教研究のプロが「この本を超えるものはない」というのですから、良書に違いありません。
イスラム過激派による事件が多く発生しています。なぜ、事件が多発するのか。イスラム教について知りたいと考えていましたので、購入することにしました。
読み終えた成果はというと、書名にもある「基礎」についてはそれなりには理解できたと思います。
そこで、興味を持ったイスラム文化について、「今まで知らなかったけれど、あぁそうだったんだ」と理解したことを書いてみます。
トルコのクーデター未遂事件はどんな事件だったのか
2016年7月15日、トルコで軍がクーデターを起こし失敗した事件がありました。それはなぜおきたのでしょう。
「イスラーム基礎講座」から得た知識で解読してみます。
トルコは親日の人が多く、食べ物も美味しいそうだ。そんな理由でトルコへ観光に行ったことがあります。そのときのことを紹介したのが次の記事です。
トルコはイスラム教の国。一日五回の「礼拝」、飲酒・賭博の禁止、黒い布をまとって身を隠す女性、ラマダンの断食・・・と戒律の厳しい国というイメージがありました。
ところがトルコに行ってみるとかなり自由な国に感じました。
- 車でイスタンブールを走っているとき、モスクの塔から礼拝を促すアザーンが流れていましたが、街は普通に歩いている人が多かった。
- 飲酒・賭博は禁止とクルアーンに書かれているはずですが、旅を案内してくれたガイドと運転手はビールも競馬も大好き。TVでサッカーの試合をみながらビールを飲み、売店から買った競馬新聞で二人でレースの予想をしていました。
- ムスリムの女性はスカーフのような「ヒジャブ」と言われる布を巻いているのですが、イスタンブールではそれほど見かけませんでした。(観光客を見ていた?)
トルコは世俗主義の国
Wikipedia をみると次のような記述があります。
1923年、アンカラ政権は共和制を宣言。翌1924年にオスマン王家のカリフをイスタンブルから追放して、西洋化による近代化を目指すイスラム世界初の世俗主義国家トルコ共和国を建国した。
(Wikipedia「トルコ・歴史」)
「オスマン王家のカリフ」 というのはアッラーから預言を受けたムハマンドが亡くなったあと、行動や問題の解決方法がアッラーの啓示に沿っているかどうかを判断する指導者です。イスラムの国ではアッラーの啓示にそぐわない法律は作れないのです。
そのカリフを追放したのが「トルコ革命」で、軍人「ムスタファ・ケマル」が指導したものです。
下の写真は地下都市を観光したときに撮った入り口に並ぶ売店です。国旗に描かれた「ムスタファ・ケマル」が映っています。今でも英雄のようです。
下の写真はカッパドキアの洞窟民家です。ここにも「ムスタファ・ケマル」の肖像がみえます。
また、革命後はアラビア文字を捨て、アルファベットを使うようになりました。
社会格差が大きくなると原始イスラムへ帰ろうとする
トルコは世俗主義が進んで民主主義になります。
民主主義が進むと民主主義とは逆の現象が生まれます。トルコ国民はイスラム教です。イスラム教は神の前での平等を謳っていますから、社会格差が大きくなるとムハマンドの時代へ帰ろうとする人たちが力を持つようになります。
民主主義で選ばれた、エルドアン大統領は政治と宗教が分離することへの危機感を持ち、主権在民ではなく、主権在神のイスラム教の世界を作ろうとします。
しかし、それは7世紀の古い価値観ですから、軍の指導者はそれを世俗主義に戻したいと考えます。そんな理由で起こったのが軍によるクーデターです。
クーデターは失敗。国民は歓喜しています。
しかし、イスラム世界 の外側から見ると、古い価値観に戻ってしまっていいんだろうかと心配になります。
一般にイスラーム社会は男尊女卑の世界と考えられており、実際に現在でも多数の虐待や差別があり深刻化している(「名誉の殺人」、「女子割礼」、「女子の就学制限」)。ただし、割礼自体はクルアーンなどでは言及されておらず、イスラーム以前からある土着の慣習である。
(Wikipedia:イスラム教・「女性差別」問題より)
トルコのガイドさんと運転手さん
トルコを案内してくれたビールと競馬が大好きなガイドと運転手はこれからも、ビールを飲んだり、競馬が出来るのでしょうか。
イスラーム教の聖典であるクルアーンはアラビア語以外のものは認められません。現在はアルファベットを使っていますが、また、アラビア文字に戻ったりはしないのでしょうか。
私は自由が好きです。古いイスラム教の世界へ帰ろうとする人たちとはどう理解し合えば良いのか・・・イスラムの人たちに世俗主義を理解して貰えばよいのか、逆に私たちがイスラムに近づけば良いのか・・・困ってしまいます。