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本の紹介ブログは何を書けばいいのか
放送大学図書館の二階には集密書架があります。こんなのです。
ここには旧千葉図書と文学(900)があります。ここの本を読みたいときは、動かないよう止めてあるロックを外し、ハンドルを回して書架をひとつひとつ移動させます。*1
こっちには新聞の縮刷版、和雑誌。こちらは電動で動きます。
放送大学図書館もなれてくると、集密書架に潜り込んだりするようになり、気になった本があると書架を移動させて本を探したりします。そんなことをしていましたら、文学コーナーで林真理子さんの『20代に読みたい名作』という本を見つけました。
手に取ってパラパラ眺めてみます。
見出し3ページに渡って名作と言われる書名が並んでいるのですが、そのうち私の知っているが半分くらい、読んだことあるのは2冊くらいでしょうか。
最初に書いてあったのは遠藤周作さんの「わたしが・棄てた・女」。
本文を少し立ち読みしてみます。
「恋愛というのは、いったいどのようにして成り立つのであろうか」と、恋愛について語り始め、次に女友達とのエピソードが紹介されます。
彼に買ってもらった高価な服を見せびらかす女友達。林真理子さんはトルコ風呂(昔のソープランド)へ行く料金を考えれば安いもんだと憎まれ口を叩き、激怒された話です。
そして、男が単に肉欲のために近寄ってくる恋は最下位と言います。
まぁなんと面白い本の紹介なのだと思いました。本の紹介だけでなく、林真理子さんの考えがしっかりと書いてあり、私もこんな本の紹介を書いてみたいものだと思いました。
私は図書館から本を借りたことがありません。ゆっくり赤線を引いて、メモを書き込みながら読みたいからです。
さっそくアマゾンから購入して、読みました。本は真っ赤で、メモだらけになりました。映画や本を紹介するときはどんな書き方をすればいいのか、お手本になると思います。どんなノウハウが詰まっているのか、紹介してみます。
遠藤周作『わたしが・棄てた・女』
上が新装版。古い版も掲載します。これらのレビューも参考になります。
どんなことが書いてあるか
書き出しに少し紹介しましたが、分かりやすく整理をしてみます。
- 「恋愛はどのようにしてなりたつか」がテーマのアフォリズム。
女は、恋人が自分の肉体を求めるのは愛情という精神が揺り動かしているからだと信じたい。男はそれほど純粋ではない。 -
自分の主張により激怒されたエピソード。
彼に買ってもらった高価な服を見せびらかす女友達のエピソード。トルコ(今のソープランド)へ行くより安いもんだと言って、激怒される。 -
アフォリズムの続き。
男が肉欲のために近寄ってくる恋は最下位だ。女は絶対に認めたくない。 -
最初に読んだときの印象。
高校生のときに読んで、嫌な小説だと思った。
小説の大家がなぜこんな小説を書いたのか、意外さが残った。
後味が悪く、今でも変わらない。 -
小説の時代背景を解説。
赤線に行く代りに女工のミツを抱こうとする大学生の吉岡を批判。
今のようなナンパもなく性欲が封印されていた。 - 吉岡はなぜ、ミツを被害者にしてもよいと考えるのか、状況を解説。
無理やり犯すところが泣けてくる。好き合った男女が結ばれる際のロマンティックな部分がまるでない。 - アフォリズムの結び。
完璧に同量に男と女が愛し合うなどありうるのか。
今でもその考えは続いている。
解説に登場する人物の相関図を書くとこんな感じになります。
何が面白いのか
林真理子さんの恋愛に対する考えが書いてありす。
「考え」とは何か。
かんがえ【考え】
考えること。また、考えた内容、考えて得た結論・決意など。 「そのことを-に入れておく」 「 -がまとまらない」 「良い-がある」 「父の-を聞く」(「 考え(カンガエ)とは - コトバンク」より)
- 「そのことを考えに入れておく」
結論を得ようと考えているが、その結論の候補に入れておく。あるいは、結論を得るための材料に使う。そんな意味でしょうか。 - 「 考えがまとまらない」
結論が出ない。
まず、彼に買ってもらった服を見せびらかす女友達に、「トルコ(今のソープランド)へ行くより安い」と売春婦扱いします。この意地悪さは強烈ですね。
それから、恋愛に対する考えを書いていきます。
高校生のときに読んだ『わたしが・棄てた・女』の印象を中心に自分が考えている理想の恋愛について考えるのです。
この章ではないですが、中国は女をおもちゃにするために足を奇形にさせる国だと言い、女性の身体を肉欲として扱われるのを嫌います。
纏足(てんそく)は、幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにするという、かつて中国で女性に対して行われていた風習をいう。
(「纏足 - Wikipedia」より)
そして、 「完璧に同量に男と女が愛し合うなどありうるのか」と考えますが、今でも結論は出ません。
林真理子の心情がよく描かれている。そして、その心情に共感できる。それが、面白さのモトなんだと思います。
「考え」は何処から生まれてきたか
ただ、最初からこんな考えがあったのかというと、高校生の時は、ぼんやりと「嫌な小説だ」と思っただけかも知れません。最初から答えがあったのではないと思います。
それはなぜなんだろうと考え、「完璧に同量に男と女が愛し合う」ということが理想なんだけれども、それは無理なんじゃないかと思う。そういう考えに行きついたのがこの紹介記事だと思います。
まとめ
林真理子さんの『20代に読みたい名作』を読みました。
この本は、文藝春秋の女性向け月刊誌「CREA」に1997年12月号から2002年5月号まで連載された54本の記事から構成されています。
ブログを書いても、自分の考えが書けないのが悩みですですが、自分の考えを書くとはどういうことなのか、この本を読んでよく分かりました
ブログで、映画や本の紹介をしたい人にオススメです。
蛇足
この本は面白くて役に立つ。そう思ったものですから、調子に乗って『林真理子の名作読本』も買いました。
そしたら、内容は『20代に読みたい名作』と同じで、これにはがっかりしましたが、こちらには雑誌に連載された「林真理子の文章読本」がありました。
林真理子さんはコピーライター出身ですから、読みやすさをとても気にします。「字ヅラが悪い」とダメ。漢字とかなのバランスや全体の美しさですね。それと、リズム。こんな内容が38ページに渡ってあります。
私は書き込みをしたいことから、なるべく大きな本を買います。そうでなかったら、こちらの文庫本がお得です。
*1:文学はこんなところに追いやらているんですね、可哀そうに・・・というか、文学は芸術の一部なのに、特別にこんなにスペースを割り当てられているとも言えます。演劇、映画、絵画、音楽、美術なんてこんなにスペースはありません。