目次
気になる明石家さんまさんのネタバレ
『’87初恋』から『北の国から』シリーズ を欠かさず見ていましたが、『北の国から '98時代』の録画を忘れて、気になっていました。
さらに、明石家さんまさんが《ネタバレ》をTVで話していましたから、尚さらのことです。こんな感じの《ネタバレ感想》でした。
そりゃぁ、感動するわなぁ・・・。
蛍と正吉結び付けた草太兄ちゃんが死んじゃって、
結婚式で・・・。
「えっ、草太兄ちゃんが死んじゃうの? どんな話なの?」って思うじゃないですか。
それが、ようやく見ることが出来ました。ふらりと入った市川のTSUTAYAに『北の国から '98時代』のDVDがあったのです。
やっぱり、 「北の国から 」は素晴らしい。
私が「北の国から '98時代」に感動したのはどの部分か、それはなぜなのかを考えていきます。
《トリックスター》北村草太
岩城滉一さん演じる草太兄ちゃんは《トリックスター》として重要な役割を持ちます。
トリックスターとは何でしょうか。
「『ウィキペディア(Wikipedia)』:トリックスター」には次のように書かれています。
トリックスター(英: trickster)とは、神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者である。往々にしていたずら好きとして描かれる。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、異なる二面性を持つのが特徴である。
この語は、ポール・ラディンがインディアン民話の研究から命名した類型である。カール・グスタフ・ユングの『元型論』で取り上げられたことでも知られる。
《善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、異なる二面性を持つ》。
草太兄ちゃんの性格がピタリと一致するではないですか。
草太は、いつも純と蛍の兄貴分として、黒板家の面倒と見てくれます。しかし、女グセが悪くて、「つらら」と付き合っていたのに、雪子に出会うと夢中になってしまい、「つらら」はソープランドで働くことになります。
大切な秘密でも、草太兄ちゃんに話してしまえば、「誰にもいうなよ」と言いながら、誰にでも、いくらでも、話してします。
しかし、彼は《草太兄ちゃん》として、純や蛍に慕われ、頼られているのです。
草太兄ちゃんの奇策
働いていた病院の医師と不倫をして、根室に駆け落ちをしていた蛍。その蛍が不倫相手と別れ、身ごもっている子を生むため、お金の工面の草太兄ちゃんを訪ねることから、今回のドラマの始まります。
蛍の決心を知った草太は「オラは味方だ」と言います。
不倫であれ、なんであれ、どんな理由でも草太兄ちゃんは蛍の味方をします。
もちろん、生まれてくる子どもの命が大切。まるで亡くなった母親の代理のように蛍を守ろうとします。
ただ、草太兄ちゃんは《トリックスター》ですから、静かに蛍にお金を都合して、ひっそりと子どもが生まれるのを見守るなんてことはしません。
なんと、兄妹のように育った正吉と結婚して、子どもの父親は正吉ということにしろ、というのです。本当のことを知っては、五郎が卒倒してしまうと。
「自衛隊は国・家族を守る。だから蛍を守れ」
なんと、草太は黒板家の家族同然の正吉に「蛍と結婚して、蛍を守れ」と言います。
お前何のために自衛隊にいたんだ?
国を守るためだべ。
国を守るということは家族を守るということだ。
お前にとって、黒板家は家族だ。
だから結婚して蛍を守れ。
なんとムチャな論理展開でしょう。
草太はムチャで、口が軽く、突飛な行動をするのが取り柄です。
トリックスターの本領発揮です。
アンチヒーローの正吉が蛍を守る
家族同様に育った正吉は、目的のためには手段を選ばないところがあります。
『北の国から '84夏』では、正吉が努(つとむ)のパソコン雑誌を盗るという事件が起きます。
しかし、正吉は自分がパソコンの本を欲しい訳ではありません。正吉はパソコンに興味がなく、純が無断で借りようとしたのを目撃し、純のためにパソコンの本を盗ったのです。
正吉は、《自分の罪を重大には考えません》。それより、純の望みを叶えるほうが大切なのです。そうかと思うと、「丸太小屋が家事になったのは自分のせいだ」と、全て責任を負います。
自衛隊帰りの正吉は、草太から「結婚して蛍を守れ」と言われます。
正吉が幼かったころ、年賀状が一枚も来ないということがありました。そんなとき、《年賀状を送ってくれた蛍》にはほのかに思いを寄せていたのです。
そんな正吉は、蛍を全力で守ろうとします。
草太兄ちゃんの死因
純が草太の頼みを断っていなければ
草太兄ちゃんは、事故死します。
純が草太の頼みを断っていなければ、事故は起きず、いや、荷崩れを起こしても、草太は死ななかったはずと純を苦しめます。
草太は、純にトラクターの運搬を手伝わせようとします。しかし、純が拒否したことから、一人でトラクターの運搬をします。カーブで荷崩れして落ちたトラクターを荷台に戻そうととたとき、横転して下敷きとなって死亡したのです。
人はあっけなく死にます。
私が実家にいるころ、横転したブルドーザーの下敷きになった亡くなった人がいました。その人の奥さんが、中学校の同級生だったのでよく記憶しています。彼女は農家に嫁いで若くして未亡人になったのですが、車にはねられて死ぬなんて、珍しくもなんともありません。
草太の事故死に責任があると思っている純は、雪子おばさんの話を聞いて居たたまれなくなります。
草太が事故死した夜。葬式準備の人たちが帰ったあと、雪子おばさんは、草太がニングルテラスにきたときのことを話します。
あいつの結婚式には命かけてる。
蛍はなんとかなった。
あとは、純をなんとかしたいんだ。
あいつがとっても心配だ。あいつは自分にとって弟だ。
だから、なんとかしたい。
そんなことを話していたと。
どれだけ草太が、純や蛍の幸福を願っているか、何度も、何度も、描かれます。
草太兄ちゃんは、マリア様のような《トリックスター》の一面を見せます。
田中邦衛さんの話し方は優しい
黒板五郎は情けない男です。
東京のガソリンスタンドで働きながら一家4人で暮らしていたが、妻・令子の不倫をきっかけに純と蛍を連れて郷里の富良野へ帰ってくる。その時の所持金はわずか7万~8万円だった。
(Wikipedia「北の国から・登場人物・黒板家と叔母」より)
田中邦衛さんの話し方は優しくて、純やシュウへを大切に思っているということがよく伝わります。
コンビニの手伝いをしろと兄に言われ、純の恋人であるシュウが強引に上砂川連れて行かれてしまいます。
意地を張って、自分からは連絡をしない純。
それを見かねて、五郎はシュウを訪ねます。
あいつは意地を張るタチだから、
自分の気持ちうまく言えんタチだから、本当は会いたくてたまらんくせに照れくさいっていうか、
恥ずかしいっていうか・・・
シュウの方から連絡してくれと頼むのです。
前編ラストの五郎の一人芝居は圧巻
五郎は石の家の庭で、蛍と庄吉が結婚するということを聞きます。
最初は鳩が豆鉄砲を食くらったようにキョトンとしています。
蛍と庄吉をゆっくり見回し、しばらく無言。
そして、納得したように《うんうんと頷き》ます。
立ち上がると背中を向け、しばらくして向き直すのですが、田中邦衛さんの表情は悲しんでいるのか、喜んでいるのかわからなくなってしまいます。
そして、笑い声が少し。
庄吉の手をとり《うんうんと頷き》、蛍の手をとって頭をなで涙を流します。
そして、純の手をとります。
セリフがないのが素晴らしい。
そして、家の中に入り、亡くなった奥さんの写真前に行き、声を出してグチャグチャに泣き崩れるのです。
そこに純の「存分に泣いてくれ」というナレーションが入ります。
どうです? この前編のラスト。
凄いですから、DVDを借りてみてください。
田中邦衛さんが歳を重ねるほどにいい顔になっていく
五郎はダメな男です。
親は、娘も似てしまって、結婚して幸せにはなれないかも知れないという不安はあったと思うんです。だから嬉しさは人一倍なのが伝わってきます。
後編の結婚式も近くなった夜、五郎の隣に寝ている蛍が、母と結婚した日はどんなことを話したのかと聞きます。
母さんを怒らせちまってなぁ、と言う五郎。
五郎は妻に「こんな俺と結婚してくれてありがとう」って言ったと話します。
私は「自分は一生結婚出来ない」と思っていました。だから、五郎の気持ち分かって、分かってしょうがない。
そうだよねぇ、と思いながらみてました。私は「結婚してくれてありがとう」とは、言わなかった、というか言えなかったけど。
蛍の結婚式では、五郎はずっと不機嫌で手酌で次々を酒を飲み、酔っぱらってキレて踊ります。
バカ正直に行動することもあれば、感謝の気持ちを口ではうまく表現できない。
感謝を表せないから五郎はグデングデンに酔っぱらっている。
それが五郎の感謝です。
無骨で表現が下手な人たち
室田日出男さん演ずるシュウの父は、《無口な元炭鉱夫》です。
無骨で表現が下手だから、そっけない対応をしてしまいます。
純がシュウの家に挨拶に行きますが、家族は何を話してよいか分からず、TVの野球ばかりを見ています。
純のコーヒーカップを持つ手が震えてカタカタ鳴り、シュウの父も同じようにカタカタ鳴らす。
純と親しくなりたいという気持ちがあるのでしょう。カラオケに誘うけれど、無口で言葉に表すのが苦手だから、一人で22曲も歌ってしまう。
草太兄ちゃんが亡くなった晩、シュウを送ってくるが、シュウの父は挨拶もせず車の中で待ちます。
なんて、無骨なんでしょう。
まとめ
欠かさないで見ていたシリースなのに、ひとつを見落とした回がありました。
『北の国から '98時代』です。
それをようやく見ることが出来ました。
やっぱり、『 北の国から』は素晴らしい。
主人公の黒板五郎は学歴もなく、私のようにダメな男です。でも、バカじゃないかと思うほど自分の気持ちに正直に生きていきます。
私も黒板五郎のように生きたいけれども出来ません。それをスクリーンの中で私の代りに生きてくれる。それが私の琴線に触れ、胸がいっぱいになります。
2022/07/21 追記:正吉について記事を書きました。