シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

戦前、戦中の時代背景が描かれた「小さいおうち」


『小さいおうち』特報 - YouTube

 

1月28日、山田洋次監督の「小さいおうち」を観てきました。監督は本に惚れ込み、著者に映画化を熱望する手紙を書いたそうですけれども、本の内容よりも時代背景が印象に残りました。

 

女中さんの目を通した奥様と主人の同僚との淡い恋

映画はタキが亡くなって荷物を整理するところから始まります。ノートが見つかり、それは女中をしていたタキのもので、そのノートに記されている内容がメインのドラマになります。タキは雪深い山形から上京して女中としてお屋敷に住み込みます。そこの松たか子さん演ずる奥様と夫の会社の部下とのひそかな恋、それがタキの目を通して描かれます。

 

自叙伝の著者タキ(倍賞千恵子さん)と孫(妻夫木聡)の時代認識の差

時々タキの書いた自叙伝を孫が読むシーンがあります。孫とタキの時代認識の差がありんですね。孫の歴史のイメージは私たちが教育を受けたものと同じなようなのですが、タキの記録しようとすることは違うわけです。それが口論も元になって、「そんなら、自叙伝なんか書かないよ」と倍賞千恵子さん演ずるおばあちゃんと対立するのです。

南京陥落に喜び提灯行列する庶民を語るおばあちゃん、南京虐殺だろうと非難する孫。そういう対立が何度も現れました。

 

男たちは中国進出すれば景気が良くなると期待

夫の勤める会社の社長を演じているのがラサール石井さんです。この社長は原作に登場するのでしょうか。「中国には4億(シオク)の民がいる無限の市場」。彼の語る時代感覚は戦争に突入する時代の日本知識人を代表しているように思えました。

片岡考太郎さん演ずる玩具会社の重役がタキの仕える主人です。中国に進出するばオモチャが売れるようになると期待しています。

太平洋戦争が始まったときは山田監督は10歳、終戦のときは14歳。山田監督が感じた戦前、戦時を記録したい、そう考えて映画を作ったのではないかと想像しました。

 

原作は筆力で読ませている?

ドラマの山は日常の心のヒダにはいる部類のもので、大きなものではないかもしれません。それでも観客の心をつかみます。大事件のドラマではないのですから、原作は筆力で読ませてしまうのかと思いました。「永遠の0」はエンターテイメントとしてのドラマの仕組み、構成で観客を引っ張り、こちらは山としては低いけども読ませる力があるんでしょうね。

 

脚本を一人では書かない山田洋次監督

山田洋次監督は最初の頃は宮崎晃さんと脚本を書いていましたが、浅丘ルリ子さんの登場する1973年公開の「男はつらいよ  寅次郎忘れな草」から朝間義隆さんが参加するようになり、それからずっと朝間義隆さんと脚本を書いてきました。

それが続いたのは2004年公開の「隠し剣 鬼の爪」まで。その後の「武士の一分」からは朝間義隆さんの名前が登場しなくなってしまいました。

山田監督のように思慮深くて、物静かに語る朝間義隆さん。身体が悪くなってしまったのかと心配です。

 

思慮深い山田洋次監督

昔、機会があって山田洋次監督のお話しを聞いたことがあります。話のあと質疑のコーナーがで若い女性が次のような質問をしました。

「『幸福の黄色いハンカチ』では倍賞千恵子さん演ずる妻が夫を待つかどうかの話ですが、女は男を待たなければならないものなのでしょうか」と言うような内容で、質問というより抗議ようなものです。

 山田監督はしばらく黙っていました。返答に困っているように見えて、私は「映画と関係ないじゃん、そういう映画なんだよ」と思っていったのですが、山田監督は口を開きはじめました。社会での男と女の関係、男は女性を性的道具としか見ないときがあるのではないか・・・。

思いついたことをすぐ話すのではなくて、じっくり考えて話す方なのだなと感心したことがあります。

 

黒木華さん

 黒木華さんという女優さんの芝居を初めて観ました。自叙伝を書く老いたタキが倍賞千恵子さん、若いお屋敷に住みこんで恋愛事件を目撃する若い女中を演じているのが黒木華さんです。黒木さん、NHKの連続テレビ小説にも出演していたし、「おおかみこどもの雨と雪」に出てくる娘の雪の声を演じているんですね。素晴らしい芝居をされる女優さんでした。

 

原作のタイトルも「ちいさいおうち」。この本からタイトルを借りているんですね。

 

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