- ヒエラルキーが形成されていると言い、その頂点にいるのが小説家の文章読本だと言います。【1小説家】【2ジャーナリスト】【3大学教師】【4雑文家】【5文章指南のスペシャリスト】【6有名無名のライター集団】。しかし、読んだ文章読本の数が10本の指にもたりない私に言わせてもらえば、読んで参考になったのは大学教師、文章指南のスペシャリスト、有名無名のライター集団、ジャーナリスト、小説家の順ですね。
- 文章読本の御三家「谷崎潤一郎・三島由紀夫・清水幾太郎」の解説。文章読本の新御三家「本多勝一・丸谷才一・井上ひさし」の解説。新しく文章読本を書く人は古い文章読本を読んで、それを踏まえて書きます。そうすると批判が起きますが、それを面白くひろいあげて解説しています。
- 文章史/作文教育史も面白いです。昔は小さな子供に美文調の名文のようなものを手本として書くように指導していましたから、とても子供とは思えないような作文がゾロゾロと出てきます。綴り方教室のような生活に密着した描写が好まれ、その風潮が作文の技術よりも、書かれた心理を尊重する作文指導になってしまっているなどが論じられます。
いったい何冊の「文章読本」を読んだのか
まず、今までに何冊の文章読本が書かれたのでしょう。その答えのようなものがこの「文章読本さん江」の「はじめに」に書かれています。
「一説によると、累積で、すでに4桁の大台に乗るほどだそうです」。つまり、今までに、1000冊以上の文章読本が書かれているということになります。
この本の初版第一刷が発行されたのが2002年2月5日。その後も文章読本は書き続けられていますから、膨大な数になっていくのでしょう。さて、そのうち、著者の斉藤美奈子さんは何冊の文章読本を読んだのか。
本の末尾(P260-261)に「引用文献/参考文献」が記載されています。
- 文章読本/文章指南書関係 ・・・81冊
- 文章史/作文教育史関係・・・・23冊
参考文献の最後に米印で「参考文献は主要なものに限った」とありますから、100冊以上の文章読本を資料として、この本が書かれたことが分かります。
この本には数多の文章読本を比較、分析し、得られた、理想の文章の変化、教育手法の変遷などが書かれています。それを読書により疑似体験することは、自分が良い文章を書くためにも有効なことだと思ったのでした。