シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

秋吉久美子さんがライバル・神田香織さんの「花も嵐も、講釈師が語ります。―バツイチ子連れ、泣き笑い半生記」

花も嵐も、講釈師が語ります。―バツイチ子連れ、泣き笑い半生記

花も嵐も、講釈師が語ります。―バツイチ子連れ、泣き笑い半生記

 


小樽で神田香織さん講談「はだしのゲン」反戦反核訴え (2013/07/18) 北海道新聞 ...

おやこ劇場で新作講談「はだしのゲン」

4月3日(金)・千葉市民会館小ホール。

千葉西おやこ劇場の鑑賞活動として、講談「はだしのゲン」を聞きました。

演ずるのは神田香織さん。神田香織さんの紹介から始まり、「はだしのゲン」を演ずるようになったきっかけを話し、そして本番です。

「はだしのゲン」は照明、音響効果による演出の「立体講談」。ゲンが目撃する原爆投下後の様子がリアルに語られ、川に浮かんだ腐った死体からガスの吹き出るさまの描写・・・悲惨な情景が描かれた講談でした。

講談が終って帰ろうとしていると、ホール出口でテーブルにグッズが並べられています。

その中には書籍もありました。

三冊の著作うちの一番最初に書かれた「花も嵐も、講釈師が語ります。―バツイチ子連れ、泣き笑い半生記」を購入。サインもしていただきました。三冊の中からこの本を選んだのは、デビュー作がいちばん著者が書きたいことが書かれ面白いに違いない、そう思ったからです。

なぜ、神田香織さんの本を読もうと思ったのか。同じ福島の人だからです。高座で聞いた女優になりたかった話に興味が湧いたのも理由のひとつ。映画や演劇には興味があるのです。

秋吉久美子さんがライバル・磐女三大美人の神田香織さん

神田香織さんは福島県いわき市出身です。現在は男女共学になっているのですが、いわき市には磐城女子高校というのがありました。

神田香織さん、そこの三大美人と言われていたのだそうです。となりにある磐城高校の男子がそう名付けていたのですね。三大美人というのは後に女優になる秋吉久美子さん、神田香織さん、そして、もう一人の方です。

秋吉久美子さんはあれよあれよという間に女優として有名になります。それに対して、神田さん、高校時代は演劇部で女優志望なのに鳴かず飛ばずだったのです。

神田さんは高校を卒業すると上京。劇団民芸の養成所に入るために試験を受けます。しかし、神田さんは養成所に入れませんでした。劇団民芸と言えば、宇野重吉さんたちが立ち上げた名門劇団。有名な俳優さんも多数生まれていますね。

試験は「うつくしい」を5通りの言い方で表現しなさいと言うもの。最初は「う」のアクセントを置き、次は「つ」にアクセントと5通りの話し方をします。これはとんでもない勘違い。言葉には決まったアクセントがあります。ですから、アクセントを変化させると言う発想はそもそも起きないのですね。試験の趣旨は5種類の感情表現演じることだったのです。

そのとき、書類を見た米倉斉加年さんに「あっ、いわき市の出身なんですね」と言われ、他の審査をしていた人も「あっ、そうなんだ」と合点した様子だったそうです。

劇団民芸養成所は不合格。「東京演劇アンサンブル」という劇団に拾ってもらいます。ここではよい役がつきます、なにしろ、三大美人ですから。ところが、ここでもイントネーションの問題が顔を覗かせます。台本の読み合わせになるとイントネーションの矯正で流れはストップし、台本は書き込みで真っ赤になるのです。

福島は無アクセント地帯のど真ん中

神田香織さんは磐女三大美人。女流講談師として活躍し、参議院選挙に立候補するほどのひと。私とは随分と違う人生のように思いますが共通点があります。福島訛り。無アクセントですね。雨と飴、Suicaとスイカ、橋と端と箸、鹿と歯科、それぞれどの組み合わせも同じ発音をするのです。

私にも福島訛りがあります。福島、茨城出身の人の言葉を聞くと「あっ、うちの方の出身だな」って分かります。私が生まれたのは福島県田村市。いわき市は滝根町のところで接している隣の市です。神田香織さんと言葉がほとんど同じなのは当たり前なのです。

今までに競馬場に2回、競艇に1回、オートレースに1回、行ったことがあります。そのうちのどこかは忘れましが、窓口で「福島出身ですか?」と言われたことがあります。馬券とか舟券を買うのですから「〇〇、1枚、△△、1枚」と言うだけ。それなのに福島出身と当てられ、びっくりしたことあります。あれから、数十年が過ぎましたが、私のアクセントはまだ直っていないのでしょう。

Japanese pitch accent map-ja

(wikipediaより)

この地図の白い部分が無アクセント地帯です。(九州の宮崎、熊本も無アクセント地帯なのですね)

神田さんは、東京演劇アンサンブルのあとに「東京病院」という劇団の創立に加わります。しかし、一回か二回の公演で終り。それから、プロダションに入ってちょい役を貰うような生活をしています。そんなとき、講談に出会い、福島訛りが取れるのです。講談の調子に合わせて話しているうちに、直ったのですね。

テーマは自分が主人公の講談「バツイチ子連れ、泣き笑い半生記」

福島訛りの話が登場するのは初めのころにちょっとだけ。本のタイトル使われている「花も嵐も」は松竹映画「愛染かつら」の主題歌「旅の夜風」の歌い出しの部分です。「花も~♪嵐も~♪踏み越えてぇ~♪ 行くが~男の 生きる道~♪」。いろんなことが書かれています。

舞台女優を志し、福島から上京・講談との出会い・講談とはなにか・反戦講談を始めるきっかけ・離婚・いわき市へUターン・いわき市での講談活動・いわき市ゆかりの講談「安寿と厨子王」を作る・幕末に活躍した磐城平藩主・安藤対馬守信正の講談を作り上演・参議院選挙への出馬・「チェルノブイリの祈り」の講談化と原作者であるスベトラーナ・アレクシエービッチとの対談と話題は豊富です。

この本は、神田香織さんが自分をネタにした講談なんです。しっかりと自分を突き放して、語ってます。それぞれの話題は、講談で鍛えられた話芸で話されます。ですから、文章の流れがよくて読みやすいのです。

ユーモアという気遣いの視点

読んで感じるのは、至るところに高座で語る芸人の気遣いが織り込まれているということです。

例えば、神田香織さんは最初はいわき市から特急で東京に仕事に行きますが、交通費が高い。それで、高速バスを使うことになります。しかし、高速バスは駐車場が問題。駐車違反でキップを切られてしまいます。その後、駐車場についてバス会社と相談するのですがバス会社の回答はトンチンカン。

神田さんは講釈師ですから、そういうのを講談のまくらにして面白可笑しく語ります。それを常番交通の社長さんの前でやってしまうんですね。
しばらくして常磐交通から講談をするように呼ばれたので非礼を詫びると、逆にお礼を言われ、「気が付かなかった駐車場を作るために土地の交渉をしている」。これを面白く滑稽に話すのです。

そうして、駐車場が出来ます。安心して高速バスが利用できるので乗客は増えました。3倍になったと言いますから凄いです。

神田さんは、駐車場の車を数え、自分の手柄にムヒヒと満足します。「私が言ったから駐車場ができたんだよ」と直接言ってはただの自慢話になってしまいます。これを滑稽に描くところが芸人なのですね。これを何度も講談の枕にやったんでしょう。

実家に帰ったとき、母に子供の生活費を渡していた自分を「得意になっていた」と言います。これも自分を冷静にみつめていますね。見習いたいものです。

この本が面白かったのと、どんな方法で講談を作っているのか知りたくて、「乱世を生き抜く語り口を持て―新作講談の創り方語り方」を購入しました。これから読み始めるところです。

乱世を生き抜く語り口を持て―新作講談の創り方語り方

乱世を生き抜く語り口を持て―新作講談の創り方語り方