今年の3月に義母が亡くなり、「喪中はがき」を出すために例文を調べました。しかし、どれも味気ないもので、人と同じことはしたくない私には不満でした。
そこで例文を参考に「世界にひとつだけ」の「喪中はがき」を書けないかと考えました。
文面はサムネイルのようなものです。
受け取った人は「なんと無作法な文面だ」と呆れるかもしれません。それでも、私の気持ちを理解してくれる人がいるかも知れないと期待して郵送しました。
この記事は次のような内容で書かれています。
- そもそも、「喪中」って何なの?
- 「喪中のはがき」の目的は?
- 「喪中のはがき」には何を書く?
人と同じことはしたくない。「世界にひとつだけ」の喪中はがきを書いてみたい。そんな人の参考になれば幸いです。
目次
そもそも、「喪中」って何なの?
そもそも「喪」とは何なのでしょうか。
愛する人を亡くした人の悲しみの表現で、「喪 」の英語版「Mourning - Wikipedia」を見ると、世界各国でそれぞれの儀式があるのがわかります。
日本では、伊勢神宮などの神社が「喪に服すべき期間」を定め*1 、1684年、それを基に5代将軍徳川綱吉が「服忌令」を定めています。
「服忌令」には、「喪に服すべき期間」と「忌むべきべき期間」が定めてあります。
喪に服すべき期間
死別者の近親の程度によって、喪に服すべき期間をそれぞれ、13か月、150日、90日、30日、7日と定めています。*2
「母方の祖父母」と「父方の曾祖父母」、「父方の伯叔父姑」が同等に扱われ、父方への敬意の方が強く、《男尊女卑》の思想が反映されています。
忌むべきべき期間
「忌」とは、近親者の死によって穢れた状態になったことを言います。*3
「忌引休暇」は「お葬式休暇」に名前を変えた方が良くないですか?
近親者が死亡すると、会社や学校は葬儀のために「忌引休暇」を与えます。しかし、「忌引休暇」という名前で、「あなたは穢れているから、その穢れがあるうちは近づかないで欲しい」という意味を込めるのは、言われた同僚が気の毒です。
「服忌令」には「忌」の謹慎期間が次のように定められています
- 50日「服」が13か月に相当する者
- 30日 「服」が150日、妻の喪に服する者
- 20日「服」が90日
- 10日「服」が30日
- 3日 「服」が7日
主君に対して50日も、「死者による穢れを及ぼすな」というのですから、厳しいものです。
現在では、葬儀で会社や学校を休んでも、「欠勤や欠席にしない」温かみのある慣習として残っています。
「喪中のはがき」の目的
「喪中のはがき」のは何のために出すのでしょう?
古くから書状の年賀挨拶はありましたが、それを行っていたのはごく一部のこと。郵便ハガキが登場で、「年賀状」の習慣は大衆に広がりました。*4しかし、喪中の人が「年賀状」を出しては穢れを近づけることになります。そこで「喪中のはがき」を出すことになります。
そこから「喪中のはがき」の役割は次のようなものだと言えます。
- 毎年年賀状交換を出している人に年賀状を出さない失礼をお詫びする。
- 結果として近親者の死亡を知らせる機能がある。
「喪中のはがき」を出す時期
喪中はがきを出す時期は《12月のはじめ》
年賀状を出さない失礼をお詫びしているだけですが、喪中の人に年賀状を出すのは失礼と感じるようです。
そういう人のために、喪中はがきを出す時期は、年賀状の準備をしないように《12月のはじめ》には「喪中のはがき」を出したいものです。
「年賀状をよこさないでくれ」とお願いはしていないのですが、みなさんが年賀状を準備する前に出そうと思います。
「喪中のはがき」に書く内容
検索して調べた「喪中のはがき」の例文を検討した結果、書くべき内容を整理すると次のようになりました。
- 主題文(Thesis Statement)
「喪中のはがき」で伝えたいことを表した文です。
年賀状を出さない失礼を詫びる。 - 誰がいつ亡くなったか
- 本文
①年賀状に変わる挨拶
②《亡くなった人》が生前に受けたことへの感謝
③《差出人》がはがきの相手方に感謝
④《独自》義母と出会えたことへの感謝 - 日付
- 差出人
主題文
ここでは、年賀状を出さない失礼を詫びるための文ですが、例文を見ると二種類ありました。
- 喪中につき年末年始のご挨拶をご《遠慮》申し上げます。
- 喪中のため新年のご挨拶を《失礼》させていただきます。
《遠慮》と《失礼》のどちらが良いか。
「年賀状を出さない失礼を詫びる」目的なので「1」の例文を採用することにしました。 これは個人的感想なので、《遠慮》がダメだという意味ではありません。
誰がいつ亡くなったか
誰がいつ亡くなったかを以下のような文章で伝えます。
「本年○○月に義母○○○○(享年○○○)が永眠致しました」
享年とは、
- その人が生きていた年数のことである。
- 享年の使い方は、例えば「享年九十」「享年90」のように表記する。
- 「歳」「才」を付けると重言になるため誤用になる。
- 享年は数え年で表記する。
- 満年齢を使いたい場合は、享年の代わりに没年を使用すればよい。
(実用日本語表現辞典)
「享年○○○」は普段使っている満年齢と2歳も違って違和感があることから、《没年》を使うことにしました。
最終的に使用したのは以下の文です。
「本年○○月に義母○○○○(没年○○○)が永眠致致しました」
本文
年賀の挨拶は書かない
年賀状では挨拶として「祈り」や「お願い」を述べています。
- 祈り
皆様に良き年が訪れますようお祈り申し上げます - 願い
明くる年も変わらずお付き合いくださるようお願い申し上げます
「喪中はがき」では書かないことにしました。
感謝のことば
- 亡くなった人が生前にお世話になったことへの感謝
「生前に授かりました心配りに心からお礼を申し上げます」 - 「世界にひとつだけ」の感謝
普通は「喪中はがき」に書かない亡くなった人と出会えたことへの感謝を書きました。
ーーーー
義母は最高の『勧進帳』を見せたいと放送局へ再放送を願う手紙を出したことがありました
いつも家族の幸福を願う彼女に出会えた奇跡を天に感謝しています
年賀挨拶の代わりに
年賀の挨拶をしませんでしたので、スペースがあればその変わりに、自愛のお願いなども良いでしょう。
ーーーー
寒い季節になりました。皆様にはご自愛のほどよろしくお願いします。
最後に
義母が亡くなり、「喪中はがき」を出すために例文を調べました。しかし、どれも味気がありません。そこで「世界にひとつだけ」の「喪中はがき」を書けないかと考えました。
検討してつくった「喪中はがき」の文面は次のようなものです。
喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます
本年○月に義母 ○○○○(没年○○○)が永眠致しました
生前に授かりました心配りに心からお礼を申し上げます
義母は最高の『勧進帳』を見せたいと放送局へ再放送を願う手紙を出したことがありました
いつも家族の幸福を願う彼女に出会えた奇跡を天に感謝しています令和 ○年○○月
稚拙な文章をさらすなら、無難な決まりきった例文でいいという思いもあったですが、自分なりの「喪中はがき」を書いてみました。
それと、イメージが柔らかくなるよう、普段は使わない堅苦しい漢語をなるべくさけて大和ことばを使いました。
誰かの役に立てば幸いです。
*2:参考:Wikipedia「服忌令(ぶっきりょう)」
*4:参考:高崎みどり「年賀状の成立に関する研究」文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Language and Literature 1 1-39, 1987-12-01 文教大学
*5:参考:デジタル大辞泉「遠慮」
*6:参考:デジタル大辞泉「失礼」