シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

立川談志さんがミュージカルを愛していたと知り、嫌いなはずの「ラ・ラ・ランド」見てきた。

目次

ネタバレあり

Ost: La La Land

Ost: La La Land

 

ミュージカルを理解できない自分は馬鹿

ミュージカルは好きですか?

「嫌い」と公言するひとも結構いますよね。その代表がタモリさん。

ネタで言っている部分もあると思うのですが、不自然なことには同意します。

「ラ・ラ・ランド」が公開され、アカデミー賞の本命だと言われても、同時に上映していた成瀬巳喜男監督「浮雲」を見て来たくらいです。名作と言われてるからです。

ところが「ラ・ラ・ランド」を見たくなるようなことがありました。それは、放送大学図書館ロビーで「キネマ旬報・立川志らくのシネマ徒然草」を読んだからです。

志らくさんは、アンチ「ラ・ラ・ランド」の「話が薄っぺら」、「貧乏人がプリウスなんか乗るか」、「スマホを持っているのになぜ皆60年代ファッシオンなんだ!」などの酷評にいちいち反論していました。

そして、最後にこんなことが書いてありました。

元々私はミュージカルが嫌いだった。でも談志がミュージカルを愛していた。だからこれを理解できない自分は馬鹿だと思い、ミュージカルを見始めた。20年かかった。今ではMGMミュージカルを愛している。そして「ラ・ラ・ランド」に恋をした。だからこれは素晴らしいと自信を持って言えるのだ。おい、愛の力は凄いんだぞ!

立川談志さんは天才です。談志さんがミュージカルを愛していてこれを理解できない自分は馬鹿だと思う感性は正しいに決まっています。

そうすると、ミュージカルを面白くないと思っている私も馬鹿に違いありません。しかし、馬鹿のままでは悔しい。

「ミュージカル嫌いだけど、こんな見方をすれば楽しいんじゃない?」と提案できないかと考えて「ミュージカル嫌いがミュージカルを楽しむためのブログ」を書くつもりで映画館に出かけました。

結果は良かった。感動しました。「ラ・ラ・ランド」の良さについて書いてみます。

タイトル「ラ・ラ・ランド」が意味するもの

オープニングは高速道路の渋滞でミアとセブ(セバスチャン)が出会うところから始まります。*1

ミアは女優の卵。セブは古いジャズを愛するジャズピアニストで自分の店を開くのが夢です。

ラブストーリーの舞台は「ラ・ラ・ランド」、ロサンゼルスのことです。ポスターにもなっている夜景をバックに踊るシーンも、全部ロサンゼルスです。

この映画は夢と希望を求めて生きるミアとセブが描かれます。底抜けにポジティブです。ロサンゼルスには、ミアやセブのように夢と希望を求める人がいっぱい集まってきています。夢と希望で活気があふれる街、それが「ラ・ラ・ランド」なんです。

私の青春時代に「カリフォルニアの青い空」という音楽がありました。きっと、カリフォルニアの天気は晴れが多くて空気が乾いてスカッとして、住んでいる人も明るくてポジティブなんです。

昔、郡山のオーディオ専門店「のだや」で「JBLのスピーカはカリフォルニアの乾いた音がする」と言ってる人を見かけたことがあります。「お前、カリフォルニアに行ったことあるのかよ」と突っ込みたい気分でしたが、JBLのスピーカは憧れでした。

そういう夢と希望が「ラ・ラ・ランド」なんです。

「貧乏人がプリウスなんか乗るか」問題

この問題を最初に指摘したのは以下の記事です。

 そして、IRORIOでは詳しく取り上げています

まず、セブの乗っている車が面白い車でした。古いオープンカーのアメ車です。

この車名を知りたくなり、「La La Land Sebastian car」で検索してみました。見つかったのがこれです。

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(Wikipedia「1984 Buick Riviera Convertible」より)

セブは古き良きアメリカの車を乗っています。しかし、ミアはハイテクのプリウス。ミアが貧乏なことから型落ちでなのですが、映画としてバランスが取れないと不満を言っています。

私は、映像としてプリウスは美しくないんじゃないかと感じました。日本で走っているプリウスの多さに飽き飽きしているのも大きな原因でしょう。

山田洋二監督の「東京家族」ボロボロ「フィアット 500」が登場して素敵でした。妻夫木聡さん演ずる息子が乗っていたのです。だから、ミアも「フィアット 500」のような車がいいんじゃないかと最初は思ったんです。

でも、違うんですね。

心理学に「人物と所有物のマッチング」というのがあります。

ある人物の写真と二台の車の写真を示して、「この人物はどちらの車に乗っているか」と質問すると、偶然以上の確率で当たるというんです。*2

プリウスが発売された当時は地球の環境を考える文化人が乗るものというイメージがありました。ミアはセブよりもドライで合理的に考えそうです。そんなミアが乗る車は「プリウス」がふさわしいでしょうか、「フィアット 500」がいいでしょうか。

「フィアット 500」に乗るミアなら、きっとパリには行かないと思います。

私の案が駄目なのがわかります。

「可哀そうな男だと見下げたかったのか」

イギリスの有力紙デイリー・テレグラフが「Mansplaining, jazz and Priuses: all the reasons why people hate La La Land」という記事を書いたそうです。「mansplaining」の意味を調べると詳しい解説を見つけました。

  • マンスプレイニング - Wikipedia
    マンスプレイニング(英語: Mansplaining)は、男を意味する「man」(マン)と解説を意味する「explain」(エクスプレイン)をかけ合わせたかばん語。一般的には「男性が、女性を見下ろすあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」とされる。

これは思い当たるシーンがあります。

セブは古いジャズが好きなのですが、仲間から誘われてバンドに入ってロックのような音楽を演奏します。バンドは大人気になります。

そのとき、ミアが「あれがあなたのやりたいジャズなの?」と言います。

ミアはジャズが好きではありませんでした。そこで、セブは「ジャズは嫌いなんだろ」とマンスプレイニングをする訳です。ミアはジャズのことは分からないけれども、セブを心配して言うんですが、口論になってしまうんです。

で、その終わり方が凄いんです。

「売れない可哀そうな男だと見下げたかったのか」とセブはミア言ってしまいます。

このセリフの一撃でミアは黙ってしまいます。
女性の会話は共感を求めて話します。自分の心配している気持ちを知ってもらいたくて話しているのにこの捨て台詞です。彼女は傷いて会話が途切れてしまいます。

セブのいらだちが良くわかるシーンです。

女性を見下ろすから駄目ではなくて、よく描けている映画だと思うんですけどね。

まとめ

「立川志らくのシネマ徒然草」を読みました。そこには、立川談志さんがミュージカルを愛していたそうで、これを理解できない自分は馬鹿だと思い、ミュージカルを見始めたと言う話が載っていました。

そうなのか・・・と嫌いなはずの「ラ・ラ・ランド」見てきました。

突然歌いだしたり、踊ったりするのが気になったのも最初のうちだけ。

とてもよい映画でした。

脚本はこれ以上の選択肢はないと思えるほど練られていて、完成度が高かった。

ポスターにもなっている夜景をバックに踊るシーンはカメラがクレーンで移動するかなりの長回しで息がつまりそうだった。

映画館でセブとミアの手がソロソロと近づいて握り合うシーンを、あぁ、オレもあんなのがあったよねぇ、なんて見てきました。

見る前に職場のおばちゃんから、「最後がね」ラストをボカすから、ネタバレを気にしないと言ったけど、これは言っちゃあダメだと思いますがちょっとだけ。

セブが最後に頷きます、「これでいいんだ」と言っているように。

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*1:沈黙の主人公「セバスチャン・ロドリゴ」と同じ名前ですね

*2:ペンケースは誰のもの?」という実験をした人もいるようです。