しろっこブログ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の心理と教育コースで学んでいます。放送大学学生のためになるブログを目指します。

【心の理論】なぜ日本人は「サリーとアン課題」の成績が悪いのか

目次

空気を読む民族のはずなのに

日本人は空気を読む民族だと言われています。同調圧力が強く、「常識」に縛られる日本人の問題を山本七平が論じています。

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

 

ところが、 そんな日本人なのに、他者の心を推測する「サリーとアン課題」の成績が悪いということを知りました。

「感情の心理学(8)感情と心の理論」(閉講科目)にそのことが出てきたのです。 

感情の心理学 (放送大学教材)

感情の心理学 (放送大学教材)

 

 「サリーとアン課題」とは、イギリスの発達心理学者サイモン・バロン=コーエンが考案したこんなテストです。

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The original Sally-Anne cartoon used in the test by Baron-Cohen, Leslie and Frith (1985)

サリーとアン課題

  1. サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいる。
  2. サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行く。
  3. サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移す。
  4. サリーが部屋に戻ってくる。

上記の場面を被験者に示し、「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すか?」と被験者に質問する。正解は「かごの中」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答える。
(「心の理論 - Wikipedia 」より)

このテストは4~5歳になるとパスするようになります。*1 

  • 3歳児は、紙芝居を見ている自分が知っていることと、紙芝居に登場するサリーとアンの知っていることの区別がつかず、「サリーは箱の中を探す」と答える。
  • 4~5歳になると、自分が知っていること、サリーが知っていること、アンが知っていることの区別がつき、「サリーはかごの中を探す」と答えるようになるというものです。

同様なテストを日本で行うと、パスするのが 2年くらい遅いというのです。

日本人は発達が遅いのでしょうか?

欧米と異なる社会文化的環境原因説

この原因について「感情の心理学(8)感情と心の理論」で、内藤美加教授はこう言います。

原因のひとつとして推測されるのは、こころの理論課題が問題にする人の行為を説明する枠組みが日本の子どもには馴染みにくいという可能性である。 (p104)

欧米とアジアの違いをこう説明しています。

  • 欧米の文化では自己と他者を個人として明確に区別し、人の言動をその個人の内的な心の状態や特性で説明するのに対し(Lillard.A 1998)
  • 日本を始めアジアの文化では自他の境界が曖昧で、人の行動はしばしばその場の状況や文脈に即して説明される。欧米で考案された心の理論課題では、自分と他者という主体がはじめから別個にあるという想定のもとで(木下 2005)状況や文脈とは切り離されて心それ自体がどう動くかが問われる。

欧米とは違う社会文化的環境にいる日本の子どもにとって、馴染みにくく解決が難しいのかも知れないと言います。

これに対する異論も多いそうですが、詳しくは述べていません。

日本人はその場の状況や文脈で判断することが多く、個人の心を読む機会が少ないということなのでしょう。

うーむ。なんかスッキリしません。

日本人は欧米に比べてテストの判定が厳しい説

この話を聞いたとき、日本人は欧米に比べてテストの判定が厳しいという話を思い出しました。

『乳幼児心理学(6)言語の獲得(2)音から言葉へ」で、日本の子どもはアメリカの子どもより言語獲得が遅いという話をしていたのです。 

乳幼児心理学 (放送大学教材)

乳幼児心理学 (放送大学教材)

 

放送授業の16:30あたりからです。

言語獲得を調査するための「チェックリスト法」について、この章の講師である麦谷綾子研究員がインタビューているときでした。

インタビューの相手は大阪総合保育大学大学院・小椋たみ子教授。『日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙「語と身振り」』を使い、そこに記載されている言葉を言うか、分かるかをチェックするといいます。

  • 日本早期表出語彙
    マンマ(食べ物)・バー・ワンワン(犬)
    50%通貨月齢 15ヶ月 (小椋 2001)
  • 米国早期表出語彙
    daddy・mommy
    50%通貨月齢 12ヶ月 (Fenson et al 1994)

最初に話す言葉が、日本では15ヶ月、アメリカでは12ヶ月。日本の子どもはアメリカの子どもの方より言語獲得が遅いのです。

その理由として、小椋教授は日本の親の慎重さをあげています。キチンと正確に言うまで通貨したとみなさないからだと言うのです。

さて、「サリーとアン課題」でも同じようなことが起こるのでしょうか。

「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すか?」と質問し、答えは「かご」か「箱」です。

「サリーとアン課題」の判定への影響は少ないのではないかと考えます。 

日本の子どもは言葉での応答が苦手説

欧米と異なる社会文化的環境原因説に、本当にそうなのかと疑問を持って検索しているうちに以下の記事を見つけました。 

それにしても、と思う、オーストリアの研究事情はよくわからないが、日本の子どもだけ成績が悪いというのは納得がいかない。 

 と述べ、成績が悪い理由について検討しています。

①本当に発達が遅い
②日本は他の国とは異なったmind readingをしている
③実験者が子どもの成績を低く見積もっている。

森口准教授は③の説を支持します。

子どもの実験を行ったことがあるものなら誰しも経験することだと思うが、日本の子どもは、特に年少の子どもは、実験に乗ってこない。実験者を目の前にすると、彼らは黙る、うつむく、そして泣く。 

問題は理解しているけれども、言葉で質問をされることが苦手なため、正しく答えることができないのではないか。そう仮説を立てて、言語を使わないチンパンジーやイルカに使う方法でテストします。

そうすると、欧米と日本の差がほとんどないと言うのです。

これには、かなり納得しました。

私は学校では、手をあげない子どもでした。自分の意見を言わない。聞かれればボソボソと答える。「知っているじゃないか。なぜ、自信を持って言わないのだ」と先生によく言われたものです。

言葉で応答するのは今でも苦手なところがあります。

森口准教授はこう言います。

次なる疑問は、ではなぜ日本人は言語的に質問されるのが苦手なのだというものだろう。これについては・・・・。何か意見があれば伺いたいところだ。

日本と欧米の文化の違いからそうなるのだと思われますが、このまま時代が進めば差が少なくなるのかも知れません。

感情表出と文化差

「感情の心理学(12)感情と文化」に、4ケ月児が予防接種をするとき、日本人とコーカソイド(白人)では感情表現がどう違うかを比較したものが紹介されていました。

  • コーカソイドの4ケ月児
    感情表現:日本人より強く長い。
    ストレス物質コチゾール:日本人より少ない。
  • 日本人の4ケ月児
    感情表現:コーカソイドより弱く短い。
    ストレス物質コチゾール:コーカソイドより少ない。

日本の赤ん坊は、行動ではより抑制的であるのに、生理的には強く反応していたのである。

日本人は生まれながら、感情表現をしないでストレスをため込む性質があるようです。 

こういうのが関係しているのかも知れません。

『文化的な営みは感情に起源を持つ』

20190221追記

こんな記事をみつけました。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

まとめ

日本人は空気を読む民族だと言われていますが、他者の心を推測する「サリーとアン課題」の成績が悪いということを知り、その原因と思われるものを集めてみました。

日本の子どもは言語的な応答が苦手という説に納得です。

「感情の心理学('07)」は2007年に開講した科目で内容が古く、現在は「サリーとアン課題」の成績が悪いことは問題にされないのかも知れません。

PS. 図書館で以下の本を見つけましたが貸し出し中なので、順番待ちです。

「心の理論」と言いますが、よく考えると「心」というよりも、ロジックを理解しているかどうかをテストしているようにも思えます。

「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのかー子どもが行動シナリオに気づくとき

「心の理論」テストはほんとうは何を測っているのかー子どもが行動シナリオに気づくとき

 

 

*1:高2男子ができないというブログもありました(思いついて | みーしゃのブログ