シロッコ手習鑑

高卒シニアが放送大学の心理と教育コースで学んでいます。人間と文化コースにも興味があります。学んだことを基に自分の考えを組み立てて伝えていきたい。

明石家さんまさんのネタバレで気になってた「北の国から '98時代」をようやく見た

北の国から 98 時代 [DVD]

北の国から 98 時代 [DVD]

 

目次

えっ、草太兄ちゃんが死んじゃうの? どんな話なの?

欠かさないで見ていたシリースなのに、途中のひとつを見落としてしまったドラマがありました。「北の国から '98時代」です。

私が「北の国から 」を見るようになったのは、「’87初恋」から。録画をしなかった「北の国から '98時代」は特別に気になって仕方がありませんでした。気になったのは「北の国から '98時代」を放送した後に、明石家さんまさんのトーク番組を見たからです。「'98時代」のクライマックスについてネタバレで感想を話していたのです。

こんな感じだったでしょうか。

「それは感動するわなぁ。二人を結び付けた草太兄ちゃんが死んじゃって、結婚式で・・・だから・・・」

えっ、草太兄ちゃんが死んじゃうの? どんな話なの? って思うじゃないですか。

それで「北の国から '98時代」を見れないものかと気になっていたのです。

DVDが発売されましたのは知っていましたが、6千円以上もします。レンタルで見ようかと思ってレンタルショップに入っても在庫はありませんでした。

それが、ようやく見ることが出来ました。ふらりと入った市川のTSUTAYAに「北の国から '98時代」があったのです。

やっぱり、 「北の国から 」はいいです。視聴率も高くて連続ドラマのときは十数パーセントから20パーセント、ドラマスペシャルの『2002遺言』前編は38.4%で、この番組よりも最高視聴率なおは、『2002 FIFAワールドカップ』、『第53回NHK紅白歌合戦』だけという人気ぶりでした。(Wikipedia「北の国から・放送日程」)

なぜ、そんなに人気だったのか。

他人の気持ちを調べることは出来ませんが、自分のことなら考えてみることが出来ます。私が「北の国から '98時代」に感動したのはどの部分なのか、それはなぜなのかを考えてみます。

なぜ、富良野を舞台にしたドラマが生まれたのか

「北の国から」は富良野市が舞台のドラマです。富良野に住んでいる倉本聰さんに自然の中で生きる家族をテーマにしたものを書いて欲しいと企画が持ち込まれてドラマが生まれたそうです。

では、なぜ富良野なのかというと、脚本を書いた倉本聰さんが住んでいたから。

倉本聰さんがNHKの大河ドラマの演出スタッフと衝突して嫌になり、どうでもよくなって富良野に住むようになった。そんな話を何かで読んだことがありました。

そのいきさつが Wikipedia の経歴に書き加えられてました。

NHK大河ドラマ『勝海舟』制作に際し、脚本家の演出関与の是非をめぐる問題がこじれたことで嫌気がさし、脚本を途中降板。1974年6月、取材を受けた週刊誌『ヤングレディ』の記事がNHKを攻撃する内容に変わっていたので、最終稿まで確認して記事は修正されたが、広告の見出しが「倉本聰氏、『勝海舟』を内部から爆弾発言」と修正されぬまま出てしまったことがきっかけだった。当時の制作局長には軽率を謝罪したが、20 - 30人からつるし上げられたという。その日に千歳空港へ飛び、そのまま北海道札幌市に転居。
1977年、富良野市に移住。   

富良野はテレビでは美しい自然が映し出されますが、環境の厳しいところです。職場に隣の美瑛町出身の同僚がいるのですが、冬は気温がマイナス20℃以下になることもあり、そんなときは学校が休みになったと話してました。

倉本聰さん、なんで富良野だったのでしょう。

倉本聰さんが大河ドラマで衝突しなければ、富良野に行くこともなく、行先も富良野でなくても良かったかも知れません。それが、この20年にも及ぶドラマが完成してみると、それが最初から決まっていたように思えてきます。

不倫相手の子を一人で生む蛍に「オラは味方だ」と言う

「北の国から '98時代」では岩城滉一さん演じる北村草太が重要な役割を持ちます。

看護師の蛍が分かれた不倫相手の子を一人で生むためにお金を工面しに来ます。これがこのドラマの始まりです。

蛍の決心を知った草太は「オラは味方だ」と言います

どんな理由で生まれてくる子どもであれ、命は大切する。これが倉本さんの姿勢です。

なんと、草太は黒板家の家族同然の正吉に「蛍と結婚して、蛍を守れ」というのです。

「お前何のために自衛隊にいたんだ? 国を守るためだべ。国を守るということは家族を守るということだ。お前にとって、黒板家は家族だ」

なんとムチャな論理でしょう。草太はムチャで、口が軽く、突飛な行動をするのが取り柄です。トリックスターの本領発揮です。

今回は草太が家族のように付き合っている黒板家を守ろうとすることから、いろんなことが引き起こされます。

草太が正吉に蛍と結婚しろと言うのも、古い人間の五郎が蛍が不倫相手の子どもを産んだと知ったら卒倒するだろうと勝手に想像したから。

ドラマの中で、どんなに草太が純や蛍の幸福を願っているかということが、何度も、何度も、描かれます。

草太が事故死した夜、葬式の準備をする人たちが帰ったあと、竹下景子さん演ずる雪子おばさんが、草太がニングルテラスにきたときのことを話します。

この長台詞が感動ものです。

あいつの結婚式には命かけてる。蛍はなんとかなった。あとは、純をなんとかしたいんだと。あいつがとっても心配だ。あいつは自分にとって弟だ。だから、なんとかしたい。そんなことを話していたと。

純がトラクターを運ぶのを手伝ってくれというのを断っていなければ、事故は起きず、草太は死ななかった。そう思っている純は雪子おばさんの話に号泣するのです。

現実には草太のように自分を大切にしてくれる人はいないと思います。だけど、そういう人がいて欲しい。純や蛍に二人の幸福を願う草太がいるというのはとても美しいことだ。それが私を感動させるのでした。

私が見た黒板五郎と言う男

黒板五郎は情けない男です。

東京のガソリンスタンドで働きながら一家4人で暮らしていたが、妻・令子の不倫をきっかけに純と蛍を連れて郷里の富良野へ帰ってくる。その時の所持金はわずか7万~8万円だった。

 (Wikipedia「北の国から・登場人物・黒板家と叔母」より)

だけれども、 家族をとても愛していて、ばか正直な五郎の行動は見る人の心を大きく揺さぶります。

また、五郎を演ずる田中邦衛さんが素晴らしかった。ドラマが始まった20年前の若い田中邦衛さんより、歳を重ねていくと田中邦衛さんはどんどん素敵になっていきます。

コンビニの手伝いをしろと兄から言われ、純の恋人であるシュウが強引に上砂川連れて行かれしまいます。意地を張って、自分からは連絡をしない純。それを見かねて、五郎はシュウを訪ねます。

「あいつは意地を張るタチだから、自分の気持ちうまく言えんタチだから、本当は会いたくてたまらんくせに照れくさいっていうか、恥ずかしいっていうか、シュウの方から連絡してくれと頼む」と。

田中邦衛さんの話し方は優しくて、純やシュウへを大切に思っているということがよく伝わってきます。

前編ラストの五郎の一人芝居は圧巻でした。

五郎は石の家の庭で、蛍と庄吉が結婚するということを聞きます。最初は鳩はが豆鉄砲を食くらったようにキョトンとしています。

二人を見回し、しばらく無言。そして、納得したようにうんうんと頷きます。
立ち上がると背中を向け、しばらくして向き直すのですが、と田中邦衛さんの表情は悲しんでいるのか、喜んでいるのかわからなくなってしまいます。
そして、笑い声が少し。

庄吉の手をとりうんうんと頷き、蛍の手をとり頭をなで涙を流します。そして、純の手をとります。
家の中に入り、亡くなった奥さんの前で声を出してグチャグチャに泣き崩れるのです。

そこに純の「存分にないてくれ」というナレーションが入ります。

どうです? この前編のラスト。 この芝居凄いですから、DVDを借りてみてください。

後編の結婚式も近くなった夜、五郎の隣に寝ている蛍が、母と結婚した日はどんなことを話したのかと聞きます。

母さんを怒らせちまってなぁ、と言う五郎。五郎は妻に「こんな俺と結婚してくれてありがとう」って言ったと話します。

私は自分は一生結婚出来ない男だと思っていました。だから、五郎の気持ち分かって、分かってしょうがない。そうだよねぇ、と思いながらみてました。私は妻に「結婚してくれてありがとう」とは、言わなかった、というか言えなかったけど。

蛍の結婚式では、五郎はずっと不機嫌で手酌で次々を酒を飲み、酔っぱらってキレて踊ります。

バカ正直に行動することもあれば、感謝の気持ちのように口ではうまく言えないこともあります。それを表すために五郎はグデングデンに酔っぱらっているのです。

その姿が美しい。田中邦衛さんが歳を重ねるほどにいい顔になっています。

私が受け取った倉本聰さんからのメッセージ

室田日出男さん演ずるシュウの父が良かった。彼は無口な元炭鉱夫です。無骨で愛情表現が下手。だから、そっけない対応をしてしまいます。
純がシュウの家に挨拶に行ったとき、家族は何を話してよいか分からないからTVの野球ばかりを見ています。純のコーヒーカップを持つ手が震えてカタカタ鳴れば、シュウの父も同じようにカタカタ鳴らす。

純と親しくなりたいという気持ちがあるのでしょう。カラオケに誘うけれど、無口で言葉に表すのが苦手だから、一人で22曲も歌ってしまう。
草太兄ちゃんが亡くなった晩にはシュウを送ってくるのだが、挨拶もせず車の中で待つのです。

こんな無骨で純情な人がいて欲しい。そんな倉本聰さんの願いのようなものを感じました。 

映画「駅 STATION」では、烏丸せつこさん演ずるすず子という女性が登場します。彼女は不幸な女で宇崎竜童さん演ずるチンピラの雪夫の子を堕します。

それとは対照的に、「北の国から」の蛍は一人で不倫相手の子ども生む決意をします。それを知った草太は蛍の味方になり、正吉と結婚させようとします。だれも堕せなどとは一言も言いません。

そんな蛍は正吉が大きく受け止める。 そんな正吉を倉本聰さんはみんなに「男っぽい」と褒めさせます。
見てごらん、こんなに黒板家、草太、正吉の生き方は美しいだろう。そんな倉本聰さんからのメッセージを受け取りました。

まとめ

欠かさないで似ていたシリースなのに、途中のひとつを見落としてしまったドラマがあります。「北の国から '98時代」です。
それが、ようやく見ることが出来ました。やっぱり、 「北の国から 」はいいです。

主人公の黒板五郎は学歴もなく、私のようにダメな男です。でも、バカじゃないかと思うほど自分の気持ちに正直に生きていきます。

私も黒板五郎のように生きたいけれども出来ない。それをスクリーンの中で私の代りに生きてくれる。それが美しいから、私の琴線に触れ、胸がいっぱいになるんだと思うのです。

それから、この記事を書くために調べていて、倉本聰さんの考え方の基本のようなものを見つけました。

  • 倉本聰の名言 | 地球の名言 

    「富士山に登った」と言う人は多いけれど、たいていは5合目辺りまで車などで行き、そこからスタートして登ったと言っているわけです。
    (略)
    根本が進化し、社会基盤になり、常識になっていく。5合目が常識になってしまうと、人はこの「そもそも」の部分、根本を考えなくなる。それが僕は怖い。 

いつも常識を疑って何が大事なのか考えているから、ドラマが生まれるのだと思うのです。 「北の国から 」シリーズは、スタッフの高齢化により続編の制作が困難になった事から、続編は作られていません。しかし、Wikipediaを読むと倉本聰さんの構想が続いているのが分かります。

構想では、正吉・蛍一家は福島の浪江町に移住します。そこで、東北地方太平洋沖地震に遭うのです。(参考:Wikipedia「北の国から・その後(倉本構想)」)

郷里の福島を舞台にしたこの続編を見ることが出来たら嬉しいんですけれども、その可能性は少ないようです。