坂手港の壁に描かれたアート。
目次
ひげっぱさんが小豆島を案内してくれた
小豆島の旅2日目。いよいよ新規オープンした「あずきベーカリー」をレンタカーで訪ねました。レンタカーは軽自動車。ちょっとがっかりですが、島内は道路が狭く軽の方が便利なのだそうです。
「あずきベーカリー」は、ホテルからレンタカーに乗って10分程度。着くと、ひげっぱさんが店の前を掃除していました。
旦那さんは明日のための仕込みがあります。それが終るのは、お昼ころ。午後からは車で案内していただけるそうです。まず、歩いていけるところを観光。それから、レンタカーで出かけることにします。
ひげっぱさんが案内してくれたのは、 小豆島で有名な醤油、佃煮、オリーブ、断崖や奇岩のある寒霞渓。それに、アートのオブジェでした。
「次は、オリーブのリーゼントへ行きます」
「なんですか、それ?」
「オリーブのリーゼントとしか言いようがない・・・」
これらのオブジェが印象的でした。観光地めぐりでは、彼女に大変な気遣いをして貰って恐縮したのですが、そのことは次回に書くとして、今回は案内していただいたアートのオブジェを紹介してみます。
オリーブのリーゼント
【国際芸術祭 2016 作品No. 098 オリーブのリーゼント】
のどかなオリーブ畑。そこに突如として現れるリーゼントのオブジェ。リーゼントと言えばツッパリの象徴じゃないですか、それがなんでこんなところにあるのか・・・。
それが、アートなんですよね。ジワジワと面白さがこみ上げてきます。
こんな感覚を私が持ったことは、作者の狙いにぴったりとはまったのではないでしょうか。
以前の私でしたら、この面白は分からなかったのではないかと思います。それでは、なぜ、面白いと思うようになんたのか、それは、最近こんな本を読んだからです。
「物語」に驚ける? 驚きを引き出す仕組み
ここに次のような説明がありました。
をりとりて はらりとおもき すすきかな (飯田蛇笏)
普通はすすきなら軽いから、「おもき」でなくて「かるき」にしてしまう。そこを重きにしたから、俳句として成立しているという話でした。
これを真似て、芭蕉の俳句を説明してみます。
閑さや岩にしみ入る蝉の声(芭蕉)
これだって、「蝉の声」が「岩にしみ入る」わけはないですし、「蝉の声」は普通だとうるさいですから、しずけさはどころではないはずです。良く考えると変です。
この本ではロシア・フォルマリズムの「異化作用」ということが紹介されていました。
ふだん、私たちはいろんなものを見ていますが、自動的に処理されてしまって、記憶に残らない。そこで「なんだこれは?」「変だぞ」と思わせる訳です。
例として「泉」という作品が紹介されていました。
『泉』(いずみ、Fontaine)は、マルセル・デュシャンが1917年に制作した芸術作品。磁器の男性用小便器を横に倒し、"R.Mutt"という署名をしたものに「泉」というタイトルを付けたものである。
(Wikipedia「泉 (デュシャン)」より)
展覧会に小便器が出品されれば、「なんだこれは?」と思います。
はい。それで「オリーブのリーゼント 」です。
オリーブ畑にぴったり似合うオブジェじゃなくて、なんでリーゼントなの?
これがこのアートの面白さだと思います。
スター・アンガー
【国際芸術祭 2016 作品No. 106 スター・アンガー】
ここは坂手港の灯台跡地。球体と龍は回転するようになっているそうです。
浅田次郎さんが「文学とは何か。小説とは何か。」の中で、芸術とは何かということを話していました。芸術とは、天然の人為的、再生産。神様の作ったことを、人間がもういちどやってみようかと思うことだと。
浅田次郎さんが川端康成は素晴らしいと言っていました。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
(川端康成「雪国」より)
「 夜の底が白くなった」って、なんだ? 分からないと。でも、湯沢に行くとこれが分かるんだとも言ってました。
赤い目をしたシルバーの巨大な龍。ウロコもあります。神様が作ったトカゲを人間がそれよりも、恐怖感のあるものを作ろうとしたのだと思います。
自然にできる球からイメージしたものがミラーボールになり、さらに黒いトゲトゲが加えられています。鋭利なトゲが不気味さを演出しています。
スター・アンガーは坂手港の灯台跡地で、邪気が小豆島に入り込むのを防いでいるようにも見えます。坂手港の守り神でしょうか。
アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸神社
【国際芸術祭 2016 作品No. 107 アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸神社】
ビートたけしさんが構想して、「スター・アンガー」の作者でもあるヤノベケンジさんが実現したもの。井戸からバケモノが姿を現すイメージだそうです。
頭には斧が刺さっています。頭に斧が刺さっても、苦痛の表情もありません。それに、金属の顔面、赤い目、巨大な口が非日常を演出しています。
「物語」の驚きを引き出す仕組みと同じように、このオブジェも驚きを生み出しています。アートって、作り出すのは大変でしょうが、鑑賞するのは楽しいものでした。
おおきな曲面のある小屋
「オリーブのリーゼント」へは歩いて行きました。その帰りに寄ったトイレ。
壁を曲面にすることによって、外部からの視界を遮っていて、ドアはありません。
これが「瀬戸内国際芸術祭 2016」の参加作品なのは、ブログを書くのに調べていて知りました。撮影して来なかったのが残念。
「瀬戸内国際芸術祭」って何だ?
これらのオブジェは「瀬戸内国際芸術祭 2016」の参加作品でです。
「ART SETOUCHI」が主催する「瀬戸内国際芸術祭 2019」では地域資源を活かしたサイトスペシフィックなアートを募集していました。 5~20点程度が採用されて、50~250万円の制作補助費が支払われる。
「ART SETOUCHI」の会長は香川県知事。地域活性のプロジェクトのようです。
素敵な取り組みだと思いました。
今回は、アートの面白さについて、最近私が知ったことを書いてみました。