(wikipedia : TK-80 より)
私の人生に対する態度を教えてくれたもの
もう、還暦を過ぎました。
Ruby や Scheme、Haskell 、PostScriptを学習したのは50歳を過ぎてから。C#を学習し始めたのは62歳になってからです。
たいした能力があった訳でもない学歴のない農村青年が、映画の勉強をしてみたり、英語を学習しようとしてみたり、ブログを始めてみたりと挑戦的に面白い人生を送れているのはひとつの切っ掛けが始まりでした。
それは何か?
ただ、興味本位で「TK-80」というマイコンキットを購入したことです。コンピュータという計算のできる魔法のような機械があるのは知ってはいました。しかし、それが何故動くのか、正体も知らない状態のときでした。夢中になって本を読みいじり倒しているうちに、ハンドアセンブルでプログラムが組めるようになりました。
そして、やれば何とかなるものだ。何だかよくわからないけれど、ワクワクしそうなものがあったら買ってしまえ、挑戦してみよう、人生に対するそんな態度を教えてくれたのがマイコンキットTK-80だったのです。
私が社会に出たころの計算機事情
私が高校を卒業して初めて働いたのは税務課でした。卓上計算機はありましたが台数も少なく、「ソロバンが上達しない」という理由で、新人はソロバンで計算です。
シート一枚の縦と横の計算をするにも、計算するたびに結果が違って、一枚のシートの縦と横の集計をあわせるのに一日もかかったのでした。
掛け算、割り算は手回し計算機を使います。
(wikipedia 機械式計算機より)
掛け算は掛ける数ふたつを計算機下段の左と上にセットして、位をずらしながら位の数だけ回して加算していきます。回し過ぎますと「チーン!」と音がしますから、一回戻して位をずらします。答えは下段右の数字です。
割り算はその逆。被除数を下段右にセットし、割る数は上段。ハンドルを回して引けなくになると「チーン!」。一回戻して位をずらす。さらに位をずらして引いていきます。
確定申告の時期になるとガリガリ、ガリガリ、チーンと回し続けますから、とても肩の凝る作業でした。
それと税務課にあったのはこのリレー式計算機です。私は触ったことはありませんが、小規模な税務の伝票出力に使っていたようです。
地方都市には大型計算機のある情報処理センターがありました。そこに入力するためのデータシートをもっていき、納税の計算をしてもらいます。
お姉さんが何十人も並んでいる部屋があって、そこでタイプして入力します。たしか、同じデータを二度入力してタイプミスをチェックしていたかと思います。
エラーチェックではねられたデータを修正しに行くと昼をごちそうして貰えました。楽しみでしたね。
今考えるとアホみたいな発見
卓上計算機の数が多くなると私も使わせてもらえるようになります。
電卓をたたいていると、不思議なことを発見しました。間違えて同時に二つのキーを押すと、まるで時計のように正確なタイミングで数字が高速にカウントアップされるのです。
これは凄い!
電卓を偶然に誤動作させると時計のようになる。時計の機能も加えればよいのに・・・。メーカの人に教えてあげれば喜ぶのではないか、そんなことを考えたのでした。
後で知識が身について分かったのですが、これは電卓の回路をチェックするための隠し機能だったのです。電卓にカウンターがあるのは不思議でもなんでもない、当たり前のことです。
メーカに連絡すれば大恥をかくところでした・・・Orz
なぜ、「TK-80」に興味を持ったか?
身の回りに計算機はありましたが、魔法の箱です。本屋さんにあるコンピュータの本と言えば、FORTRANやCOBOLの入門書くらい。手に取って開いてみても全く理解できそうにありません。
そんなとき、中学3年だった一番下の弟が「アマチュア無線の免許を取りたい」と言い出します。私も興味はあったので試験を受けることになります。
弟は高校入試だというのにアマチュア無線の勉強。私はマージャンなんかで遊び疲れて帰ってから夜中に本を開きます。中学、高校とロクに勉強した記憶がありませんが、この時期から独学で学習するようになったと思います。
電気回路が面白かったので半年後に2級アマチュア無線技師の免許取得。
そのころのトランジスタ技術には簡単なデジタル回路の解説記事が載っていました。TTLを組み合わせて計算回路を作る本も眺めていたりしました。
そして、トランジスタ技術で「マイコンキットTK-80」を見つけます。興味はあるけれど、買ったところでプログラムを理解する自信もありません。それに外観は8の字LEDとキーボードついているだけ。それを何かに使えるものでもありません。
「マイコンキットTK-80」は8080などのチップを売りたいNECが、「これを使って何か製品を開発してください」というプロ向けのキットだったのですね。それを農村の青年が何かよくわからないけれど、かなり高価にもかかわらず、ワクワクするから欲しいと思ったのです。
そしてついに、秋葉原に出かけるアマチュア無線の先輩のお願いして、「TK-80」を買ってきて貰ったのです。
仕事の合間にフローチャートを書いた
電源は付属していません。当時は5Vの電源なんてなかったものですから、アマチュア無線用を利用しました。12Vから3端子レギュレータを使って5Vを作るというかなり荒っぽい方法です。
キットですから組み立てる必要がありました。半田付けが下手くそな私が組み立てましたから、接触が悪いらしくときどき動作がおかしくなります。アマチュア無線の先輩が基盤をながめると怪しいところが分かるようで、何ヶ所かに半田ごてをあてて不具合を修正して貰いました。
最初、時計を動作させるためのディレイループを知ったとき、プログラムってこういうものなんだととても感心したのを記憶しています。
自分で動作させたのは「つくるコンピュータ」に出ていたモールス解読プログラムの移植です。
CPUには何本かのレジスタがあり、そこにデータをセットして計算すること。条件を判定するフラグ、プログラムカウンタ、メモリの構造、アドレスバス、データバス、色んなことを学びました。
役所の仕事をしながらフローチャートをメモしたりもしました。不真面目な公務員ですみませんでした・・・Orz
まとめ
コンピュータがどんな原理で動いているかさっぱり分からないのに、ワクワクして面白そうだからとそれだけの理由で「マイコンキットTK-80」を購入しました。
TK-80は個人がPCを持つ時代の幕開けのトップバッターでした。そして、いじり倒してみるとなんとかなるものです。それから、ずっとPCに触れてきました。プログラマとして給料をいただく生活もしました。
私は今ブログに挑戦中です。アクセスが少なくて落ち込むときもありますが、意外な記事でヒットすることもあります。
目の前にワクワクするものがあるけれど、分からないから・・・と尻込みしているあなた。迷っているなら、思い切って飛び込みましょう。
きっと得られるものがあると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。