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空手を通じて成長する青春物語
高倉健さんのデビュー作です。
1943年、東宝は黒澤明監督のデビュー作『姿三四郎 』を大ヒットさせました。続いて『續姿三四郎』(1945年)も制作しています。それに対抗して東映た作ったのが、沖縄空手の若き天才児を主人公にしてこの映画だと思われます。
空手の闘いを通じて成長していく、忍勇作(高倉健)の青春物語。ドイツ教養小説 (ビルドゥングス・ロマン Bildungsroman)です。
観客は自分の分身であるスクリーンの中主人公の成長を楽しみ、あるいは心配しながら成長を見届けます。
高倉健さんと言えば、礼儀正しく、無口でストイック。不器用だけれども、意志が強いイメージですが、人格として考えると若くて暴走しやすく、晩年の「高倉健」にはほど遠い。『巨人の星』の星飛馬や『明日のジョー』に近いイメージでしょうか。
一枚のDVDに『電光空手打ち』と『流星空手打ち 』が入っており、どちらも1時間程度。
『電光空手打ち』は舞台が沖縄、『流星空手打ち 』の舞台は東京です。
『電光空手打ち』 の健さんは青い
大正時代の沖縄。空手の主導権争いをする二つの対立流派、名越一門と中里一門。
映画は中里一門の忍勇作(高倉健)が 名越を襲うところから始まります。ところが全く歯が立たず、手も出せずひれ伏してしまい、自分の流派を継ぎ娘と結婚するのを期待されているのに、忍勇作は寝返って名越の弟子になろうとします。
雨に打たれても、名越の弟子になること望み許されます。
裏切った中里の娘・恒子は忍勇作を愛しながらも、忍勇作を恨み、対立していきます。
高倉健さん主演の映画ではありますけれども、若く血気盛んで忍耐もありません。
人格も師匠である名越義仙の方がずっと上です。師匠に「闘うな。逃げろ」と言われるのに闘ってしまいます。
湖城空典(加藤嘉さん)にも世話になりますが、湖城空典の方が人格も空手も優れています。
映画で描かれるのは高倉健さんの空手の強さ、空手の道を目指す若さ、熱気でしょうか。
しかし、渋い高倉健にはまだまだ。25歳の高倉健は青いのです。
『流星空手打ち 』の 健さんは女性にモテまくる
「電光空手打ち」の続編です。
向上心に燃えて沖縄から上京したけれど、忍勇作(高倉健)は生活が出来ず、ルンペンになっています。左卜全に励まされる若き高倉健さん。
学生が取り囲まれているところを一緒に闘い助けると、学生は裕福な三河屋息子でした。
学生に望まれ、仕事を手伝いながら、学業にいそしみ、空手を教えます。
ルンペンたちの住んでいるところを抜け出すときには、「あんたはこんなところにいる人ではない」と小銭の餞別を貰います。ルンペンにも好かれる高倉健さん。
ルンペンに生きる道を教えられるシーンもあります。どんな人からも学ぶ謙虚さは「八甲田山」の徳島大尉に通じるところがあります。
忍勇作は女性にモテまくります。
三河屋の娘、芸者春駒にもモテる。中里恒子は忍勇作への思いを断ち切れず、中里一門の後継者・赤田鉄才は三角関係に悩みます。
本命は湖城空典(加藤嘉さん)の娘・志那子。彼女の沖縄舞踊には父の編み出した「流星の型」が登場します。「流星の型」をすると音楽が変わって急に強くなりますから、観客は安心して観ていられる。
登場する女性はみんな忍勇作の惚れるというのは、どういう計算からでしょう。主人公は観客の分身であり、自惚れ鏡(佐藤忠男さん)です。だから、観客は嬉しいだろうということでしょうか?
中里たちは忍勇作に裏切られたことに対して怒り、復讐をしようとします。赤田鉄才に探し出され、勝負を挑まれます。
名越一門の空手は攻撃をしません。試合を挑まれ、挑発されてもじっと耐えます。
試合を挑み挑発するのが「悪」、じっと耐えるのが「善」という構図です。
まとめ
高倉健さんのデビュー作『電光空手打ち』とその続編『流星空手打ち 』を見ました。
高倉健さんと言えば、礼儀正しく、無口でストイック。不器用だけれども、意志が強いイメージですが、人格として考えると若くて暴走しやすく、晩年の「高倉健」にはほど遠いイメージです。
『人生劇場 飛車角』から『日本侠客伝』、『網走番外地』、『昭和残侠伝』シリーズ。
そのあとに「高倉健」としてのキャラクターが完成していきます。
『人生劇場 飛車角』が高倉健さんの82本目の映画。それまで、青春アクション、サスペンス&スリラー、アクション、コメディと色んな映画に出演しています。
「高倉健」は一日にしてならずです。
それではまた。