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石の缶詰はなぜ売れる?
「ぬれ煎餅」で話題を集めた銚子電鉄が、今度は石の缶詰を発売して注目を集めています。
こちらの YouTube をご覧ください。
オープニングからショックな言葉が出てきます
年度末には経営破綻であろう
売れるものは何でも売ってお金に変える。
『~石に願いを~「線路の石」』 価格 1,650円(税込)。
売れいきは好調のようで、 現在は「売り切れ」マークが表示され、再発売は9月中旬以降になるそうです。
石の缶詰はなぜ売れたのでしょうか?
2020年度1学期に『マーケティング論(シラバス)』を履修しました。
どんな記事を書けば読んでもらえるか、その答えがマーケティングにあると考えたからです。答えは期待した通りでした。
さらに最近、 『ドリルを売るには穴を売れ』という本を読みました。
『マーケティング論』は広い範囲の戦略を扱っていますが、『ドリルを売るには穴を売れ』はその中からテーマを絞り、分かりやすく解説しています。
石の缶詰が売れたことをマーケティングとして考えれば、銚子電鉄の戦略が成功したということです。
銚子電鉄のマーケティング戦略はどんなものだったのでしょうか。
この記事では、マーケティングの基礎的な理論を簡単に紹介をし、銚子電鉄の「線路の石」が売れた理由を考えていきます。
何をするにもマーケティングの考え方は重要です。
ブログを読んでもらう、話を聞いてもらう、ビジネスを成功させる、どんなことにもマーケティングの言う顧客(相手)があり、良い関係を築かないと良い結果を得られないからです。
マーケティングに興味を持って頂いて、さらに深く学び活用するきっかけに慣れば幸いです。
ベネフィット―顧客にとっての価値
石の缶詰にはどんなベネフィットがあるのでしょう。
ベネフィットとは 顧客にとっての価値のことです。
「消費者はドリルが欲しいのではなく、穴を求めている」という有名な言葉があります。
ドリルを売りたいとしても、消費者が欲しいのは穴だということです。
消費者はどこに穴を開けたいのでしょう。穴を開けたいならば、ドリルを買わなくても別な道具でもいいかも知れません。穴の空いた板があれば便利かもしれません。ドリルを買わなくても、誰か穴を開けてくれる人がいれば解決するかも知れません。
消費者にとってのベネフィットはドリルでなくて穴なのです。
銚子電鉄『~石に願いを~「線路の石」』にとって、ドリルの穴に相当するベネフィットは何なのでしょう?
それを考えてみます。
銚子電鉄はYouTube で次のように宣伝しています。
商品:「線路の石」の缶詰。
・ワックスがけしてあるので綺麗。
・用途は重しに使う、インテリアとして眺める。
・悪い人が来たら投げて防犯に使える。
・線路の石をさわる機会がないが、この缶詰を買えば触れる。
・使いみちはお客様の数だけある。
これがベネフィットなのでしょうか。
『ドリルを売るには穴を売れ』ではベネフィットを機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットの 2 つに分類しています。 (『マーケティング論』は5つに分けています)
「線路の石」にはどんなベネフィットがあるのでしょう。
- 機能的ベネフィット
「重しに使う。防犯に使える」と言っています。実際にはそれほど役立ちそうになく、それが目的で買っているのではなさそうです。重しも防犯グッズに使うなら、もっと優れた商品がありそうだからです。 - 情緒的ベネフィット
「インテリアとして眺める。線路の石に触れる」。これは少し役に立ちそうです。鉄オタが線路の石に触れてうっとりする、インテリアとして眺めて快感を得ている姿を想像することができます。
一番大きいのが一種の「クラウドファンディング」としての役目があることでしょう。経営破たんしそうな地域交通の会社を救いたいという心意気。その表現として「線路の石」を購入するのはありだと思います。
ベネフィット(顧客価値)は欲求、欲望から生まれる
なぜ、消費者は「線路の石」を欲しいと思うのでしょうか。
『ドリルを売るには穴を売れ』ではアルダファーのERG理論が紹介されます。
これはマズローの欲求5段階説を三つに簡素化したもので、著者の佐藤 義典さんは次のように言い換えています。
- Existende(生存)▶ 生存欲求
- Relatedness(他人との関係)▶ 社会欲求
- Groeth(成長)▶ 自己欲求
この3つは根源的な欲求ですから、人間なら誰でも持っているものです。
- 自己欲求:もっと成長したい。
- 社会欲求:名誉欲。他人に承認されたい。
- 生存欲求:空腹を満たしたい。美味しいものを食べたい。快適な洋服を着たい。
これらを満たすために私たちはお金を払って何かを買っています。
銚子電鉄の「線路の石」を買う人は情緒的ベネフィットがほとんどを占めています。
では、情緒的ベネフィットはどのような欲求から生まれるのでしょう。
- 自己欲求
銚子電鉄への愛着心。鉄オタとしての使命、成長。銚子電鉄のユーモアが理解できるという自己満足。 - 社会欲求
地域交通機関のために貢献する人と思われたい。インテリアとして誰かにセンスの良さを示したい。 - 生存欲求
防犯にはほとんど期待していないと思われます。
「線路の石」を買うにはコストがかかります。
金銭的コスト(お金)
時間的コスト
身体的コスト(労力・手間)
心理的コスト(不安・気を遣う)
銚子電鉄『~石に願いを~「線路の石」』はコストよりも、ベネフィットのほうが大きかったから売れたのです。
その他の理論
マーケティングにはベネフィット(顧客にとっての価値)以外にも多くの理論があります。
『ドリルを売るには穴を売れ』に取り上げられているのは次の4つです。
- ベネフィット―顧客にとっての価値
- セグメンテーションとターゲット―顧客を分けて絞る
- 差別化―競合よりも高い価値を提供する
- 4P―価値を実現するための製品・価格・販路・広告
私が履修した『マーケティング論(’17)』では、15の章に分かれ、多くの理論や概念を学びました(→シラバス)。
今回の銚子電鉄『~石に願いを~「線路の石」』について考えると、次のような経営哲学、戦略も関連していると思われます。
- 第4回 マーケティング環境の分析
銚子電鉄の強み・弱み。経営破綻しそうな弱みを逆にアピールしている。 - 第8回 製品戦略
なぜ、「線路の石」の缶詰だったのか。 - 第9回 ブランド戦略
「銚子電鉄」公共機関のブランド。「銚子」観光地のブランド。 - 第11回 流通戦略
販売経路をどうするか。「インターネット通販」できたからこその戦略。
まとめ
ツイッターのトレンドから、経営難の銚子電鉄が「線路の石」を発売し、売り切れになったのを知りました。
1学期に『マーケティング論(シラバス)』を履修し、最近さらに『ドリルを売るには穴を売れ』を読んだことから、マーケティングの理論的に、「線路の石」』がなぜ売れるのかを解説すれば、マーケティングに興味が湧くのではないかと考えました。
「線路の石」が売れたのはベネフィット(顧客にとっての価値)があるからです。
ベネフィットには機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットがあり、銚子電鉄の場合は情緒的ベネフィットが大きいと思われます。
ベネフィット(顧客価値)は欲求から生まれます。
自己欲求:もっと成長したい。
社会欲求:名誉欲。他人に承認されたい。
生存欲求:空腹を満たしたい。美味しいものを食べたい。快適な洋服を着たい。
自己欲求、社会欲求から、「線路の石」を購入したいと考えたに違いありません。
銚子電鉄の『~石に願いを~「線路の石」』がなぜ売れるのかについて、マーケティング論を活用して考えてきました。
マーケティングは色んなことにも役に立ちます。それは、相手のベネフィットが何であるかを分析し、相手の望みを叶えてようとする理論だからです。
みなさん、まだ、マーケティングを学んでなかったら、これから私と一緒に学びましょう。
PS. もしここで紹介した本で学ぼうというのでしたら、『ドリルを売るには穴を売れ』を先に読んで、次に『マーケティング論』を学ぶのがおすすめです。