シロッコ手習鑑

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シロッコ手習鑑

高卒シニアなのに臨床心理士になりたいと思い立って放送大学生になりました。

数多の文章読本についての評論・「文章読本さん江」

 

文章読本さん江

文章読本さん江

 

 文章読本は多いの枕詞になった「文章読本さん江」

世の中には、「文章読本」と言われる本は数多くあります。文章読本の中には世にある膨大な文章読本を読破して『文章読本さん江』という文章読本論を書いた人がいるくらいだ」ということが書いてある文章読本さえあります。ブログでも同じような事が書かれたのを読んだこともあります。では、その「文章読本さん江」とはどんな本なのでしょうか? 面白いのでしょうか、読んで文章についての知識が深まるのでしょうか? そこで「どんな人が書いているのか」、「どんな本なのか」と俄然興味が湧いて調べてみました

斎藤美奈子さんてどんな人?

Googleで検索してみます。

斎藤美奈子さんという方がどんな方なのか少し分かりました。そして、「文章読本さん江」を買って読みたくなったのです。

文章読本を論じる本はどんな文体で書かれているのか

文章読本を書くような人は、有名な作家、ジャーナリスト、大学教授など文章に自信のある人ばかり。そんな本を集めて論じる訳ですから、どんな文章で書かれているのか、興味のあるところです。

帯の紹介文にはこんな事が書かれています。

そうそうたる書き手たちがわれこそはを名告りをあげ手を染める・・・いったいぜんたい「文章読本」はなぜこうも書かれる続けるのか?

圧倒的に男のディスクールでもあったこのジャンル百年の歴史の歩みにズバズバを踏込み、殿方、ごめんあそばせとばかりに、容赦なく、やさしい蹴りを入れる新世紀××批評宣言! 

文体は会話に近く名文を意識したものではありません。そうですよね。名だたる名文家の言うとおり名文を書こうとなんかしたら萎縮して何も書けなくなってしまいます。この作者の持ち味である蹴りを入れる文体をいかんなく発揮されている。それが魅力になっているのです。 

文章読本さん江」はこんな本

タイトルが変っています。「文章読本さん江」の「〇〇さん江」はパチンコ屋さん、レストランなどの開店祝いに贈られる花輪に下げられた札に書かれる言葉です。つまり、作者は多くの「文章読本」に贈ったお祝いのつもりなのです。ちょっと、からかったような雰囲気も感じられますが、そこは名は体を表す、自由奔放さにあふれた魅力のある文章がこの本の面白さでもあります。

  • まず、谷崎潤一郎が「文章読本」という言葉を発明し、その後は谷崎「文章読本」が標準になって比較されていくことが延べられます。
  • 次に冒頭の挨拶文の比較。【A恫喝型】【B道場破り型】【C恐れ入り型】に分類し、比較解析していきます。
  • どんな人が書いているかの分類解説です。ヒラルキーが形成され小説家の文章読本ヒラルキーの頂点にいると言います。【1小説家】【2ジャーナリスト】【3大学教師】【4雑文家】【5文章指南のスペシャリスト】【6有名無名のライター集団】。しかし、読んだ文章読本の数が10本の指にもたりない私に言わせてもらえば、読んで参考になったのは大学教師、文章指南のスペシャリスト、有名無名のライター集団、ジャーナリスト、小説家の順ですね。
  • 文章読本の御三家「谷崎潤一郎三島由紀夫清水幾太郎」の解説。文章読本新御三家本多勝一丸谷才一井上ひさし」の解説。新しく文章読本を書く人は古い文章読本を読んで、それを踏まえて書きます。そうすると批判が起きますが、それを面白くひろいあげて解説しています。
  • 文章史/作文教育も面白いです。昔は小さな子供に美文調の名文のようなものを手本として書くように指導していましたから、とても子供とは思えないような作文がゾロゾロと出てきます。綴り方教室のような生活に密着した描写が好まれ、その風潮が作文の技術よりも、書かれた心理を尊重する作文指導になってしまっているなどが論じられます。

いったい何冊の「文章読本」を読んだのか

まず、今までに何冊の文章読本が書かれたのでしょう。その答えのようなものがこの「文章読本さん江」の「はじめに」に書かれています。

「一説によると、累積で、すでに4桁の大台に乗るほどだそうです」。つまり、今までに、1000冊以上の文章読本が書かれているということになります。

この本の初版第一刷が発行されたのが2002年2月5日。その後も文章読本は書き続けられていますから、膨大な数になっていくのでしょう。さて、そのうち、著者の斉藤美奈子さんは何冊の文章読本を読んだのか。

本の末尾(P260-261)に「引用文献/参考文献」が記載されています。

  • 文章読本/文章指南書関係 ・・・81冊
  • 文章史/作文教育史関係・・・・23冊

参考文献の最後に米印で「参考文献は主要なものに限った」とありますから、100冊以上の文章読本を資料として、この本が書かれたことが分かります。

この本には数多の文章読本を比較、分析し、得られた、理想の文章の変化、教育手法の変遷などが書かれています。それを読書により疑似体験することは、自分が良い文章を書くためにも有効なことだと思ったのでした。