- 作者: デールカーネギー,Dale Carnegie,山口博
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 1999/10/31
- メディア: 単行本
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目次
とんでもない勘違い
しばらく前に、アマゾンでD・カーネギーの「人を動かす」を知りました。アマゾンのレビューが475件、はてなのブックマークが303、はてなのブログの登場したのが624回と大変な人気のある本なのですが、読む気は起こりませんでした。
カーネギーと言えばアメリカの「鋼鉄王」。カーネギー・ホールやカーネギーメロン大学を作った人として有名です。そのカーネギーが、こんなふうに人を動かすと大金持ちになれるよ、そう言っている本だと思っていました。
事業に成功した人の自慢話ですね。「人を動かす」とは何様のつもりですか、会社が大きくなったのは社長ひとりの力ではない、社員の力があったからこそではないか、と反発して読まなかったのです。
しかし、放送大学に入って心理学を学ぼうと考えたことから、なぜ人を動かすことができたのか、なぜ人は動いたのかに興味が湧き読んでみることにしました。
ところが、読んでみるととんでもない勘違い。
「鉄鋼王」のカーネギーはアンドリュー・カーネギー(1835 - 1919)。この本を書いたのはデール・カーネギー(1888 - 1955)。全く別人だったのです。
デール・カーネギーはどんな人?
それではデール・カーネギーとはどんな人なのか。
デール・カーネギーは大学を卒業するとセールスマンになって成功します。それから講演会の講師になり、大企業で社員教育をするようになります。(参考:wikipedia)
ところが、指導をするためのテキストを探しますがありません。そこで彼は新聞、雑誌、裁判記録、心理学書、哲学書など人間関係の問題に関係する資料を調べます。
助手を使って1年半。最初はカードを作って講演したのだそうですが、講演のたびにカードは増えてパンフレットになり、パンフレットのページが増えて本になります。カーネギーが生存中は、本になってからも登場するエピソードが追加されたり、入れ替えられたりしたそうです。
人を動かす原則のひとつに「批判も非難もしない。苦情も言わない。相手を理解するよう努める」というのがあります。
科学的な論文ならば、いろんなパターンを作って心理学的な実験をするところですが、彼の手法は違います。いかにも、トップセールスマンらしいく、原則にそって成功したエピソード、原則に反して失敗したエピソードを集めて話したのです。
ですから、この本は膨大なエピソードに裏打ちされた人を動かす原則が書かれた本ということが出来ます。
こう話しますと、科学的実験により証明されたものでないから信用できないと考える人がいるかも知れません。その気持ちは理解できますが、私はかなり真実に近いと考えました。
そこで、いくつか例を紹介しながら、人の心が動くことについて考えてみようと思います。
Q.どうすればヘルメットをかぶるようになるか
これは批判は怒りを呼び起こし、従業員の意欲をそぐだけだということを示すエピソードのひとつとして紹介されています。
工場の安全管理責任者がヘルメット着用を徹底させたいと考え、ヘルメットを被っていない作業員を見つけると注意します。そのときは不服そうに被りますが、すぐ脱いでしまいます。
さて、どう話してヘルメットをかぶるようになったのでしょう。
「ヘルメットというやつは、あんまりかぶり心地の良いものじゃないよ、ねぇ。おまけにサイズが合っていなかったりすると、たまらんよ。――きみのは、サイズ、合ってるかね」
こう話してから、多少はかぶり心地が悪くても、大きな危険が防げるのだから必ずかぶろうと話すと規則は守られるようになったそうです。
- 相手の理解する一歩。なぜ、かぶらないのかを知らないと解決に近づけません。それを先手を打って話かけています。
- 「おまけにサイズが合っていなかったりすると、たまらんよ」と逃げ道を用意しているのも大きいですね。
私は東日本大震災のときからクロスバイクに乗るようになりましたが、そのときは必ずヘルメットをかぶります。安全のためもありますが、ヘルメットをかぶった方がカッコイイからです。 それにゴーグルで決めればバッチリです。
そんなヘルメットなら喜んでかぶるはず。昔の例ですから、なかなかデザインまでは気が回らないかもしれませんが、そのことも検討した方がいいと思います。
名前を呼ぶソムリエに感動した話
2008年の10月8から10日の間、ネオオリエンタルリゾート八ヶ岳高原に行ったことがあります。
別荘を販売したリゾート会社がコテージを管理して、宿泊料金を頂いて一般のお客様に泊まってもらうというシステムです。安く別荘気分を味わうのに利用したのですが、そこのレストランでの食事が忘れられないものになりました。
タモリさんが「フランス料理っておいしくないよね」というの聞いたことがありますが、日本の料理が一番おいしいと思っていました。ですから、一泊目は洋食、最終日は和食にしました。
ところが、一泊目の洋食レストランが感動的な接客だったのです。
受付から席に案内されると、ソムリエが私の名前を呼んで挨拶します。飲むワインの相談をするときも、ときどき私の名前が入ります。
明日の観光予定の相談をするときにも「シロッコさま」と名前が入るのです。これにはびっくりしました。
出て来た料理も私の常識が変わるようにおいしくて、そのことをソムリエに話ますと、シュフが挨拶にきました。そして、海鮮のディッシュに大きなホタテをサービスで追加してくれました。(元有名某ホテルのシュフだった方と記憶しています)
翌日の朝食のときもソムリエが来て会話。このときも名前が入ります。
名前を憶えてもらうのがこれほど快感なのをこのとき知りました。私は重要な人物として扱って貰い満足してしまったのですね。なんと私は安っぽいのでしょう。
この本には政治家や会社経営者が名前を覚えるのが得意で、覚えて貰った人は一生忘れないというエピソードが何本か紹介されています。
教えてもらうということ
こんな例が出ています。
あるセールスマンが、チェーン店に石炭を売り込みたいが重役には会ってもらえません。
D・カーネギーが講習会で「チェーン店の普及は国家にとって有害か」というテーマで参加者にディベートをすることになります。このセールスマンは、本来は「チェーン店は市民の敵」と言っていたのですが、「チェーン店の普及は利益になる」という立場でディベートすることになります。
ディベートに勝つのにはどうすればよいか。チェーン店に訳を話して、メリットを聞きにいくと、重役は喜んで予定の倍くの時間を使って説明してくれます。そして、チェーン店に関する本を書いたことのある重役を紹介してくれます。
帰りぎわには「討論でに勝つことを祈っている」といい、頼まなかったのに「石炭を買うからあとで来なさい」と言われたのです。
D・カーネギーは誠実に話を聞くことの重要性モデルとしてこのエピソードを話していますが、重役からすればギブ・アンド・テイク以上のメリットに思えたのではないでしょうか。
チェーン店の普及は国家にとって有害か、必要かはチェーン店にとって死活問題です。この重役も見事ですね。
あれ、「教えてもらうということ」のメリットについて書くつもりが方向が少し変わってしまいました。
まとめ
アマゾンにある内容紹介にある目次をみても、どれも「人には親切にしなさい」みたいな何処かで聞いたことのあるような内容だと思うかもしれません。
ところが、集めた膨大な情報から選ばれたエピソードを織り交ぜながら、解説するD・カーネギーの話術は、これこそ「人を動かす」のです。
私も既にいくつか実行したり、考えています。
- 孫にトヨタ・AE86の解説本を4冊買った。
- ブログを読んで欲しいと考えるのではなく、読む人にどんなメリットがあるのだろうと考えるようになった。
- こっそり英会話の学習を続けている人がいます。時々、意味不明の研修日程が入るのですが、海外へ語学学習に行っているようで、かなりの腕前かもしれません。そのことで理解を深める手段はないかと考えています。
- 義母が食器洗浄機を使わないで手で洗うのですが、洗浄機を使ってほしい。義母は自分が生きているうちは手で洗うと言っています。どんな対応をすれば良いのか。
これから、このブログは「人を動かす」を参考に書いていきたいと考えました。
自己啓発本が嫌いな人にこそ読んでほしい一冊です。