(wikipedia:「ルイ・パスツール」より)
目次
「白鳥の首フラスコ」ってなに?
『ミトコンドリアのちから』を読んでいましたら、「白鳥の首フラスコ」という言葉が出てきました。
生物は自然に発生するのか、そうでないのか、論争をしていた時代の話です。
フランスの細菌学者パスツールは、シュガー・ビートの発酵が失敗して腐敗し、酸っぱくなってしまう原因を突き止めようとしていました。
発酵に〈成功した樽〉と〈失敗した樽〉の違いは何なのか。
それを調べるためにパスツールはサンプルを顕微鏡で観察します。
- 成功した液には酵母が見える。
- 失敗した液には、酵母のほかにバクテリアがうようよ。
- バクテリアのいる樽を見つけたら、その樽の溶液は全部捨てることを指示して腐敗することはなくなります。
こうしてパスツールは、シュガー・ビートの腐敗をなくすことに成功しますが、疑問は残ります。
腐敗の原因となるバクテリアが何処からくるものか。
自然には発生しないと考えていたパスツールは有名な「白鳥の首フラスコの実験」で生命は自然には湧いて来ないこと証明します。
あれ?「白鳥の首フラスコ」ってなに?
有名とか言われても私は知りません・・・。 検索してみると面白かったので記事を書くことにしました。
なぜ、「白鳥の首フラスコ」の実験が必要だったのか
自然発生説は「生物が親なしで生まれることがある」という説です。
Wikipediaの自然発生説を見ると、今考えるととんでもない説もあります。
1.小麦の粒と汗で汚れたシャツに油と牛乳をたらし
2.それを壺にいれ倉庫に放置することにより
3.ハツカネズミが自然発生する
これが17世紀。反対の実験も行われています。
1.2つのビンの中に魚の死体を入れる。
2.一方のビンはふたをせず、もう一方のビンは布(目の細かいガーゼ)で覆ってふたをする。
3.そのまま、数日間放置する。
4.結果、ふたをしなかったビンにはウジがわくが、ふたをしたビンにはウジはわかなかった。(レディの実験)
しかし、「寄生虫は自然発生する」と言っています。さすがにパスツールの時代にはこんな説はありません。
ラザロ・スパランツァーニによって、加熱した有機物を密閉すれば長期間保存しても微生物は現れないことが実証されます。缶詰が長期保存できる原理です。
1.フラスコ内の有機物溶液を加熱した後、金属でフラスコの口の溶接密閉を行なう。
2.長期間保存しても微生物は現れない。
3.フラスコ壁面に微小な亀裂を生じると微生物が発生する。
4.結果、微生物を永久に有機物溶液内に発生させないようにするには、溶液を加熱した後、容器を溶接密閉した状態に保つ、とした。
しかし、それには批判がありました。
- フラスコ内の空気に「生命力」がある。
- その空気が加熱されて力を失ったから自然発生しないのだ。
また、次のようなプーシェの説もありました。
無機物から有機物が生じることは無いと考えていたプーシェは、水に枯草を入れて高温殺菌したものを逆さにして水銀に浸け、生物は存在しないが有機物は存在する状態をつくり、それを放置すると微生物が生じることから自然発生説の裏づけとした。
— κねこせん (@necocen) 2009年7月12日
論文を丁寧に読み込んだパスツールは原因を見破ります。水銀に微生物がついていたという仮説をたて、「白鳥の首フラスコ」で自然発生説を否定する実験を行います。
白鳥の首フラスコ実験とは
「白鳥の首フラスコ」とはどんなフラスコなのでしょう。
(wikipedia「フラスコ:白鳥の首フラスコ」より)
白鳥の首のように曲がりくねった形をしています。
なぜ、こんなフラスコが必要だったのでしょう?
ラザロ・スパランツァーニの実験に批判がありました。
先に紹介した次のようなものです。
- フラスコ内の空気に「生命力」がある。
- その空気が加熱されて力を失ったから自然発生しないのだ。
この批判を封じ込める必要があったのです。
それを論破するためにパスツールはどうしたか。
- 空気が外とつながっている状態でありながら、なおかつ、外から微生物が入らないフラスコを発明しました。
グニャグニャ曲がっているフラスコの首がポイントです。
静かな空気の中では、入り口から微生物が入っても下降します。
フラスコの首はさらに上昇して、次には下降していますから、フラスコの外に微生物があっても、肉汁まではたどりつかないのです。
細菌発生を確認した実験
プーシェは煮沸(滅菌)しても微生物が出現するのは、生物が自然発生するからだとしました。
しかし、これは煮沸によって細菌が死ななかっただけで、自然発生したわけではありません。
これは、細菌が死滅しなかったことを証明すれば論破できます。枯草菌の仲間は100℃でも死滅しないものがあるのです。
生命の自然発生派とそれを否定する闘いはすさまじいものがあります。
ミトコンドリア研究の中からは多数のノーベル賞受賞者が生まれています。その先陣争いも厳しかったに違いありません。
まとめ
『ミトコンドリアのちから』の中にパスツールが「白鳥の首フラスコ」実験で自然発生説を否定したという記述がありました。
「白鳥の首フラスコ」とはどんなものなのか、なぜ、そんな形にする必要があるのか興味が湧いて調べてみました。
- 加熱した有機物を密閉すれば長期間保存しても微生物は現れないことが実証されます。缶詰が長期保存できる原理です。
- それに対する反論がありました。
フラスコ内の空気に「生命力」がある。
その空気が加熱されて力を失ったから自然発生しない。
その批判を封じ込めるために、パスツールは「白鳥の首フラスコ」を発明しました。
パスツール研究所内にはパスツールが生きていた当時の肉汁が入った白鳥の首フラスコが展示れされ、100年以上を経ても濁りのない状態なのだそうです。( 参考:はてなキーワード「白鳥の首フラスコ」)
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