シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

ミトコンドリアは人体に必要なエネルギーを生み出す。しかし、危険なエネルギープラントだ

目次

ミトコンドリアのちから (新潮文庫)

ミトコンドリアのちから (新潮文庫)

 

 水素水記事がよく炎上することへの疑問

「世界一受けたい授業」のコメントブログが炎上したことがあります。また、最近では伊藤園のお客様相談室にある『よくいただくご質問・「水素水」について』が炎上していました。

水素水はニセ科学なのか? そんな疑問を持ったことから太田教授の本を読み始めました。

大田教授は「身体はサビる」と言います。

大田教授のブログ「太田成男のちょっと一言 」と「水素水とサビない身体: 悪玉活性酸素は消せるのか」を読みました。

大田教授は「身体はサビる」と言います。「サビる」というのは、身体の中で活性酸素が発生して細胞が破壊され、遺伝子が傷つくことです。人の身体は年齢とともにサビて行きます。人が歳を重ねると生活習慣病により身体は酸化していきます。人が老いるのは活性酸素のせい。活性酸素はいろんな病気の原因だと言います。

そこで、大田教授は活性酸素を取り除く方法として水素を使うことを考えました。

しかし、なぜ活性酸素が発生するのか、なぜ活性酸素が有害なのか、なぜ水素が悪玉活性酸素は消せるのかをもっと詳しく知りたくなり、「ミトコンドリアのちから」を読みました。本の紹介と感想を書いてみます。

「ミトコンドリアのちから」は瀬名秀明さんと太田教授の共著

共著者の瀬名秀明さんは知らなかったので検索しました。

東北大学大学院在学中に『パラサイト・イヴ』で作家デビューした。大学院を修了後、宮城大学講師を経て、東北大学工学部の特任教授(SF機械工学企画担当)に就任。講義などは行わず、大学の広報活動やロボット工学に関する作品の執筆、一般向けの講演活動を行い、文芸誌や科学誌で科学と人間に関したコラムや対談を多くこなしている。本人のウェブサイトによると、2009年に航空機の操縦免許を取得したという。

(Wikipedia:「瀬名秀明」より)

第16代の日本SF作家クラブ会長を務められたという重鎮。知らなかったのが恥ずかしいです・・・Orz  (Googleサジェスト「瀬名秀明 ブログ」の検索結果をみると日本SF作家クラブ会長職を辞任のゴタゴタが出てきましたが深入りしません)

瀬名秀明さんとミトコンドリアの関係は?

瀬名さんは「パラサイト・イヴ」で第2回日本ホラー小説大賞を受賞しています。 

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

 

どんな物語なのか。

生化学者が事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養します。そこから起きる生命の暴走を描いたもので「ミトコンドリア」を背景に物語が展開していきます。

「パラサイト・イヴ」。このタイトルは「ミトコンドリア・イブ」に触発されて付けたものでしょう。

ミトコンドリアのDNAは母系からしか遺伝しません。精子が泳いで卵子にいきつくには相当なエネルギーがいります。そのエネルギーを作るときに活性酸素が発生することからミトコンドリアのDNAは傷つけられます。だからそのDNAを使わないと考えられています。

ミトコンドリアDNAの母系遺伝を利用して、多くの民族のDNAを調べると、共通の祖先の一人がアフリカにいたことが分かったという論文がありました。その女性の愛称が「ミトコンドリア・イブ」です。

ミトコンドリアはもともとは別のバクテリアでした。酸素を使わない単細胞生物と共生を始めて入り込んでしまったものと考えられています。寄生しているとも言えます。そのミトコンドリア暴走の物語だから「パラサイト・イブ」なのでしょうね。

瀬名秀明さんはノンフィクション作品を多数執筆されています。ミトコンドリアについての書籍を出版するなら、瀬名秀明さんと太田教授が最強のコンビです。

この本はどんな本なのか

この本はミトコンドリアについて解説した本です。ミトコンドリアの役目、構造、理論。さらには生命の歴史、地球の歴史、人類の起源と内容は多岐にわたっています。
真核細胞にはミトコンドリアがあり、活動に必要なエネルギー通貨であるATPを作って供給しています。

目次から概要を紹介します。

  • はじめに
  • 第1章 脂肪を燃やせーーメタリックシンドロームの真実
    人体のエネルギー代謝の話です。どのようにしてエネルギーが作られるのか、メタボリックシンドロームとの関係から話を解き明かします。ミトコンドリアの話の入り口です。

  • 第2章 酸素との闘い、科学の闘い
    パスツールが酸素を嫌う生物を発見する話や解糖系からクエン酸回路の代謝経路を解明する話などノーベル賞受賞者の研究成果などが紹介されます。
    途中、「白鳥の首フラスコ」という言葉が登場します。どんなフラスコが知らなかったので調べたのがブログ『パスツールは「白鳥の首フラスコ」を使って生物が自然発生しないことを証明した』です。
  • 第3章 ミトコンドリアの構造とミトコンドリアDNA
    この章は構造やDNAの解析などの話。
  • 第4章 危険なエネルギープラント
    ミトコンドリアは危険なエネルギープラントだと言います。酸素とブドウ糖や脂肪からエネギー通貨であるATPを作るとき活性酸素が出来てしまうのです。
    (参考「Wikipedia:エネルギー変換」「Wikipedia:電子伝達系」)
    研究者の先陣争い熾烈なものだと感じました。
  • 第5章 活性酸素とミトコンドリア
    活性酸素は酸素分子が反応性の高い化合物に変化したもののです。(活性酸素 - Wikipedia
    ・ヒドロキシルラジカル・・・・酸化力が最も強い
    ・スーパーオキシドアニオンラジカル
    ・ヒドロペルオキシルラジカル
    ・過酸化水素
    ・一重項酸素 
    すべての活性酸素をなくすのはよくありません。免疫などに使用されるからです。水素分子は選択的にヒドロキシルラジカルだけをなくすことが大田教授によって確認されています。
  • 第6章 老化とミトコンドリア
    老化はテロメアと活性酸素が関係します。
    一般的に小さい動物は寿命が短い。体積に対する表面積が大きいから、その分多くのエネルギーを生み出さなければならないからです。しかし、モルモットほどの大きさの鳩は35歳位まで生きます。なぜか、鳥類のミトコンドリアは哺乳類のものよりも優れていて活性酸素が出にくいからです。
    女性は男性よりも長寿。これは女性ホルモンの中に活性酸素を消去する酵素が多くあるからです。
  • 第7章 生と死を司るミトコンドリア
  • 第8章 ミトコンドリアの病気に挑む
  • 第9章 人類の起源と民族の移動
    ミトコンドリアのDNAは母系からしか遺伝しないことから、共通の祖先「ミトコンドリア・イブ」にたどり着きます。アフリカで生まれた人類がどのように世界中に広がって行ったかをDNAの分析で解明します。また、日本人はどこから来たのか、それもDNA分析で明らかにしていきます。
  • 第10章 ミトコンドリアと生命進化
    酸素のない地球に生命が誕生し、光合成をする植物が生まれます。植物が吐き出す酸素は細胞を酸化させますから、酸化に対応する働きのない生物は死滅します。生命の酸素との闘い。エネルギーを作るために酸素を選んでしまった宿命と酸素を選んだから得ることが出来た高エネルギー。地球の歴史も語られます。

全体で424ページもある濃い内容の本です。

この本の特徴

ミトコンドリアの研究者とSF作家の二人が共同して執筆したというのが大きな特徴です。壮大なスケールの歴史物語はSF作家の瀬名秀明さん加わったからこそ実現できたのだと思います。以下の章は特に物語性を感じました。

  • 第2章 酸素との闘い、科学の闘い
  • 第6章 老化とミトコンドリア
  • 第9章 人類の起源と民族の移動
  • 第10章 ミトコンドリアと生命進化

高校生物の知識もろくにない私でも、わくわく楽しみながら読むことが出来たのもSF作家、瀬名さんに力によるものだと思います。

もし、難しい論文の解説だけの本でしたら、途中で放り出していたかもしれません。

DNA解析の詳しい説明の部分は物語性がありません。素人の私には分かりにくい部分でした。私が知りたいことではなかったからなのだと思います。

この本を読んで何を得たか

なぜ活性酸素が発生するのか、なぜ活性酸素が有害なのかはかなり詳しく知ることができました。しかし、なぜ水素が悪玉活性酸素だけを消せるのかについては現在研究中ようです。

老化、人類の起源、民族の移動、生命の進化については期待していなかったのですが、物語のように読むことができました。

この本を読んで酸素についてのイメージが変わりました。

酸素は植物から生まれる私たちになくてはならないもの。緑の自然は人の心も身体も癒すものだと思っていました。

それは事実なのですが、酸素は怖いものという新しい認識が生まれました。火事のようになんでも酸化させるからです。

エネルギーを得る手段として酸素を選んだことから、高度な活動ができるようになりました。しかし、酸素を選んでしまった宿命もあるのです。

人類が夢の原子力を手に入れたけれども、放射能との闘いがあるのと似ています。

おまけ:水素医学に関するリンク

水素医学についてはこの本には詳しい情報がありません。情報のありかを紹介します。

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