ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由
- 作者: ジョシュア・フォア,梶浦真美
- 出版社/メーカー: エクスナレッジ
- 発売日: 2011/07/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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目次
積ん読になっていた本を読もう
ノーマンドイジの「脳は奇跡を起こす」を読みました。人間の脳は遺伝子情報によって出来上がるが、完成してからもよくも悪くも変化を続けると書いてあり、新しいことにチャレンジする勇気、学ぶ勇気が湧きました。
以前、「ビル・ゲイツの薦める10冊の本」というブログを読んでアマゾンから購入した本がありました。「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」です。
忘れっぽい人だと思われてしまったら、成功はできないでしょう。この本は捉え難い事実や役に立つことをどのように記憶すればよいかを教えてくれます。人の名前を覚えるのが不得意な人におすすめです。
(「ビル・ゲイツの薦める10冊の本」より)
自分は記憶力が弱いと感じて購入していたのです。積ん読になっていた本をこの機会に読むことにしました。
記憶力選手権を取材した記者が翌年はチャンピオン
ジョシュア・フォアは記憶力に興味を持ったことから全米記憶力選手権を取材します。そこで、イギリスから来ていた世界記憶力選手権の11代チャンピオンのエド・クック、9代チャンピオンのルーカス・アムスス、マインドマップで有名なトニー・ブザンと出会います。
さぞかし特殊な能力の人間かと思いインタビューすると、エドには「僕には特殊な才能などないよ」言われます。
また、記憶力トレーニング復興運動のリーダー、トニー・ブザンに「記憶力テクニックを修得するにはどのくらい大変なのか」と質問攻めにすると「私に聞く前に、自分で試してみたらどうだ」と言われます。
エドやルーカスはどのようにして記憶力を身に着けたのか。そもそも人間の記憶は何なのかに興味を持ち、ジョシュアはエドのコーチを受けて1年後の全米記憶力選手権を目指すことになりました。
この本は全米記憶力チャンピオンになるための技術、トレーニングを解説したものかと思って読み始めたのですが、その話は半分もありません。ジョシュアは記憶に関していろんなことを調べます。先天的に驚異的な記憶力を持っている人、脳の障害により長期記憶を持てなくなってしまった人、映画「レインマン」のモデルのなったサヴァン症候群のキム・ピークなどを取材します。そして、記憶術が誰でも使える技術であること説きます。
記憶術は2000年以上前に開発されたもの
ジョシュアはエドから古典を読むことを勧められます。その一冊が「ヘレンニウスヘ」です。
記憶術の基本原理は紀元前86年~82年にラテン語で書かれた作者不明の「ヘレンニウスへ」に書かれています。(Kindle版は作者がキケロになっていますが、この本の中では作者不明)
記憶の宮殿と呼ばれる建物に(例えば自分の生まれた家)玄関から順に覚えやすい変なイメージに変換したものを置いていきます。抽象的なイメージは取り出しにくいのですが具体的なイメージはニューロンの色んなネットワークに繋がっていますから、ひっかかって出て来やすいのです。ローマの政治家たちはこれで演説を覚え、2万人の名前を覚えた人もいます。
この 本の感想と学んだこと
文字が生まれる前は記憶力が全てでした。人は記憶術を生み出して発展させて来ました。しかし、グーテンベルクの印刷技術で本が作れるようになると、記憶する必要がなくなりました。PCの普及している国は学力が低いそうです。豊かになるほど人は馬鹿になるんでしょうか?
記憶に残りやすい具体的なもの変換して記憶する
抽象度が高くて単調なものは記憶に残りにくいので、年号などの数字は語呂合わせで覚えたりします。
産医師異国に向こう産後厄なく・・・
3.1 4 159 2 6 5 3 5 897 9・・・(Wikipedia:「語呂合わせ」より)
ひらがなの文字はリズムのある七五調の和歌にすれば覚えやすいということから「いろは歌」が作られました。
色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず(Wikipedia:「いろは歌」より)
こんなイメージでしたら、覚えやすい。奇想天外なイメージにして、ニューロンのネットワークから取り出しやすい方法を模索すれば、苦戦しているアラビア語も語呂合わせで行けばなんとかなるのではないかと考えました。*1
時間は単調さによって縮まり、新鮮さによって拡張する
会社のおばちゃんが「もう6月になる早いよねえ」と言ってました。
その理由について、この本で解説されていました。
昨日と変わらない一日、また次も変化のない一日を過ごしていくと、記憶が埋もれ取り出せなくなってしまいます。すると、時間が早く経過していくように感じてしまうのです。
なるほど。日々、新しいことに挑戦すれば、時間が拡張するはず。そうすれば、時間はゆっくり流れていると感じることが出来るんですね。これはやる価値あります。
能力が頭打ちになってしまうプラトー状態
ジョシュアは知的競技者が後天的に取得した能力であることを裏付けるデータを探しているとき、K・アンダース・エリクソンという研究者を知ります。そして、全米記憶力選手権に挑戦するときに研究対象者になります。
そのことがジョシュアに幸運をもたらします。能力が頭打ちになってしまうプラトー状態というのがあるのですが、それを突き抜ける方法をアドバイスされるのです。
「スピードタイピングに関する文献を調べたらいいんじゃないか」。この助言からプラトー状態を克服します。
プラトー状態に一章を割いてあります。安定した状態からどうすれば抜き出ることが出来るか、ここだけ読んでも得るものがあると思います。
ジョシュアだからこそ出来た偉業
タイトルに「ごく平凡な記憶力の私」とありますから、誰にでも出来るのかというとそうではありません。駆け出しではありますが、サイエンスライターとしての調査能力、いろんな人とのコネクションの作り方は並外れたものがあります。
元世界チャンピオンにコーチになってもらったり、能力が頭打ちになってしまったときに心理学教授から的確にアドバイスして貰える人はめったにいません。これもジョシュアの能力が優れていたからだと思います。
まとめ
「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」を読みました。この本はアメリカのアマゾンで984もレビューがあるベストセラーです。
記憶術は2000年以上前に生まれましたが、文字、印刷の普及と共に廃れました。
インターネットの時代になって、記憶していることはますます少なくなり検索に頼ります。しかし、元々の記憶がなければ検索も分析もできません。
昔は勉学を始める前には記憶術を教えていたそうです。記憶術は奇抜なイメージが効果的ですから、不謹慎だったり、バカバカしいことがあるかも知れません。それでも、記憶術を再検討し身につける価値はあると思います。
おまけ
この本の著者であるジョシュア・フォアがTEDで記憶術を解説しています。