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「制服」から学ぶ魅力的な文章の書き方
こんにちは、シロッコです。
いつも「ブログが読まれない」と悩んでいます。そんな時、吉田拓郎さんの『制服』という曲を聞く機会がありました。歌詞がとても魅力的で、この歌を今まで知らなかったことを残念に思いました。そして、魅力的な原因が「視点・論点」の移動が見事に行われているからだと気が付きました。
気がつくことが出来たのは、『世界文学への招待〔新訂〕 (放送大学教材)』で、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』、マジック・リアリズム。そして、韓国の光州事件を描いたハン・ガンの『少年が来る』を学んだからです。どれもが多くの視点から描かれた文章が小説のセールスポイントでした。
「視点・論点の移動」というと、「ジャパネットたかた」の高田明さんのトークもそうなんだと気付きました。高田明さんはこんな感じで話します。
- まず「現在の場所」で商品のメリットを語ります。
- 次に視点が「商品購入後の時間・購入したお客様の場所」へ移動します。
そこで「〇〇が喜びますよ」とか予想できる素晴らしい出来事について語ります。
「視点・論点の移動」で、TVショッピングの視聴者は商品の良さをリアルに感じることができるのです。
今回は、吉田拓郎さんが歌う『制服』の歌詞を分析して「視点・論点の移動」を学びます。
作詞は岡本おさみさん。多くヒット曲を連発した作詞家です。
「視点・論点の移動」でどんな効果を得ているのかを知り、真似して魅力的な文章を書きたい。それが私の願いです。
それでは、さっそく視点・論点の移動の秘訣に迫っていきましょう
吉田拓郎が歌う『制服』
歌詞はメロディーに添って歌われ、Aメロ、Bメロ、サビなどがありますが、そういうのは無視して、「視点・論点」がどう変わっていくかを追って行きます。
①語り手と制服の娘たちの出会い
曲が始まると「語り手と制服の娘たちの出会い」が描かれます。
- 描写する視点の「場所、時間」
「ラッシュアワーが疲れを吐き出してる」と歌い始めます。
「ラッシュアワー」は時間帯ですから、何も吐き出すことができないはず。
それは比喩で、ラッシュアワーに慌ただしく移動する人々たちをイメージさせ、語り手は、その人々が「疲れ」のイメージを巻き散らかしているように感じたのことが語られます。
場所:東京駅の地下道。語り手は制服の娘たちに目が止まります。
「銀の鈴」があるあたりなのかも知れません
時間:「今」です。 - 登場するキャラクター
語り手(観察者)は次の人たちに注目します。
・制服を着た集団就職の娘たち
新しいスーツケースを持っていて、東京に初めて来たばかりのようです。
・腰の低い男
先頭に立って、会社の旗を振り回しています。
どこの会社なんでしょう。バスガイドになるんでしょうか、紡績工場? - テーマ・メッセージ
彼女たちがこれから生活することになる東京。彼女たちの東京への期待や不安がメッセージとして伝わってきます。
物語の世界がより具体的で鮮やかに描かれ、読者はその場にいるかのような感覚が伝わります。
②家を出る前の晩
「家を出る前の晩は赤飯など食べて、家族揃って泣き笑いしたのかい」
語り手は東京駅地下道にいるが、興味は一気に家を出る前の彼女たちの実家の様子に移り、その様子を想像し始めます。
- 描写する視点の「場所、時間」
場所:ひとりが娘たちの代表になり、その実家。
時間:家を出る前の晩 - 登場するキャラクター
ひとりが制服の娘たちの代表として描かれる
彼女たちの家族。
彼女たちが家を出る前の晩のようすが描かれる。
・一緒に赤飯を食べたり、泣き笑いしたりしている。 - テーマ・メッセージ
家族の絆や別れの切なさ描かれる。
都会の魅力に負けて家を出る決断をする彼女たちの勇気や不安描かれる。
彼女たちが家族と過ごした時間や家を出る決断をした理由に思いを巡らせています。
彼女たちに共感して想像する語り手は、同じように地方から出てきたくたびれた大人なのかもしれない。
③始めて東京へ来た印象
「どうですか東京って奴に会ってみて」
語り手の視点は、現在の東京駅地下道にいる彼女たちに戻ります。そして、東京へ来た第一印象を質問をします。それは語り手の中だけで完結します。
- 論ずる視点の「場所、時間」
場所:東京駅地下道
時間:制服の娘たちに出会った直後 - テーマ・メッセージ
「そうこれが都会って奴の御挨拶の仕方なんだよ」
田舎では、人が出逢えば挨拶をします。しかし、ラッシュアワーの東京では、サラリーマンたちが押し黙っています。それが、語り手は都会の挨拶の仕方として描いています。
「きれいに暮らしてゆけるところは、どこか他のところのような気もするよ」
都会は冷たい。人との距離感がある。語り手が感じた東京のイメージを述べて、東京じゃなくて、他にすればよかったのにと述べている。これは辛い都会の生活をしている語り手の後悔から生まれたアドバイスでもある。
④「どうですか東京って奴に会ってみて」
語り手の視点は、③と同じ。
彼女たちの姿に自分を重ねていたが、思考は直接自分の例に移る。
- テーマ・メッセージ
「駆け引きのうまい男ばかり出世して
きれいな腹の男はもう拗ねてしまってる」
「拗ねているきれいな腹の男」とは語り手のこと。彼女たちの姿を自分に重ねて語っていた語り手だが、ここにきて直接自分のことを話す。
⑤「これからきみは日曜日だけを待つんだね」
現実には、目の前に新しいスーツケースを持った集団就職の娘たちがいる。
語り手は、働き始めて、しばらくたったときのことを想像して、胸の中で彼女たちに語りかけている。
- 論ずる視点の「場所、時間」
場所:彼女たちのそれぞれの生活地点
時間:彼女たちが東京で働いている未来 - 登場するキャラクター
東京で働く女性(きみ)。語り手は、彼女たちを見守る視線で語る。
背後にぼんやりと働く環境がある。 - テーマ・メッセージ
働きながら日曜日を待つ姿、給料を待つ苦さ。
語り手は、自分体験から苦しさを理解して同情する。
⑥「今度きみが故郷に帰ってゆくまでには」
語り手は、「今度きみが故郷に帰ってゆく」ときのことに思いを馳せている。
- 論ずる視点の「場所、時間」:
場所:具体的な場所は明示されない
時間:今度きみが故郷に帰ってゆくとき
(連休・正月・お盆の帰省ではなく、東京を去るときだろう) - 登場するキャラクター
都会で働く女性たち。
背景には騙した男、親のイメージがある
女性たちに心の葛藤があったことを伺わさせる - テーマ・メッセージ
「親に語れない 秘密のひとつやふたつはできてしまって、嘘もついてしまうんだね」
「騙された男のことはきっと話さないだろうね」
都会で働く女性たちの悲しみや苦労が描かれる。
傷ついて故郷に帰る姿が痛々しいというメッセージ。
これは語り手の想像であり、語り手の経験から導き出した社会の評価が描かれる。人間の弱さや社会の厳しさを表現される。
⑦「ぼくはこれから大阪へ行くところ」
今まで東京駅の地下道で見かけた制服の娘たちについて、今後のことについて考察していたが、最後に語り手自分自身について語る。
- 語り手が論ずる視点の「場所、時間」
場所:東京駅地下道。
時間:大阪へ行く直前。これから新幹線ホームに向かう。
「制服」の入っているアルバム『伽草子』がリリースされたのが1973年6月1日。東海道新幹線が開業したのが、東京オリンピック開会直前の1964年だから、新幹線で大阪へ行くのでしょう。 - 登場するキャラクター
語り手(ぼく)と、いちばんきれいだった女の子。
「いちばんきれいだった女の子」を思い出すという語り手のミーハーさが、社会性を歌うという重いテーマを意識させなず、軽い日常の一コマにさせている。 - テーマやメッセージ
「制服が人ごみの中に消えてゆくのを
振りかえりながらぼくは見送っている」
ずっと、東京駅の地下道で見かけた制服の娘たちについて、今後のことについて考察していたが、最後になって、それが経験から生まれた「語り手の社会感、人生観」が歌われているのだと明確になっていく。
まとめ
吉田拓郎さんの『制服』を聞いて感動し、その歌詞の魅力が「視点・論点の移動」を巧みに活用した描写にあることに気づいて、分析を試みることにしました。
歌詞の「視点・論点」は次のように変わっていきます。
- 東京駅地下道で語り手と制服の娘たちが出会った様子描かれる。
- 彼女たちが家を出る前の晩の様子を想像して語っている。
- 始めて東京へ来た印象を質問をし、語り手は東京について語る。
- 「3」は彼女たちの姿に自分を重ねていたが、思考は直接自分の例を語る。
- 働き始めてしばらくたったときのことを想像し、胸の中で彼女たちに語りかける。
- 「今度きみが故郷に帰ってゆく」ときのことに思いを馳せている
- 最後に語り手自分自身について語る
どうです? 視点・論点が移動していく様子が見事だと思いません?
今後、書くことで行き詰まる状況があれば、この記事を思い出して「視点・論点」を変えることで、円滑に文章を書けるようになると期待できます。
今回は、読者の皆様に役立つことはもちろん、自分の文章力を高める目的で記事をかきました。最後までお読みいただいた方がいるかは不明ですが、上手に書けたと感じるほど反応が乏しいこともあります。
それでは、今回の記事はここで終わります。
お付き合いいただきありがとうございました。