シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

ネアンデルタール人は死者に花を飾ったのか・NHKスペシャル「脳と心 心が生まれた惑星~進化~」

目次

NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体II 脳と心 第1集 心が生まれた惑星~進化~ [DVD]

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人間の心はいつどのようにして生まれたのか

人間の心はいつどのようにして生まれたのか。それをテーマにして作られた番組が「脳と心 第1集 心が生まれた惑星~進化~」です。

『驚異の小宇宙 人体』は1989年から1999年までNHKスペシャルとして放送され、以下のシリーズがあります。

全巻見たいところですが、私が履修している「心理と教育コース」に関係する「脳と心」を視聴しました。  

NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体II 脳と心 DVD-BOX

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 「1.心が生まれた惑星〜進化〜」には興味深いないようが語られました。

  • ネアンデルタール人が働けない仲間を養っていたこと。
  • 死者を埋葬して花を飾っていた。

凄いと思いません? ネアンデルタール人は滅びていますから、直接の先祖ではありませんが、そんな時代にも心があったことを知って、嬉しくなってしまいました。

「古い脳」と「新しい脳」

番組は解剖学者・ 養老孟司さんが樹木希林さんを脳の内部を案内する様子が描かれます。神経から脳が生まれ、脳細胞の構造が紹介されて脳細胞から伸びた軸索の接点・シナプスを信号が伝わる様子が紹介されます。

古い脳

魚類や爬虫類までは、脳幹、小脳、大脳辺緑系がほとんどです。生命の維持と本能的な行動しかしません。

「大脳辺縁系」から「情動」が生まれます。「怖い」ものがあれば逃げなければなりません。逆に攻撃もします。食欲、性欲、攻撃性は古い脳から生まれます。

新しい脳

爬虫類までは古い脳だけでしたが、そこに新しい脳が加わります。小脳と大脳が大きくなって、大脳新皮質が発達します。

そして、食欲、性欲、攻撃性に対して抑制する仕組みを持つようになります。

チンパンジーは石で油ヤシの種を割ったり、道具を使うことができます。人類は石器などの道具を作ることが出来ます。

古い脳と新しい脳

古い脳と新しい脳は時には協調し、時には対立します。古い脳が興奮して、食欲、性欲、攻撃性が生まれても、新しい脳が抑制する。古い脳の興奮を逆に解き放って行動することもあります。これが人間の「知性」と「感情」のバランスですね。このへんの話は川辺一外さんの「 ドラマとは何か?―ストーリー工学入門」でチラッと読んだことがありますが、このDVDでかなり理解が深まりました。

心が芽生えるとき

30歳のメスのチンパンジーが死んでしまった子どもを背負い続けた話が紹介されていました。(京都大学・松沢哲郎教授)

母親チンパンジーは、生きているときと同じように死んだ子どもの毛づくろいをしてやります。

子どもが死ぬと母親の身体は発情が始まり、次の子どもを産む身体になっています。それでも、子どもの毛づくろいをするのはチンパンジーが本能だけで生きているのではない、このチンパンジーには心が芽生えているのだ、といいます。

もうひとつの例はネアンデルタール人の話です。

テキサス農業工科大学のラルフ・ソレッキ教授はイラクのシャニダール洞窟で発見したネアンデルタール人の人骨を調査しました。

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(Wikipedia「シャニダール洞窟」より) 

シャニダール洞窟からは10体のネアンデルタール人の人骨が発掘されましたが次の二体について詳しく紹介していました。

  • シャニダール1号
    片目が失明し、片手を失っていた。長い生涯に受けた傷が治癒している。それは何を意味するのか。彼は狩が出来なかったと思われるが、仲間に養われながら火の番をしていたのではないか、ネアンデルタール人たちは病人や高齢者の世話をしていたのではないかと言います。
    福祉、博愛の精神が6万年前にあったのです。
  • シャニダール4号
    人骨の周りから大量の花粉が発見されています。花粉は8種類。
    洞窟なのになぜ花粉があるのか。それは死者に花を手向けたからと言います。死を悲しみ、自分もそうなるであろう事を考えて弔ったのです。
    心の芽生えが始まっています。原始宗教なのかも知れないといいます。

ネアンデルタール人に親しみが湧く話です。

身体が不自由で狩猟が出来なかったシャニダール1号。この洞窟で彼は仲間の帰りを待っていました。狩猟や採集に出かけた仲間の無事を祈ったり、感謝したりしたのでしょうか。シャニダール1号に聞いてみたい気もします。

シャニダール4号の死を悲しみ、花を手向けたネアンデルタール人。彼らも今と同じように涙を流したんだと思います。 

ネアンデルタール人は私たち人類と約50万年前に分岐し、3万年前に絶滅しています。

彼らは古い脳と新しい脳のバランスが良かったと養老孟司さんが言います。

Wikipedia「脳・脊椎動物の脳」をみると脳の大きさはホモ・サピエンスよりも大きいことが分かります。

  • ホモ・ネアンデルターレンシス 1450ml
  • ホモ・サピエンス       1350ml

私たちよりも賢かったけれども、古い脳と新しい脳のバランスが良くて優しかったから滅ぼされてしまったのかも知れません。 

ネアンデルタール人がすっかり好きになってしまいました。考古学に熱中しているアマチャア考古学者・苅谷俊介 さんの話を聞いたことがあるんですが、考古学の面白さはこんなことにあるのか知れません。

花を飾ったのはネズミかも知れない

このブログを書くために「シャニダール洞窟」を調べるともっと詳しいことが分かりました。

  • シャニダール4号周りから発見された花粉は治療効果があると知られた植物であること。そこから彼はシャーマンであり、呪医であったという推測があること。
  • 花粉はネズミが巣穴に種子や花を保存したからではないかという論文もあるそうで、「花が意図的に置かれたものだという説はもはや説得力を失っている」と述べられているそうです。

花を飾ったのはネアンデルタール人なんでしょうか、ネズミなんでしょうか。

ネズミが巣穴に花を持ち込む習性があるからといって、花粉を洞窟に持ち込んだのがネアンデルタール人ではないという証拠にはなりません。花粉からその区別が出来ないからです。

事実はどうなんでしょう?

仲間の死を悲しみ、自分もそうなるであろう事を考えて弔ったのでしょうか。死者に花を手向けたという説はいつまでも残るんでしょうか。

考古学にはロマンがあります。

おまけ

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