シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

面接授業「イーストウッド映画を観る」はどんな授業だったか

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目次

映画のブログを書けるようになりたい

6月30日と7月1日。面接授業「イーストウッド映画を観る」を受講してきました。会場は北海道学習センター、北大構内にある情報教育館の6Fです。

 札幌まで行ったのは、映画のブログを書けるようになりたいから。

【授業内容】
 アメリカ映画(ハリウッド映画)の歴史・ジャンルを、銀幕登場以来ずっと体現してきたクリント・イーストウッド。彼の監督作品、主演作品には驚くべき映画的叡智が結集されています。本授業の一日目では「映画ジャンル論」の立場からイーストウッドの初期作品を読み解きます。二日目では、彼の作品に次第に影を濃くしていった「悔恨」のテーマを視野に、大傑作『許されざる者』『ミスティック・リバー』を詳しく分析します。

 (専門科目:人間と文化 「イーストウッド映画を観る」より)

それで、結果はどうだったか。急にブログを書く力が着いたとは思われませんが、今までよりも、映画を観る視点を増やすことが出来たかと思います。

どんな授業があって、どんな収穫があったのか、簡単に紹介してみます。

阿部嘉昭准教授はどんな人なのか

講師の阿部嘉昭准教授について調べてみました。

Wikipediaの「阿部嘉昭」を見ると、オーディオ・ビデオ業界紙の編集を経験した後、様々な媒体でビデオ紹介のページを担当。映画の制作、企画、宣伝。キネマ旬報にいたこともあるようで、ぱっと受けた印象では、映像に関してかなり造詣が深い方のようです。

なんと言っても普通の映画評論家と違うのは詩人であること。ブログには多くの詩が掲載されています。

また、こちらには、詩に関する評論に対するコメントの応酬があります。

ミクロ→全体、というヴェクトルが谷内さんの批評にはいつも欠落しています。それでは批評がラクすぎてしまう  

 私には理解できないレベルの深い話です・・・Orz

北海道大学大学院「Lab.Letters 研究室からのメッセージ」に作品評論をするときの心構えが表明されています。

作品特有の構造に分け入り
畏怖の念を持って肯定する
 映画や音楽、マンガ、サブカルチャーなどのアートを「好き嫌い」で論じる消費的な行為は容易ですが、作品評論の域にまで深めていくには仔細な把握が必要です。「作者はどうしてこういう風に表現したのか」音楽ならば歌詞やコードを、マンガならばコマ割りをと、その作品特有の物質的構造に分け入ることができたときはじめてその作品を真に対象化できたという官能にも近い喜びが待っています。
 皮肉なことにたとえば声の描写などをしてゆくと「どれだけ言葉が追いつけるか」という問題が生じます。作品に対し言葉が無効になる瞬間が訪れる。そうした畏怖の念をもちながら、しかも作品を肯定していくことが、日本の表現の文化状況全体を高めることにつながるとおもっています。

重要と思われるキーワードを拾い出すと、以下のようなことでしょうか。

  • 「好き嫌い」で消費的に論じるにとどまらない。
  • 仔細な把握をして、作品評論の域にまで深める。
  • 「作者はどうしてこういう風に表現したのか」。作品特有の構造に分け入る。
  • 畏怖の念をもちながら、作品を肯定していく。

肝に銘じるべき言葉が並び、映画に関する考え方を理解することが出来ます。

アマゾンの「阿部 嘉昭:作品一覧」をさらっと眺めてみます。

  • 『AV原論』商品の説明:AVを「観る」ことで、何が変わり、何が解き明かされるのか。
    アダルトビデオを評論する。ふつう、きっちりと最初から最後まで見ないですよね。それをきっちり見て論ずるとは恐るべし。
  • 『北野武VSビートたけし』
    1994年の著作。『HANA-BI』がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞する前の本です。
  • 『野島伸司というメディア』商品の説明:ナルシス・TV・いじめ・そしてオウムが見えてくる。現代を反射する野島ワールド。ヒット作「家なき子」「高校教師」「未成年」等を徹底解剖する。
  • 『成瀬巳喜男』商品の説明:女性の真実を描く最高の映画監督・成瀬巳喜男。『浮雲』ほかその数々の名作の魅力を、表情、視線、身体、映画技法などをつうじ、精緻に考察、その細部を浮かびあがらせる。映画性‐女性性を架橋する画期的な書。
  • 精解サブカルチャー講義

    筆者のやっていることはとても単純なことだ。自分がとても好きなもの、すごいと思ったものに対して、「それを好きなのはなぜか」「なぜすごいのか」と問うことだ。(略)対象に対する「とっても好きだ、とにかく好きだっ」ということがひしひしと伝わってくる。

    (みんなのレビュー「サブカルチャーへの愛情表現」より)

詩やサブカルチャーに関する本が多いことから、とっつきにく印象を受けましたが、シーンを追い、セリフを採録して、丁寧な分析をされる方のようです。

面接授業のタイトル「イーストウッド映画を観る」ということから、クリント・イーストウッドを専門の研究者かと思ったのですが、そうではないようです。

どんな授業だったか

授業の方法は、解説をしながらDVDを上映する。それでは授業時間に上映が終りませんから、ときどき早送りになる。そんな授業の方法でした。

最初は、クリント・イーストウッドが、いかに師匠から学んだ技術を使い、いかに伝統の乗っ取った演出をするかという話。

それから、暗闇を使う頻度が高いということ。暗闇は見えない部分が多くなり、顔に光を当てない。そんな話をしていました。暗闇は低予算がバレない。恐怖を描くのに適している。映画は明るいシーン、位シーンのリズムがある。そんな話がありました。

同じ方向を見ている人が並んで映ると心が通じ合っているようなイメージを受けるという話。東京物語で笠智衆さんと原節子さんが並んで遠くを見ているシーンを思い出します。

クリント・イーストウッドはセルジオ・レオーネとドン・シーゲルが演出のお師匠さんなんですね。

イーストウッドは西部劇ドラマ 『ローハイド』で売り出しました。

次に、セルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン』で映画スターとして有名になります。

ドン・シーゲルの 『マンハッタン無宿』、『真昼の死闘』、『ダーティハリー』、『アルカトラズからの脱出』に出演し、演出も学んでいます。

ブルース・サーティースはドン・シーゲルの撮影監督も務めた人です。

ドン・シーゲルの仕事も、イーストウッドの仕事もしています。

  • 『恐怖のメロディ』 クリント・イーストウッド
  • 『ダーティハリー』 ドン・シーゲル
  • 『アルカトラズからの脱出』ドン・シーゲル
  • 『ダーティハリー4』クリント・イーストウッド
  • 『ペイルライダー』ドン・シーゲル

撮影監督「ブルース・サーティース」という名前、覚えておきます。

【授業テーマ】

第1回 イーストウッド型恐怖映画『恐怖のメロディ』

恐怖のメロディ [DVD]

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第2回 スクリューボールコメディと『ガントレッド』

ガントレット [DVD]

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クリント・イーストウッドの愛人であるソンドラ・ロックがヒロイン。

第3回 師匠ドン・シーゲルと『アルカトラズからの脱出』

アルカトラズからの脱出 [Blu-ray]

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しばらくぶりに見た。これを参考に「ショーシャンクの空に」作ったのかと思える人物配置。ショーシャンクの方が洗練されてはいると思う。

第4回 フィルムノワールと『ダーティハリー4』

ダーティハリー4 [Blu-ray]

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ハリーが追う連続殺人の犯人をソンドラ・ロックが演じている。

第5回 『許されざる者』について1
第6回 『許されざる者』について2 

許されざる者 [Blu-ray]

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夕焼けの空。地平線に生える美しい木。『風と共に去りぬ』を思い出すかも知れません。木の左にはマーニーが住む粗末な小屋のシルエット。

美しい木の下ではマーニーが妻クローデアを埋葬しているシーンから映画は始まります。(でも、この映像がクローデアを埋葬しているのかは、1回映画をみただけでは分かりません。言われて初めて気が付きました)

「許さざる者」の最初と最後に流れる字幕について熱く語っていました。

オープニング。

若く美しい娘クローディアは母の意に背きウィリアム・マニーと結婚した。
マニーは人殺しで酒浸りの残忍な札付きの悪党であった。だが母の心配とは逆に美しい妻は天然痘で病没した。1878年のことだった。 

ラスト。

数年後、長旅の末クローディアの母が一人娘の永眠の地を訪れたが、父と子供達の姿は無く、西海岸で商売に成功したとの噂を聞いた。
母にはどうして一人娘が酒浸りで残忍な札付きの悪党と結婚したのかついに分からなかった。

 彼を真人間にするほどの魅力が彼女にあったのだと。

クライマックス。ネッド(モーガン・フリーマン)の死を知ったマニーに怒りのスイッチが入って殺しまくる。その恐ろしさに誰も手をだせないのだけれど、顔をナイフで切られた娼婦のデライラだけが尊敬する愛情の眼差しで見ている。妻のクローディアはそんな女性だったのではないかと言います。

だから、ラストの字幕には泣けたのだと。

エンドロールの「セルジオとドンに捧ぐ」と二人の映画監督へのオマージュにも、教授は涙が止まらなかったと言います。

深い・・・私はそこまで観ていませんでした。

「映画に解説をかぶせないでください」

二日目の午後、「映画に解説をかぶせないで、映画を見せてください」と受講生から要望がありました。解説は、後からゆっくりと別にしてくれという話です。解説も面白くないと。

阿部准教授はそれを拒否します。言うことは分かるが時間がないから映画をじっくり上映できない。映画の見方、見どころを解説しているのだと。

2時限の不足なら、レポートを提出すれば単位がとれるから、帰ってもよい。そんな話をしていました。

で、けっきょく彼は、帰ってしまったようです。

放送大学にはいろんな学生がいます。

埼玉SCの「サルトル、カミュと現代」のときは、年号が違うと誤りを指摘した髭をはやした年配の人がいました。このときは、どこかの大学教授なのかと思いました。

 面接授業がつまらないと途中退席した人がいて、話題になったことがあります。

イスラム文化の授業で、「私の知っている事実と違う」と口論になったという話も聞いたことがあります。この受講生も専門家だったのかも知れません。

原武史教授が放送大学での授業の素晴らしさをツイートしていました。

熱心な学生がいる反面、期待も大きいですから、トラブルにもなりやすいのです。

私は、DVDを観る授業を予想していませんでした。文字の資料でテーマから構成なと、映画の解説をたっぷりと1時限やるのかと期待していましたが、そうではありませんでした。私が観ていない映画もありましたから、上映しながらの解説もなかなか良かったのではないかと考えています。

第7回 『ミスティック・リバー』について1
第8回 『ミスティック・リバー』について2 

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