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レンズの収差ってナニ?
2012年4月のトルコ旅行でFinePix F30が壊れてしまい、 その夏にSony NEX-5を購入しました。
その次に買ったのが、このレンズ。
TAMRON 高倍率ズームレンズ 18-200mm F3.5-6.3 DiIII VC ソニーEマウント用 ミラーレスカメラ NEX専用 ブラック B011SE-ブラック
- 出版社/メーカー: タムロン
- 発売日: 2011/12/15
- メディア: エレクトロニクス
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最初は喜んで使っていたのですが、他の綺麗な写真を見てみますと、「もっと綺麗に写らないものか・・・」と思ってしまいます。
ボケが綺麗で画質もいいらしいから単焦点が欲しい。近くまで寄れないから接写レンズも欲しい・・・。
気が付くと、4、5本のレンズを買っていました。
それでも、 iPhone で撮影した写真の方が綺麗なのでは? と思うこともあって、腕の悪さにがっかりします。
カメラが悪いのでしょうか。
昔の本を見ると、「10万円のカメラに4万円のレンズをつけるのはダメ。 4万円のカメラに10万円レンズがずっと綺麗に写る」と書いてありました。
レンズは、安いものより高い方が綺麗に写るのはよく分かります。
しかし、高いレンズと安いレンズでは、何が違うのでしょう。
このレポートを見て、「収差」がキーワードなのだと気が付きました。
- 交換レンズ実写ギャラリー:SIGMA 60mm F2.8 DN - デジカメ Watch
非球面ガラスとSLDガラスのレンズがそれぞれ1枚ずつ採用されており、それによって倍率色収差、軸上色収差およびコマ収差を高いレベルで補正しているという。実際に撮影した画像を見ても、その収差の少なさには正直驚かされる。収差の少なさは被写体のクリアさに繋がり、また逆光撮影時のレンズフレアを最小限に抑えてくれている。(太字強調は引用者による)
「収差」が連発されてます。「収差」とは何なのでしょう。
140万円のレンズと2万円のレンズ
私が使っている NEX-5 は「α Eマウント」マウントです。
価格コムのレンズで「α Eマウント系 レンズ」を絞り込み、高い順に並べてトップに出てくるのがこれです。
メーカー直販サイトの価格を見ると、なんと、146万円です。
それと同じ焦点距離の「ミラーレンズ 400mm F8 N II 」 は2万円弱です。
Kenko 望遠レンズ ミラーレンズ 400mm F8 NII ソニーE用 マニュアルフォーカス フルサイズ対応 KF-M400SENII
- 出版社/メーカー: ケンコー(Kenko)
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: Camera
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高価なレンズが綺麗に写るのは分かります。では、 具体的には何が違うのでしょうか。
色消しレンズの発明
放送大学図書館で「アイザック・アシモフの科学と発見の年表」を見かけました。
- 作者: アイザックアシモフ,Isaac Asimov,小山慶太,輪湖博
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1996/03/01
- メディア: 単行本
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パラパラめくっていると「色消しレンズ」の話がありました。面白いので、レンズに関する項目を本から拾いだし、簡単に紹介してみます。
- 2500 BC ガラス
エジプトの墳墓から見つかっている。用途は装飾品だけ。 - 100 BC ガラスの吹きづくり
シリアでシャボン玉のように膨らませる技術が発明され、花瓶やコップが作られるようになる。まだ透明なガラスはなかった。 - 1025 光学
アラビアの物理学者アルハゼンが、物が見えるのは光線が目から入るのであって、目から出るのではないという説を唱えた。 - 1249 眼鏡
ロジャー・ベーコンがレンズを使って視力を矯正することについて言及している。ヨーロッパ、中国ともに同じころ眼鏡が発明された。凹レンズはまだなく遠視用だけ。 - 1451 凹レンズ
ドイツのニコラス・クサヌスが凹レンズを発明。近視用の眼鏡が作れるようになった。 - 1590 顕微鏡
オランダの眼鏡職人ヤンセンが、レンズを2個使うことを考え、顕微鏡を発明した。 - 1608 望遠鏡
オランダの眼鏡職人リッペルハイのもとで働いていた若い職人が、たまたま手にしていた2枚のレンズを離してみると、遠くの塔が近くに見えることを発見。 - 1666 光のスペクトル
ニュートンは光線をプリズムに通し、白い壁に当ててみた。すると、壁には光の曲がりが少ない順に赤、橙、黄、緑、青、紫と徐々に色が違った光の帯出来た。
しかし、プリズムで色ができた訳ではない。もう1個プリズムを通すと白色光に戻る。 - 1668 反射望遠鏡
望遠鏡が使われるようになったが、レンズを通った光はスペクトルに広がってしまい、像は縁が色づいてしまう欠点があった(色収差)。
ニュートンは色のにじみで像がぼやけないレンズを作ることは無理と考え、レンズの代りに凹面鏡を使い反射望遠鏡を組み立てた。 - 1757 色消しレンズ
イギリスの数学者ホールはガラスの種類によってスペクトルの幅が違うことを利用して、凸レンズと凹レンズを組み合わせ、像が色づくことなく拡大できるようにした。
ホールが発明をきちんと公表しなかったことから、功績はドロントに帰せられることが多い。
これを見て、色を消すだけでも、大変なことなんだと理解しました。
色消しレンズは、こんなイメージです。
(Wikipedia「色収差」より)
ケンコーのミラーレンズはニュートン方式
レンズの説明に「反射光学系を採用し、小型軽量で超望遠を実現したミラーレンズ」とあります。
アマゾンの「メーカより」にミラーレンズの説明があります。
ミラーレンズとは…
ミラーレンズは別名レフレックスレンズとも呼ばれ、通常のカメラ用交換レンズのように光学レンズを何枚も組み合わされ設計されるものとは違い、鏡の反射・屈折を利用して光を収束するレンズ。被写体の光を主鏡で反射、さらに副鏡で反射させることにより光が収束する仕組みだ。また、鏡は波長の屈折量の差によって生じる色収差の影響を受けることなく光を収束するため、ミラーレンズでは色収差がほとんどない。その他のコマ収差、球面収差についても主鏡の後ろに収差補正レンズを配置することで補正しているので、クリアな描写を実現できている。
「鏡は波長の屈折量の差によって生じる色収差の影響を受けることなく光を収束するため、ミラーレンズでは色収差がほとんどない」
これがポイント。ニュートンの色にじみ対策に作った反射望遠鏡と同じ考え方ですね。リンク先のイメージ図を見ると、反射望遠鏡と同じ仕組みなのが分かります。
こういう他と違うことをするのは面白くて好きです。ただ、レビューを見ますと、使い方がかなり難しいようです。
収差は色収差だけではない
収差を調べると色収差だけではないのが分かりました。
収差は2つに分類されます。
- 色収差 - Wikipedia
軸上色収差(絞ると減少)と倍率色収差がある。 -
ザイデル収差 - Wikipedia(単一の波長の光でも生じる収差)
球面収差:単純な解決は絞ると減少する。
コマ収差:これも絞ると減少。F6以上ではほとんど気にならなくなる
他に、非点収差・像面湾曲・歪曲収差がある。
収差を少なくするには絞り込むのが良さそうですが、そうすると背景のボケたカッコイイ写真はとれなくなり、難しいところです。
ニコンの説明が分かり易い。
いろんな収差があり、それを打ち消すべく苦労をしているのが分かりました。
こちらに収差を解消するための測定器がいっぱいあります。
140万円のレンズは収差を少なくするためにコストをかけているということでしょう。
まとめ
レンズの「収差」というキーワードに気が付き、綺麗に写る高額なレンズと安価なレンズは何が違うのか調べてみました。
140万円のレンズと2万円のレンズは何が違うのか。
レンズには「色収差」、「ザイデル収差」があり、それを少なくすべく労力を割いている。高画質な画像にするために極力収差を少なくしようとしています。
だから、綺麗に写るレンズは高価なのです。
独自性がなくて恥ずかしいレポートですが、私にとっては新鮮でした。
2019/04/12 追記
id:su_rusumi さんにブクマで教えていただきました。
ニュートン式ではなくカセグレン。 基本、大口径の低分散レンズが高い。枚数も多いし
ケンコーのミラーレンズはカセグレン式。
作者 ArtMechanic
ニュートン式はこちらですね。
Author Krishnavedala