シロッコの青空ぶろぐ

高卒シニアが低学歴コンプレックス脱出のため、放送大学の人間と文化コースで学んでいます。通信制大学で学ぼうとする人を応援したい。学んで成功する人が増えれば、私のやる気も燃えるはず。

東北弁とリアルな武士描写が魅力:山田洋次監督『たそがれ清兵衛』

目次

『たそがれ清兵衛』の魅力を伝えたいと思った理由

こんにちは、シロッコです。

今回は『たそがれ清兵衛』の魅力をアピールする記事を書きたいと思います。

なぜ、書くのかというと、ツイッターでのこんな会話から始まりました。

そこで、たそがれ清兵衛』の魅力を伝えるためにブログを書くことにしました。
それでは、さっそく映画の見どころを紹介しましょう!

東北弁の活用とその意義

今まで、「東北弁」、「ズーズー弁」は「お笑い」のネタ程度にしか扱われて来ませんでした。しかし、この映画では「東北弁」が主役となり、その言葉の持つ意義や力が存分に表現されていたのです。

以下に「東北弁」で本格的な時代劇演じられたメリットを示します。

○真実の庄内地方の武士
リアルな「東北弁」を用いることで、スクリーンに描かれた「幕末の庄内地方」の生活が真実のものであるように感じました。日常を離れて実際の現場にいるような感覚を持つことができました。東北の自然環境は厳しいものがあり、「東北弁」はその中で生き抜く人たちの心情と密接に結びついているからです。

○「東北弁」対する理解と関心

「東北弁」を映画で扱うことによって、「東北弁」対する理解や関心が深くなったと思います。

その後公開された『フラガール』は、私の出身地である福島県の常磐湯本を舞台にした映画でした。まるっきり、私たちが話している言葉でした。

  • 映画「フラガール」が「お涙頂戴がくどすぎ」と言われてがっかりした話

    このラストにこんなことを書いていました。

    Yahoo映画のレビューは良く見るのですが、その中に印象深いものがあってメモしてあったを紹介します。それを書いた女性の父は福島の出身でした。そして、父の福島弁を軽蔑していたのですね、そしてこう書いています。

    「映画を見て、涙が溢れて仕方ありませんでした。お父さん、会いたいです。私、もう方言を馬鹿にしない分別のある大人になったよ」

    福島弁の呪縛から開放されたのですね、良かった、良かった。

いつも「東北弁」に負い目に感じていた私ですが、『たそがれ清兵衛』、『フラガール』で一皮むけたように感じます。

リアルな武士描写から生まれる感動

 清兵衛は綺麗な髷の姿ではありません。

 妻を亡くした貧しい武士だからか、頭部の剃り上げた部分「月代(さかやき)」は髪が伸び始め、結った部分の「髷(もうげ)」の髪も乱れています。生活も特権階級の武士とは程遠いもので、粗末な藁葺の家に住み、畑を耕して野菜を栽培する姿は農民のようでもあります。

 そのような主人公は観客にどのような印象を与えたのでしょう。

 今までの時代劇では、身なりの整った武士が描かれてきました。しかし、すべての武士が特権階級として支配する地位の生活をしていた訳でありません。農民と変わらない生活をしていた武士もいたのです。

 佐倉の「武家屋敷」を訪ねたことがありましたが、屋根は茅葺きですし、それほど豪華な屋敷ではありません。

そういう農民のように貧しい姿は、私に清兵衛たちへの親近感を与えました。幕末の庄内地方の武士の生活をリアルに感じることができたのです。

 清兵衛はシングルファーザーです。
 老母は認知症で、幼い2人の娘を抱えています。妻が亡くなり、生活は苦しいのです。そんな中でも、慎ましく生きる家族の姿が描かれます。

清兵衛
「私は今の暮しを
おんつぁまたちが考えて
おられるほど
惨めだと思っておりません。
2人の娘が
日々育っていく様子を
見ているのは、
例えば畑の作物や
草花の成長を
眺めるのにも似て、
実に楽しいものでがんす」

何よりも見た目にインパクトがありました。清兵衛は髪が乱れ、衣装もイマイチです。それを見ただけで、彼が裕福でないことが一瞬でわかりました。武士は特権階級として庶民を支配するもの。そいういうステレオタイプが壊れて、ドラマに斬新さを感じ急患が感動を生んだのでした。

舞踏家田中泯さんの圧倒的演技

山田洋次監督はクライマックスの格闘シーンの敵役に舞踏家の田中泯さんをキャスティングしました。

山田洋次監督は『幸福の黄色いハンカチ』で高倉健さんと一緒に旅をして勇気づける役に武田鉄矢さんを抜擢しました。彼は歌手ですから演技などしたことがありません。それが日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞し、後には『3年B組金八先生』で揺るがない地位を築いたのは誰もが知るところです。

さて、『たそがれ清兵衛』に出演する前の田中泯さんは、どんな人だったのか。

日本を代表する舞踏家の田中泯さんは、国内外で絶大な評価を受けていました。「カラダの可能性を一緒に考える場」としてのダンスワークショップを世界各国で開催し、オペラへの出演、振付もしていました。そんな彼は、日本の芸術団体、ドイツ、フランスなどから多くの賞受賞していたのです。

超一流の舞踏家に格闘シーンの敵役を演じてもらう。その発想と演技力を見抜く力に感服する人は多いでしょう。

以下に、田中泯さんのどんなところに注目して欲しいのかを書いていきます。

舞踏家の経歴と映画での存在感

制作開始の記者会見では、映画初出演の田中泯さんは端っこで小さくなっているように見えます。しかし、映画のなかでは圧倒的な存在感を見せました。

その後、30本の映画、3本のアニメ、30本のテレビドラマに出演しています。

「100分 de 名著」の朗読もしていましたね。

独特な演技スタイル

田中泯さんが『たそがれ清兵衛』でどんな演技をしたのか、時間が許す限り見ていただければ嬉しいです。
1:41:53頃です。「オレは逃げる。見逃してくれ」。圧倒的な緊張感の中で、優しさがこもった声で田中泯さんは真田広之さんに話しかけます。そのセリフは驚くほどリアルで居並ぶ名優さえ凌ぐのではないかと思いました。

舞踏と演技が一体化している。

格闘シーンの中で、田中泯さんの演技どのように融合しているかを見ていただきたい。
1:54:30頃です。狭い暗い和室での立回りのシーン。暗くて顔もかすかに見えるほど。一撃を食らった余吾善右衛門がふらふらと舞いのように立ち続け、更に鋭い攻撃をしてくる。これは前衛舞踏家・田中泯さんの舞いなのです。
こういう身のこなしが出来る人は彼以外にはいないのではないかと思います。

田中泯さんが演じる余吾善右衛門の最後

田中泯さんが演じる余吾善右衛門の最期のシーンも見どころです。

1:57:30頃です。善右衛門が振り上げた太刀がかまちにぐさっと突き刺さると、清兵衛に腹部をばっさりと横に切られます。よくある時代劇のようにここで息絶えたりはしません。静かに腰掛けて「逃してくれ・・・」といいます。「暗い。何も見えん」とふらふらと舞い善右衛門は果てるのです。

 

舞踏家・田中泯さんの圧倒的演技について紹介しました。

殺陣師、武術家の指導による激しい立ち回り、そして、舞踏家・田中泯さんでなければできない舞踏が融合された演技。どちらも素晴らしいので、ぜひ見て頂きたいと思うのです。

最後に

今回は、映画『たそがれ清兵衛』の魅力をお伝えしました。

記事を書くきっかけになったのは、ツイッターでの会話から始まり、感動したこの映画の素晴らしさを伝えたくなったからです。

この記事を書くモチベーションを与えていただいた Miriさんに感謝いたします。

この映画の見どころとして次の三つを紹介しました。

  1. 東北弁の活用とその意義
  2. リアルな武士描写から生まれる感動
  3. 舞踏家田中泯さんの圧倒的演技

幕末の庄内地方の妻を亡くした貧しい武士。その中でも、二人の娘を育て上げようとする姿、そして、朋江への恋心が描かれます。

映画は日本の時代劇を作ってきた人たちの総力を挙げて作られました。黒澤組の照明をしていた中岡源権さん、衣装の黒澤明監督の娘・和子さん、殺陣のプロ・久世浩さん、本物の武術家、そして、本物の庄内地方に住む人が庄内弁で出演しています。

どうぞ映画『たそがれ清兵衛』を観て、その感動を体験してください。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

また次回のブログでお会いできることを楽しみにしています。

それでは、失礼いたします。