『北の国から』を最初から全て通してみました。
第23話で「秋月妙令大姉」という純の母の位牌が映し出されます。「大姉」という戒名は高額なお布施が必要です。それなのにどうして、純たちは「大姉」という戒名を選んだのだろうと気になりました。
そこで、なぜ「大姉」が選ばれたのはなぜか、など、戒名について読み取れることについて考えてみた。
目次
戒名って何?
本来は仏教信徒が守るべき行動規範である「戒」を守ることを誓った者に与えられる名前。浄土真宗では「法名」と言うそうです。
死後の戒名の習慣は仏教国のなかでも日本にしかない独特のものだそうです*1。
これには驚きました。なぜ、日本だけ死後に戒名が与えられるのでしょうか?
日本では、仏教信徒が守るべき「戒」を守ると誓う儀式がないから、死後に戒名が与えられるようになったのかも知れません。
戒名の意味を想像してみる
純、蛍のお母さんの戒名は「秋月妙令大姉」です。妄想を膨らませて戒名の意味を想像してみます。
「秋」・・・芽生える「春」に対して、冬に向かう寂しげなイメージが浮かびます。
「月」は太陽のようにキラキラではなく、「月光」のように家族を照らしていたのを表現しているのかも知れません。
「妙」を辞書で調べると次のような意味があるようです。
1 いうにいわれぬほどすぐれていること。きわめてよいこと。また、そのさま。「演技の―」「自然の―」「言い得て―だ」
2 不思議なこと。奇妙なこと。また、そのさま。「―な事件」「夜中に―な音がする」「―に憎めない人」
(goo辞書「みょう〔メウ〕【妙】 の解説」)
「令」はお母さんの名前「令子」の「令」ですね。
漢字の持つ情報量の豊かさ、イメージの広がりには素晴らしいものがあるのを知りました。アルファベットの文化圏ではこうはいかないでしょう。
位号のお布施の相場
「大姉」は、位号でです。日蓮宗、浄土真宗に「大姉」はありませんから、それ以外の宗派ということになります。
男性:〇〇院居士ー〇〇居士ー〇〇信士
女性:〇〇院大姉→〇〇大姉→〇〇信女
義母が3月になくなり、そのとき位号をどうするかという問題がありました。
「大姉」だとお布施が 50万円、「信女」だとお布施が 30万円ということでした。
「院大姉」をネットで検索すると、100万円以上のようです。
今、旧統一教会が問題になっています。
「壺を好んで買っている」と旧統一教会を擁護する意見もありますが、それは自由な健康的な精神状態でないのはダメでしょう。
洗脳された状態の献金は問題ないのですか? もし、催眠術にかかった状態での献金は?
仏教も、戒名をつけて貰うとき、30万なり50万なりお布施を要求されますが、地獄に堕ちるなどと恐怖心をあおるようなことは言いません。健康な精神状態のときのお布施です。
戒名ルールにはジェンダー・バイアスがある
義母の場合、位号をどうするかという問題がありました。
「大姉」 50万円、「信女」 30万円。
義母の夫は「居士」でしたから、そろえて「大姉」すると 50万円になります。
住職に伺うと「夫が『居士』の場合、妻は『信女』でもいい。女性が先に亡くなって妻が『大姉』の場合、は『信士』にはできない」ということでした。
えーっ? 住職からしてみると、「安くもできますよ」という話だとおもうのですが、女性だけが夫より低い「位号」になれるということにカチンときました。
男女は平等であるべきである。そして、夫と同等であって欲しいという思いから、反対する人もいたのですが、「大姉」 50万円にしました。
高かったけれど、これで良かったと思います。
お布施は誰が出したのだろう?
純と蛍の母である令子の喪主は純です。夫の五郎は離婚してしまったし、不倫相手である伊丹十三さん演ずる吉野信次とは、まだ結婚していなかったからです。
黒板家にとって50万円は簡単に都合できるお金ではありません。なにせ、五郎には上京するお金を都合できなくて、1万なにがしかのお金を浮かせるために、飛行機を利用したいいところ、列車で一昼夜かけて上京しています。
不倫相手だった吉野はお金を都合できそうですがお葬式を仕切る立場になく、令子の兄弟、美容室の従業員が中心になってお葬式を仕切ったようです。
喪主の父である五郎はお金を都合できるでもなく、遅れて上京したあげく、台所で洗い物や調理の手伝いくらいしかできず、富良野へ早く帰らなかればなりません。役に立たない情けない男なのが印象的でした。厳しい自然の中で文明に頼らず生きている五郎は、都会のお金にからむ生活は苦手なのです。
まとめ
「大姉」という戒名は高額なお布施が必要です。それなのにどうして、純たちは「大姉」という戒名を選んだのだろうと気になり、戒名について読み取れることについて考えてみました。
- 死後の戒名は仏教国のなかでも日本にしかない独特のもの、というのは意外でした。
-
戒名「秋月妙令大姉」の意味を想像してみて、漢字の持つ情報量の豊かさ、イメージの広がりに素晴らしいものがあるのを知りました。
-
私が住職から聞いた位号の対するお布施は「大姉」が 50万円、「信女」30万円ということでした。「院大姉」をネットで検索すると、100万円以上のようです。今、旧統一教会の霊感商法、異常に高額な献金が問題になっていますが、健康な精神状態のときのお布施であれば問題ないと思われます。
-
義母の戒名をいただくとき、ジェンダー・バイアスがあることを知りました。女性だけが夫より低い「位号」になれるということにカチンときました。
- 高額なお布施は誰が出したのだろうと考えてみました。厳しい自然の中で文明に頼らず生きている五郎は、都会のお金にからむ生活は苦手なようです。
戒名「秋月妙令大姉」から意外に多くのことを読み取れ、考えることができました。
知らないことの発見もあり、有意義でした。