シロッコ手習鑑

高卒シニアなのに臨床心理士になりたいと思い立って放送大学生になりました。

ケネディ大統領も読んだ・内村鑑三「代表的日本人」(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人)

目次

代表的日本人 (岩波文庫)

代表的日本人 (岩波文庫)

 

ケネディ大統領もこの本を読んだそうだ

2015年の9月に『なぜ、日本は宗教教育をしないのに道徳があるのか? 新渡戸稲造「武士道」』を書きました。そのときにアマゾンの「武士道」ページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」で面白そうな本が紹介されていました。

  • 代表的日本人 (岩波文庫) 内村鑑三 レビュー:93件

この本も読んでみたいと思って「欲しいものリスト」に追加しました。

追加した理由は二つ。新渡戸稲造の「武士道」が、ギリシャ神話、哲学、コーラン、キリスト教、推物論、功利主義など、数多の文章を引用して自分の思想を構築して述べるのがとても見事でした。同じように英語で日本を紹介した内村鑑三の「代表的日本人」も面白いに違いないと思ったからです。

そして、もう一つ。こんなレビューを見つけたからです。

「日本人で尊敬するのは誰か?」、かつてこう聞かれた米、ケネディ大統領は、すかさず、「上杉鷹山」と答えたそうですが、それは、この本を読んでいたからと言われています。

 (「けんぴょん」さんのカスタマーレビューより)

「ケネディ大統領 上杉鷹山」で検索すると、「そんなのは都市伝説だ」という記事と、「いやそれは事実だ」という記事が見つかりました。

ケネディが生涯に渡って上杉鷹山を尊敬し続けたとは思えませんが、英語版のRepresentative men of Japanを読んだのは事実だと思います。

これは面白いに違いないと考えてアマゾンから購入したのでした。

これはどんな本なのか

新渡戸稲造は「日本は未開の野蛮国だ」というイメージを払拭したいと考えて「武士道」を書きました。それと同じような目的が内村鑑三にもありました。そのために西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の生涯を描いたのです。

わが国民の持つ長所―私どもにあるとされがちな無批判な忠誠心や血なまぐさい愛国心とは別のもの―を外の世界に知らせる一助となることが、おそらく外国語による私の最後の書物となる本書の目的であります。

 (「内村鑑三『代表的日本人』・はじめに」より)

現在の日本人なら本田宗一郎や松下幸之助が大好きで、よくエピソードが紹介されます。

  • 本田宗一郎が工場の視察に行ったら、若い作業員から 「おい、おっさん何ポケットに手を突っ込んで歩いてんだ!転けたらあぶないだろ!」と言われ、その後、HONDAのツナギからポケットがなくなった。
  • 松下幸之助は交通渋滞が原因で会議に間に合わなかったとき、社内処分として自らの給与を10%を減給した。自身が「成功した理由」として「学歴がなかった」「貧しかった」「病弱だった」の三つを挙げた。

これと同じような美談だらけの本です。いかに人格が優れているかという文章が続きますから、二宮尊徳のあたりになるとダレて来て嫌になったのですが、その後はだんだんと心地良いものになりました。この本は代表的日本人を褒めるのが目的ではなく、内村鑑三の理想とする生き方を描いたのだと分かったからです。

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「Representative Men of Japan」が出版されのが1908年。1905年に未開な弱小国と思われていた日本が日露戦争に勝利して、「日本はどんな国なんだ」と注目を集めた時期です。デンマーク語、ドイツ語にも翻訳されましたから、世界でも相当注目を集めたようです。

どんな資料を見てこの本を書いたのか

この本を翻訳した日本キリスト教の研究者・鈴木範久さんが「解説」に次のように書いています。

これらの資料を通じて全体的にいえる特徴は、いずれも当時容易に入手でき、しかも通俗的で、少年読み物の類まであることである。今日の目から見れば学問的に見れば評価の低い資料が多いが、それは当時の制約からみても致し方ないであろう。問題は内村が、これらの資料をどのように用いたか、との点にある。これらを、もしも内村が忠実に用いるだけに過ぎないとしたならば、英文でわざわざ本書の書かれる理由も小さく、その意義もない。(「解説 三 資料と内容について」より) 

ですから、史実として読むよりも、内村鑑三が書いた聖書だと思って読めばいいと思います。

西郷隆盛

日本は海に囲まれた平和な国で外国の艦隊が乗り入れる事もなかった。鎖国を非難するのは浅薄な考えであると反論から始めています。

そして、西郷隆盛のスタートするパワーがなかったら明治維新は成功しなかったと内村鑑三はいいます。動き始めれば比較的簡単だと。

西郷隆盛が優れた人格者であると褒めたたえます。

西郷隆盛は西洋と肩を並べるためには大陸への進出が必要だと主張して明治政府とケンカ別れしているのですが、内村鑑三はそれを支持しています。

西郷隆盛が家来に「お前ではないか、下駄の鼻緒をすげさせたのは」と言ったことがあります。武士は通りがかった農民に下駄の鼻緒を直させる権利がありました。農夫がこれに応じたことがあり、それが西郷隆盛だったそうです。農民は武士からすれば虫けらのような存在だったんですね。

上杉鷹山

私はこの人を知りませんでした。

17歳で養子になり九州から米沢へ。上杉謙信の頃は100万石あった米沢藩も、アンチ徳川だったことから30万石になり、さらに15三万石に減らされていました。なのに藩士の数は変っていません。

藩主が自ら節約の音頭をとります。武士の数は減らしません。今の時代なら、真っ先に武士をリストラだと思いますが・・・。

そして、武士にも開墾を命じ、漆の木を植える事を奨励します。しかし、武士は抵抗する訳です。そこで、上杉鷹山は抵抗勢力の首謀者二人に切腹を命じ、五人の石高を半分にします。

天明の飢饉で改革は頓挫。上杉鷹山は隠居します。その後、カムバックコールで再び藩主となり、武士、農民からの声を聞くシステムを作ります。切腹させた藩士の息子の提案で養蚕を奨励。機織りが地場産業に育ちます。 

成功したのは人材の活用方法が見事です。

二宮尊徳

まきを背負って本を読んでいる二宮金次郎の像を見たことがある人は多いでしょう。

二宮尊徳の凄いところは謙虚で欲がないことがとことん描かれます。手におえない怠け者に家を建ててやり心を入れ替えさせたエピソードなど。

中江藤樹

近江聖人と称えられた儒教学者(陽明学)です。江戸初期なのに十数冊もの著作が残っているのですから、いかに優れた人だったのかが分かります。

「法」と「道」とがある。「法」は時代の必要にかなうように作られたものだから、時と場所によって変わる。「道」は永遠の始めからあるもので、人間の出現する前から宇宙は「道」をもっていた。人が消滅し、天地がたとえ無に帰した後でも残ると言っています。

日蓮上人

内村鑑三はキリスト教徒です。日蓮が仏教を追及する熱意が描かれています。

まとめ

内村鑑三の「代表的日本人」を読みました。それぞれを褒めたたえていて、途中であたりになるとダレて来て嫌になったのですが、その後はだんだんと心地良いものになりました。この本は代表的日本人を褒めるのが目的ではなく、内村鑑三の理想とする生き方を描いたのだと分かったからです。

人物伝ではなく、内村鑑三が書いた聖書だと思って読むのがオススメです。

 

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